第105話 クランハウス④
キャラチェンジ中に思いだした事――それは、メイドさんの雇用だ。
クランハウスには、そのランクに応じメイドさんを複数人選ぶ事ができる機能が追加されている。
今回私たちが購入したハウスのランクは一番上から数えた方が早い位のものだ。
【 ヘラ 】中央部にある神殿から壁を右に進み一つ目の角を曲がったところに、NPC雇用組合がある。少し古めの建物の設定なのか木目が綺麗な焦げ茶色の壁に薄汚れた朱色の屋根をしていた。
到着し両開きの扉を開け中に入る。そこはまるで役所の様な感じで、10人ほどのNPCがテーブルカウンター越しに座っていた。
そのNPCの頭上に分かりやすく、それぞれが担当する項目が表示されている。表示はされているが……二種類しかないのに必要かと聞かれれば微妙なところだ。
NPC雇用申し込み受付のNPCに話しかけ、雇用出来る人数を確認したところでハタと思いだした……皆に希望を聞いていない。
後々気に入らないと文句言われるのは面倒だな……でも、あいつら絶対自分の好みしか言わないだろうし……はぁ、男しかいないクランは大変だな……早く女の子入れたい。
[[さゆたん] NPCの半額位は料金とっていいでしゅw]
[[ren] メイドさん。4人雇えるらしいけど希望ある?]
[[宮様] そうね。確かに半分は料金貰うべきよ!]
[[ヒガキ] そうなんですか?]
[[ティタ] 足が綺麗な眼鏡かけた美人秘書風で!]
[[白聖] 巨乳のキツネ耳娘!]
[[宗乃助] 拙者は、いないでござるな~]
[[キヨシ] ちょっとぽっちゃりしたおっとりメイドさんで!]
[[†元親†] スタイル抜群の巨乳ちゃん! 髪長ければ良し!]
[[さゆたん] 5歳ぐらいの可愛い女の子がいいでしゅw]
[[黒龍] NPCなんだから何でもいいだろw]
[[大次郎先生] 必至だなこいつらw]
[[ゼン] 身長高めの貧乳さんがいいですw]
[[ヒガキ] 自分は、特に好みはありませんw]
[[宮様] 男の娘のメイドさんがいいわね!]
これやっぱ聞かなきゃ良かった系だ……この後にあるであろう事を想像してゾッとした。
とりあえず、先生と黒、宗乃助、ヒガキさんは何でもいいと言う事で、中々いいメンバーが味方についてくれたと思っておこう。
問題は、好みを言ったメンバーだ。とりあえず、NPCに話しかけ雇用できるメイドさんの名簿をタップすれば新しいウィンドウが開いた。
卒業アルバムの様な状態で、個々の写真が並ぶウィンドウをスクロールしながら、好みを言ったメンバーの理想のメイドさんを探す。
一人目は、ティタとゼンさんが、似たような好みだし……美人の足の綺麗な……と言うか、NPCだし全部足は綺麗だし!
スクロールする中に、金茶の髪を纏めあげた少し釣り目で眼鏡をかけたメイドさんを見つけその写真をタップする。
すると、新しい小さめのウィンドウが開きメイドさんの詳細が表示された。
名前は、ウィリスさん。現在23歳。得意な仕事と言う欄に事務仕事と書かれていた。
既婚や彼氏の有無などは書かれていない。
そのウィンドウのSSを取り、希望を出した二人にメールを送る。
[[ren] ティタ、ゼンさん。SS送った]
ティタたちの返事を待つ間に、他のメンバーの好みの女性を探す。シロとチカの好みはっと……巨乳で……キツネ耳で髪が長い子か……。
何千とある画像の全てを見るのは面倒なので、ウィンドウ上部にある虫眼鏡マークをタップし、キツネ耳、巨乳、長髪と検索項目を絞り確定を押した。
絞ったとは言え、それでも表示件数は多い。もうどれでもいいだろうと適当に白色の髪の子の画像をタップした。
[[ティタ] いい感じ~。もう少し優しげだともっといいけどw]
[[ゼン] 自分はこの子でいいですよ~w]
[[大次郎先生] 優しげ……秘書なのに?w]
[[宮様] メイドなのに……触れもしないのにw]
[[黒龍] 別になんでもよくね?w ハウスにいるだけじゃねーかw]
[[ティタ] たれ目気味の子とか優しそうにみえるじゃんw]
銀色に見えなくも無い髪のサイドを後ろに編み込み、少したれ気味のキツネ耳を強調したような感じの髪型をしている。
キツネらしくない大きめの瞳にほんのり染めた頬。
本当に可愛い感じの子だ。名前は、シュリ。19歳。得意な仕事は、庭の剪定。
予想外な得意仕事ではあるが、この見た目は完全にシロたちの好みだろう? と勝手に思いこみ、確認するためSSを撮ると早速メールで送った。
クラチャの会話を確認した私は、その拘りに頭を抱え絶句した。
眼鏡かけてるのにたれ目て……なんで拘るんだか……仕方ない選び直そう。
項垂れつつ、絞り込みを使い。秘書風、貧乳、たれ目、眼鏡 と打ち込んだ。
[[白聖] この子いい!]
[[†元親†] んー。可愛いけど……もう少し大人っぽいのがいいw]
[[白聖] チカ、黙れ!]
[[†元親†] えー。だってなんか子供臭いw]
[[白聖] このキツネ娘でいいんだって!]
[[†元親†] やだ……w]
[[白聖] 仕方ね―なぁ。このお好み焼きやるからこの子で妥協しろ?w]
[[†元親†] お好み焼きでは釣られないぜ!]
[[白聖] わかった。じゃぁ、これも付ける!]
[[†元親†] うおおおおおお。分かった妥協する!]
[[白聖] よし。ren、シュリいいぞw]
私がたれ眼鏡美人をスクロールで探している間に、シロがチカに供物を収め取引をしたらしい。
それに成功したシロの希望通り、シュリちゃんを雇う事になっていた。
そんな事とはつゆ知らず、集中してティタの好みであろう美人秘書を探す。赤茶の髪を横に流し一纏めにした、眼鏡たれ目の顎に黒子のある美人さんを発見する。
行き過ぎたページを戻し、そのNPCの写真をタップし小窓に表示させた。
名前は、ユーリス。25歳。得意な仕事は皿洗い。
全身が映る写真を見る限り、ゼンさんでも問題はなさそうだと言う事で、二人に再度SSを送信した。
[ren] ティタ、ゼンさん> 送った]
クラチャを確認し、シュリちゃんを雇うため保存しておいたシュリちゃんのページを開き雇用のボタンをタップした。お給料は二週間で500k……中々、お高い子だったらしい。
これで、シロとチカが黙るのであれば問題ないだろう。そう思い、最終確認で表示されたYesをタップした。
次はキヨシの好みをと思ったところで、気付いてしまった。
ぽっちゃりって、どこまでなの? うーん、分からない……ていうか、このゲームにそういうNPCがいるのだろうか?
とりあえず、キヨシの好みはスルーでいいか……と思考を切り替える。
さゆたんのも無理だぞ……最低年齢15歳からしかNPCの登録がされていない。
男の娘ならば、いるかもしれないと探してみたところ、ボーイッシュな感じの女の子を発見する。
[[ティタ] この子で!]
[[ゼン] 可愛いですね。この人w]
[[ren] キヨシ> ぽっちゃりっていない。
さゆたん> 最低年齢15歳~
宮ネェ> ボーイッシュな女の子ならいる]
[[大次郎先生] ren。もう適当でいいよw]
[[さゆたん] 残念でしゅw]
[[宮様] ボーイッシュな子でもいいわよーw]
[[キヨシ] ぽっちゃりいないのー?!]
[[ren] ボーイッシュな子でいいならSS送る]
まずは、ティタたちの許可が下りたユーリスさんを雇用する。二週間で510kと言う彼女を雇い入れ。これで、二人目……二週間に一回最低、2Mは飛ぶと頭に入れておく。
その後、宮ネェの言っていたボーイッシュなメイドさんを探した。
出来る限りペッたんと言うよりは絶壁で……髪型はショートカットもしくはボブ系がいいだろう。髪型で絞り込み検索をかけた。
スクロールする画面上に一瞬だけ、赤い髪を短くしたボブショートの釣り目気味の女の子が見えた。
ページを戻し、その子の写真をタップする。中肉中背で、絶壁。名前は、ミールク。16歳。得意な仕事は、掃除。
この子ならば、宮ネェもお気に召すだろうとSSを撮影しメールで送信した。
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