第91話 最強は覇者を志す㉓ PT戦@少数

 回復である霞ヶ関を倒し終えた私の次の相手は、ゼンさんを追いかけまわす盾ことフルスクなのだが、先に重ATKである順平の動きを止めておく必要があると考える。

 彼に再度バインド(+18)を入れ直す予定で、バインドを詠唱し発動させること八回目漸くバインドのエフェクトがあがり、順平はその動きを止めた。


『ゼンさん、こっちに走って来て』

『はひっ!』


 現在、シロと宗乃助が同時に相手をしている白虹のHPは残り三割と言った感じで、もうすぐそちらも終わりそうだ。

 走って来るゼンさんの後ろからフルスクが走って着いて来る。

 フルスクのランスがエフェクトを伴い攻撃を繰り出そうとするのが視認できた。

 

『DP』


 慌てたようにシロが、フルスクに向かいダウン プルを発射するも彼の攻撃がゼンさんの身体をランスで射抜く方が数秒差で速そうだった。


『ゼン! 危ないでござる』

『あっ!』


 考えるよりも先に自分の身体が動く、プロテクト スケイルを詠唱し発動させた。完全に初撃を受けた状態でプロテクト スケイルがゼンさんに入る。

 フルスクの攻撃を一発食らっただけだが、HPの七割が消滅。もう少し遅かったら……死亡が確定していたところだった。


『……死んだと思いましたよ(涙』

『逝ったと思ったでござる』

『同じく』

『怖』


 本当に危なかったと安堵に胸を撫で下ろし、精錬回復のついた杖を持ち替えゼンさんにヒールを飛ばす。

 シロの放ったダウン プルがフルスクを足止めしている間に、杖を元の杖に持ち直しバインド(+18)を詠唱し設置発動させる。

 やはり、このPTの回復役以外は耐性が高いのかバインドがレジられる。


「チッ」


 やたらとレジられイラつきを覚え舌打ちをした私に対し、ニヤっとフルスクが顔を歪め笑った。

 あぁ、腹立つ! 


 イラつきが怒りに変わり意地でバインドにかけてやると決意し、バインドを連発すること12回……それでもレジられ、ついにダウン プルの効果が切れてしまった。


『こっち終わってでござるよ』

『盾優先で行こうか?』

『はい』

『ren。MP回復な! AB優先で入れて、宗さっきと一緒な~』

『承知』

『k』


 怒りにまかせバインドを打ち込み続けている間に、白虹を倒し終わったシロたちがこちらへ合流した。MPを回復しろよ? と、シロに言われて自分のMP残量を確認すれば残り半分といったところだ。


 MPPOTを取り出しがぶ飲みしながら、御所望のアーマー ブレイク(+25)を詠唱し発動させた。

 どうせレジられるんだろ……なんて思いつつ入れる事、9回目にして漸くアーマーブレイクのエフェクトがフルスクの頭上に上がった。


『ナイス。この調子でバインドも頑張れw』

『凄いシロの言い回しがイラっとくる』

『き、気のせいw』


 出来の悪い娘を相手に、良く出来ましたねって褒めてる父親のような感じの声音と表情を見せたシロに本音をぶちまけチラっと視線を送れば、頭をふり引き攣った笑いを浮かべて、右手に弓を握った状態で両手をホールアップする。


『まぁ、ren落ち着くでござるよ……』

『……うん』


 宗乃助に諌められ無かったことにしてあげた。

 今の状態ではバインドが入らない事は確実だ。そこで装着している装備をINT(知力)がセット効果で+5上がるローブに変更する。


 見た目がヴァルキリー鎧から、赤に金糸でペンタグル模様の刺繍が入った頭から膝辺りまでのダボっとしたローブに、膝辺りまでの黒と赤のチェック柄のスカート、踵低めのブーティの様なブーツに変わった。


『なんか、エセ魔導師に見えるわwwww』

[[さゆたん] renちゃんがローブでしゅw 似合わないでしゅw]

[[黒龍] あっ、マジだ……何年振りだ?w]

[[大次郎先生] おー。似合わないなw]

[[ティタ] 皆失礼だからね? renのローブ姿も……微妙?w]

[[†元親†] おー! 初めて会った時のrenだーw]

[[ヒガキ] 似合いますよ~!]

『renのそれ違和感ありありでござる』

[[宮様] ちょっと私も見たいわ!]

[[キヨシ] うははははは! 悪魔信仰協団幹部www]

『似合うと思いますよ』


 シロにエセと言われ、キヨシに悪魔信仰協団幹部と言われる。その他の意見も一様に酷い……バインドの為にと思って着替えたのに、何故ここまで貶されなければならないのだろうか? 


 ただのローブなんだよ……このローブを手に入れた後、嬉々として染色しデザインする私に数年後こうして笑われるぞと伝えてやりたい……それよりも、まずは笑われてまで着たローブを活用しなければとフルスクへと視線を向けた。


 フルスク以外のクラメンに笑われた怒りも含め足元にバインド(+18)を設置する。それと同時に詠唱し発動した。

 先ほどのようにレジると確信しているらしい、奴はイラっと来る笑顔を浮かべるも、足元からエフェクトが奴の身体を硬直させていくよう立ち登り、厭味ったらしい笑顔のままフルスクは固まった。


 それに対し魔力が尽きても構わないとヤケクソと言う名の勢いに任せブレス オブ アローを連発した。


 七発目のブレス オブ アローが、フルスクを射抜くと同時にフルスクが崩れ落ち灰色となった。残りは重ATKの順平だ。ゼンさんが背後を取り大剣を振るい、シロが正面から属性を纏った矢で巨体を射抜き、クリティカルの出易い急所を狙い宗乃助が、短剣を振り抜いた。


 二刀を取り出し斬り付けるよう側面へと回り込み、ローブからヴァルキリー鎧へと装備を変更してソウトウオオナミのスキルを発動した。


 四人でタコ殴り状態の順平が灰色となり倒れるまでそう時間はかからなかった。

会場にブザー音が鳴ると同時に【 Bチーム Win 】と頭上に高々と表示される。


 両手を挙げた宗乃助の左手にハイッタチで答えれば、ゼンさんもシロも手を挙げる。どこぞの青春映画宜しく、ハイタッチを交わし白チャで「おつ」と挨拶を流したところで、視界がブラックアウトすると街へと戻った。


 補給と装備の耐久を戻しに向かう道すがらクラチャ開く。こう言っては失礼かもしれないが、暇つぶしには丁度いいBGMだ。


[[大次郎先生] シロと宗とrenとゼンのPT安定してたなー]

[[ティタ] なんで……うちあんなボロボロだったんだろ?]

[[宮様] 一人厄介なのいるからじゃないの?w]

[[†元親†] キヨシかっ!]

[[キヨシ] 俺?w]

[[黒龍] 回復がクソだからだろ?w]

[[さゆたん] チカ2回回復してたでしゅよ?]

[[ヒガキ] 自分のせいでしょうか?]

[[大次郎先生] 私たちのPTにキヨシとチカが

       揃って居るからまずいんじゃないかな?w]

[[黒龍] 宮とヒガキとさゆだと安定してるぞw]

[[ティタ] あー。それはあるかもしれない……

     っていうか、問題児全部一緒のPTに揃ってるw]

[[白聖] どんまい……]

[[宗乃助] なんと申せば良いでござろうか?w]

[[大次郎先生] ってことで、黒かren どっちか引き受けて?w]

[[黒龍] え? うち……回復欲しいし、さゆの火力も欲しいから無理!]

[[大次郎先生] じゃぁren~]


 ここは存在を消すべきだと判断を下した私は、即座にクラチャを閉じた。見えていない振り……否、違う見ていなかったことにするんだ。そう自分に言い聞かせそのまま鍛冶屋と雑貨屋を経由しNPCに戻ったところで、がっつりと肩を掴まれる。


 振り返り先生を確認すると同時に「何?」と視線で問いかければ、少し黒いオーラを出した先生が「分かってるよね? まだ登録してないよね? 引き受けてくれるよね?」そう笑っていない瞳で訴えてきた。


 はぁ、仕方が無い……ここは折れるか……。


[[ren] 誰と交換なの?]

[[大次郎先生] んー。回復は欲しいからキヨシと……ゼンかシロかな]

[[白聖] どうする?w]

[[ゼン] 僕が移動した方がいいと思います~]

[[キヨシ] おートレードだ! あれか、ビックドリームだろ?

     俺、日本から大リーグに移動するんだな! うはははははw]

[[宗乃助] 不安しかないでござる……]

[[白聖] マジ、言えてる……]

[[ren] ……うん]

[[キヨシ] 頑張るぜ~!]

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