第128話 最強は夢想する⑧
「無理ぃいいいいいいい!」
「イキロ!」
「大丈夫だ。まだ、まだいけるはずだぁぁぁぁぁぁ!」
「うるせー」
叫ぶキヨシに走り抜けざまティタがイキロと言い。気合を入れる鉄男に黒が煩いとキレた。
モブを大量に引き攣れつつも会話する余裕がある二人は、待機場所に戻ると即座に場所を確保する。
場所に入った直後、黒のレンジ ヘイトがモブに頭上にあがった。そのエフェクトが上がるかどうかのタイミングで、宮ネェがバリアを発動させる。
宮ネェのバリアに合わせ、既においていた設置型魔法、バインド(+18)、ショックボルト(+19)、スロー レンジ(+15)を詠唱し発動させた。
このままではタゲが分散する可能性があると考えた。そこで私は、ゲッター サークル スクロールをアイテムボックスから取り出し、2秒間隔で時間を置きスクロールを10枚消費する。
スクロールを消費する間に、シロがダウン プルを連発で入れ、さゆたん、キヨシがサンダーストームとウォーター ウォールを使い少しでもダメージを与えモブを減らそうと努力する。
そうこうしている内に、宮ネェのバリアが残り三秒となり、チカがバリアを発動させた。
黒のレンジ ヘイトがいつもより短い間隔でエフェクトをあげる。
そんな中ティタ、先生、宗乃助、ミツルギ、鉄男が槍を使いモブを殴る。
鉄男は流石本職と言うだけあって、槍ならば誰よりもダメージを出せるようだ。槍に炎や氷雷と言った、魔法を乗せ強打を与えていた。
本当ならば、ゼンさんヒガキさんにも攻撃させたいところではあるが、現状回復の二人が手いっぱい状態で二人を追加する事ができそうにない。
[[黒龍] やべー。俺死ぬw]
[[大次郎先生] renバリアキレた瞬間プロテクで!
その間に、宮とチカダブルで黒回復して]
[[ren] k]
[[宮様] わだふぁ!]
[[†元親†] おう!]
黒のHPの減りが半端ない。回復が居ない状態でバリアなければ……10秒以内に確実に死んでいる。
約二割程のモブを減らしたところで、先生がプロテクの指示を再度出した。
宮ネェたちのバリアと私のプロテクは重ねがけすることができないことから、一度完全にバリアを消さなければならない。
だからこそ、先生は二人に回復の指示を出した。
[[†元親†] @3秒]
こう言うところは真面目に出来るんだなと思いつつ、プロテクト スケイルの詠唱をゆっくりと始めた。
鉄男の槍が炎を纏い、モブを巻き込みながら振り抜かれる。
そして、バリアの点滅が終わり表示が消えた。それと同時に、宮ネェとチカによる回復のエフェクトが黒を包み、その間に私はプロテクト スケイルを発動した。
[[鉄男] 俺が唯一輝けるのはここだぁー!]
[[宗乃助] 鉄男……切ないでござるよw]
[[キヨシ] 負けないぜーww]
テンションが上がった鉄男。それに何故か貼り合うキヨシ。
二人が無駄にMPを減らしていく。誰がそれを回復するんだ……と内心毒づきながら、二人の様子を横目に、未だうごめくモブに対しゲッター サークル スクロールを使う。
スクロールを使い終わり、設置型のデバフである、バインド(+18)、ショックボルト(+19)、スロー レンジ(+5)を取り囲むメンバーの中心に置き、詠唱し発動させる。
少しでも、タゲを受ける黒が楽になるようにと、バカ二人を除いた皆が動く。
[[大次郎先生] キヨシも鉄男もMPPOT飲んで回復]
[[宮様] 残り半分ぐらいね]
[[ren] @5]
[[黒龍] 痛ぇw]
[[ティタ] 黒イキロw]
[[ヒガキ] 頑張って下さい]
プロテクト スケイルの効果が切れるまで残り5秒だとクラチャで知らせる。
プロテクト スケイルの効果が切れると同時に、黒が痛いと訴えた。焦るように、宮ネェとチカが回復を飛ばし黒を生かす。
そんな回復二人のMPを気にしつつ、私も私の出来る事をやろうとドラゴン オブ ブレスを詠唱しモブに叩き込んだ。
[[ren] バフ]
[[さゆたん] キヨシ。メテオいくでしゅよ!]
[[キヨシ] おーよ!]
やたらバフの時間が短く感じるなと、思いながらも点灯するバフを更新した。
ゲームの中でも最強と呼び声が高いメテオ ストライクの魔法を、覚えたての二人が息を合わせ発動させる。
流石と言うべきか、そのエフェクトがまた圧巻で……ここは密林で、空なんて見えないはずなのに何故か夜空から、赤いエフェクトを纏った隕石がモブ目掛け大量に降り注ぐ。
モブ目掛け降り注いだ隕石が落ちる度、地が揺れ轟音を発していた。
[[白聖] まるで、白亜紀の最後だな……]
[[ゼン] 絶滅ですねw]
シロとゼンさんの言う通り、メテオの魔法が終わりエフェクトが消えたその場には、一匹たりとも生きたモブは残っていなかった――。
と……カッコよく決めてみたけれど、実はメテオを放つ前に、鉄男とキヨシが張り合いほぼほぼ狩り終わっていただけ……なのだが。
なんとか死者を出さず生き残ったと安堵の息を吐く暇も無く、真横に肉食の恐竜が湧く。
もうそんなに時間が経っていたのかと、皆が疲れた顔を見せた。
クラチャで「やるしかねーだろ?」と言った黒が、ティラノザウルスにヘイトを発動する。それを見ていた他のメンバー達も、苦笑いを浮かべ武器をメインのモノに持ち替え攻撃を開始した。
前回と違う事とと言えば、MPの量ぐらいだろうか? 流石に魔法やスキルを15分ほど使い続けた直後と言う事もあり、さゆたん、キヨシ、宮ネェ、黒、チカ、鉄男のMPが危ない。
マナチャを使うか悩むが、他のメンバーがマックスなので今は使えないと断念した。
その分少しでもMPが楽になるように宮ネェ、チカ、キヨシ、さゆたんのバフを、魔法攻撃力に特化したウラガーンから、MP回復に特化したフルークトゥスへと変更する。
これで少しは楽になるはず、後はバインドが入ってくれればいいんだけど……。
そう思いながら、ティラノザウルスの足元にバインド(+18)を設置、詠唱発動させれば今回は一度で決まった。
[[黒龍] ナイス]
[[†元親†] 俺の出番だ~w]
[[ティタ] チカぁ~! モブ殴る暇あるなら、MPPOT飲んどいてー!]
[[キヨシ] MPがあああああああ!]
[[宗乃助] ティタ諦めるでござるよw]
[[白聖] MP無くなったらただのNPCだなw 笑うわw]
[[鉄男] うおー。MPがぁぁぁぁ!]
[[さゆたん] 二人して、バカでしゅw]
[[大次郎先生] ヒガキ、ゼンも攻撃ね]
[[ミツルギ] なんつーか、締りない感じっすねw]
[[†元親†] あー。MPPOTか……後で飲むわーw]
[[宮様] こんなクランでごめんなさいね~w]
バインドを入れればチカが、大剣を取り出しティタノザウルスへと走った。それとほぼ同時に、残り2割のMPを使いきったらしいキヨシの絶叫が響く。
相変わらずの様子に、漸くこのクランがバカばかりだと気付いたらしいミツルギさんが、苦笑いを浮かべつつ締りがないと言った。
見事正解を言い当てた彼に、こっそり拍手を送る。
既に固まったティラノザウルスは、クラチャで話している間に倒れ黄色い粒子へと変わった。
[[黒龍] 釣って来る]
[[ティタ] 追走するねー]
[[大次郎先生] 量気をつけてw]
[[黒龍] 了解]
[[ティタ] k]
今回は黒が釣り、ティタが追走と言う形なので先ほどまでの量にはならないはずだ。
追走する理由について――もし、黒が何かに足を取られモブに囲まれ逃げ出せなくなった時。そのモブのタゲを黒から奪い、モブを引き剝がし自分の方にタゲを集め黒が動けるようにする。と言う役割的な理由からだ。
ティラノザウルスを倒し終え、バフの更新を終わらせたところでふと視界に入ったシステムログを見て、なんのために骨をクラメンに販売したのだろうかと考えた。それぐらい骨のドロップ数が多かった。
いっそのこと、全部店売りしてしまおうかと思ったところで、もう一人の自分が勿体ないと訴えた。結局、こうして毎回狩りに来る度、勿体ないやいつか使うだろうと倉庫に貯まる事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます