第106話 クランハウス⑤

[[ren] 宮ネェ送った]

[[キヨシ] ぽっちゃりー!]

[[ティタ] これ設定して、24時間後に配置だっけ?]

[[黒龍] いねーんだからしょうがねーだろ?w]

[[さゆたん] そうでしゅねw]

[[ren] ぽっちゃり=恰幅いい? ってことでいいの?]

[[白聖] 24時間長いな!]

[[宗乃助] ren> 言い方換えればそうでござるなw]

[[ゼン] 楽しみですね~w]

[[宮様] この子でいいと思うわよ~w]

[[ren] 宗乃助> k 宮ネェ> k]


 ティタは余程楽しみなのか、NPCメイドさんが来るのが待ち遠し様子だ。

 NPCの配置は、雇用から24時間後と決まっている。明日のこの時間になればメイドさんたちは昼夜問わず各々、得意な仕事をしてくれるようになる。

 ティタとシロには我慢してもらうしかない。こればかりは仕様なので、どうにもできない。


 そしてもう一人拘り続ける男、キヨシ……ぽっちゃりなんて居ないからどうにもできないだろうと諦めかけた私の視界に、恰幅の良いメイドさんが映った。

 これじゃないだろうとは思いながらも、その人の写真をタップする。


 ぽっちゃりの定義を確認するためクラチャで聞けば、キヨシに変わり宗乃助が答えてくれた。

 宗乃助の答えにそういう事なら問題ないだろうと思った。


 それに、この人には是非うちに来て欲しい!! 彼女の得意な仕事欄に書かれた項目に目をとめた私は、キヨシに確認することを忘れ、その場で雇用を決定する。

 ついでに、宮ネェの許可が下りたミールクちゃんも一緒に雇い入れた。


[[ren] メイド費用、総額1.94M/14日]

[[キヨシ] 梯子できたぜー!]

[[宮様] 14日で2Mね。了解よw]

[[大次郎先生] 分かった。

       ところで、会議室とかの家具どうする?]

[[黒龍] 高くね?w]

[[ヒガキ] メイドさんって、意外と高いですね……]

[[ren] 家具持っていく。

    先にキヨシ、チカベット取り出して]

[[†元親†] んー。やっぱ家具欲しいなーw]


 メイドさん四人を雇用し終わりかかる費用の総額をクラチャに流し、倉庫に向かう。

 最後に雇い入れたメイドさんについては、誰も文句は言えないだろう。そのお方はキリールさん。47歳、得意な仕事が料理と言う、恰幅がいいおばさまだ。


 選んだ理由は、言わずもかな得意な仕事が料理だったこと。料理が作れるメイドさんは非常にクランにとって貴重でありがたい存在だ。


 何故かと言えば、以前持っていたクランハウスで折角買ったシステムキッチンを活用しようと、各々が料理を作った。そして、知るのだ 私を含めクラメンの誰ひとりとして料理できないと言う事を――。


 見た目は綺麗で美味しそうに作れても、吹き出すほどにクソマズイ……マズイなんて言葉では言い表すのも無理なほど酷いものもあった。

 まだ、運営の作ったMガムの方が我慢できるレベルで……。その後システムキッチンを使うメンバーは誰もおらず、最終的には倉庫の肥やしとなっていた。


 キリールさんを雇用したことで漸く、日の目を見る事が出来るシステムキッチンを取り出し彼女の作る美味しい料理を夢みつつ、卑弥呼とキヅナの遺産と宮ネェの細工師用の道具をクラン倉庫へ突っ込み。

 クラチャでそのことを伝え、ハウス用の家具を取り出し意気揚々とハウスに戻った。


 ハウス入口玄関左にある、扉を開きそこを宝物庫に設定する。

 仰々しい名前ではあるが、ただの倉庫だ。クラメンの中には倉庫がいっぱいで物が入らないと言うメンバーもいる。主に、キヨシとかチカとかキヨシとかチカとかだけど。


 設定を終え扉を閉めた刹那、それまではなんの変哲もない木戸だった扉が、分厚い鉄の扉に変化した。こう言うところはゲームなんだなと、思ったところでそう言えば、以前も同じ事を思ったなとデジャブ感を味わった。


[[大次郎先生] ren。会議室のアイテム持ってるなら貰う]

[[黒龍] 俺も手伝うぞー]

[[†元親†] ベットきたー!]

[[ティタ] 俺も~]

[[キヨシ] やっぱ、秘密基地にベット置けないTT]

[[宮様] アイテム。受け取ったわ~]

[[さゆたん] あたくしも手伝うでしゅよ~w]

[[ゼン] そう言えば、代行ってどんな職があるんですか?]

[[ren] あり。先生> ヒガキさんと買いもの行って

    黒、ティタ、さゆたん> 1階来て]

[[ヒガキ] 自分が知っているのは、洋裁、薬学、設計士]

[[宗乃助] 代行は、種類無数にあるでござるよ……]

[[白聖] 飛び道具専門の奴もあったよな?]

[[ren] 裁縫師さいほうし薬学師やくがくし設計士せっけいし投具師とうぐし鍛冶師かじし

    細工師さいくし製本師せいほんし調理師ちょうりし陶器師とうきし剪定師せんていし

    建材士けんざいし採集師さいしゅうし、とかもあった気がする]

[[大次郎先生] じゃー、ヒガキ行こうかw]

[[ゼン] 色々あるんですねー。どれにしようかな~]

[[ヒガキ] はい]

[[宮様] 全部持つのは無理よね……特に調理師……]

[[ティタ] 俺は、薬学師持ってるよw]

[[キヨシ] 俺は、建材士w]

[[白聖] 投具師ってどこで覚えられんの?w]

[[宗乃助] 調理師は誰も持つべきではないでござるなw]

[[ren] 全部は無理。

    製本、鍛冶、陶器、裁縫、細工、洋裁、投具

    の内にどれかがいいと思う]

[[黒龍] 投具師は、確か……ヘパイストスの裏町]

[[さゆたん] 裁縫師欲しいでしゅね~]

[[†元親†] なーなー。

      このベットなんかキヅナの匂いがする気がするw]

[[ティタ] このクランに裁縫師だけは居ないなw]

[[キヨシ] キヅナの匂いとかwwww]

[[宮様] 裁縫師儲かるけど……糸から作るの面倒なのよねw]

[[黒龍] 代行やる時間あるなら狩りした方が儲かるだろw]

[[大次郎先生] チカ……それは気のせいだよw]


 クラチャで流れる代行については、正直何をいつ進め覚えるかなどはプレイヤーの自由だ。


 薬学は、POTやMガムなどを作ることができる。とは言われているものの、現状雑貨屋で購入するPOTを100とするならば、自作のPOTの回復量は40~60といった状態で、使えるとは言えない。


 しかも薬学を行うのであれば必ず、採集と陶器が必要となってしまう。

 採集は、フィールドに自生する薬草類や粘土などを収集するために必要で、陶器は、出来あがった薬品を入れる瓶を作る為に必要になる。

 そのため、時間ばかりがかかり儲けには一切つながらない。


 代行で儲かるのは鍛冶師と細工師、裁縫師、後は調理師と製本士、陶器師、投具師ぐらいだろう。


 製本士―― 自身が覚えた魔法やスキルを、本に書き起こし他に売る事ができ儲けが出る。。

 鍛冶師―― 武器、防具のメンテナンスや制作で儲けが出る。

 裁縫師―― 採集師が必要だが、服や小物を作り販売することで儲けが出る。

 細工師―― 鍛冶師とほぼ変わらずアクセサリーの制作で儲ける事が出来る。

 調理師―― 自作の料理を露店で販売提供する事で儲けが出る。

 陶器師―― 採集師が必要となるものの、自作の食器や置き物を作り販売できる。

 投具師―― 矢や投げナイフ関係の飛び道具を制作することで儲けが出る。


 私が知っている限りだが、他のものについてはゴミだ。覚える価値も無いと言っていいかもしれない。


 ツラツラと思考を繰り返しながら、手伝うと言ってくれたメンバーにクラン用の家具を渡す。

 多く無いか?と言う黒たちに未だ自分の部屋すら、模様替え出来てないと理由をつけ全てを丸投げしておいた。


 ジト目をしながらも受け取りそれぞれ目的地へ向かってくれる辺り、本当に良い奴らだなと思いつつアイテムボックス内に入れてある家具を使い自分の部屋の模様替えを始めた。

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