第92話 最強は覇者を志す㉔ PT戦@少数
ゼンさんとキヨシのトレードが終わり、PTを再編成してエントリーする。時間的には、残り2回出来るかどうかだろうと言う感じだ。
やる気に満ち溢れるキヨシをシロと宗乃助が、落ち付けと宥めるも無駄に終わり好きにさせておくことになった。
キヨシは意外と周囲を見て動くはずなので、きっと大丈夫だと言うシロに宗乃助と私が同時に疑いの目を向ければ弱弱しい語尾で、……多分なと付いた。
言えばその通りに動いてくれるのがキヨシで、言っても聞かないのがチカだ。どっちもどっちとは言うが、キヨシの方が行く分ましではある……はずだと自分を納得させた。
『キヨシ。盾居ないから気をつけて?』
『おう! 俺に任せとけww』
『いや、違う……盾いねーから前に出るなつってんのw』
『わかってるって~!』
『誠に不安でござる』
『信じて俺の事~♪』
不安と言えば、今回私たちのPTには盾役が居ない。その為キヨシがタゲられても助けられないと言う状況をキヨシが本当に理解しているかどうか……自分から俺は大丈夫だ、信じろと言う奴ほど信じられないと思うのは私だけだろうか? なんて考えて、なんとかするだろうと悩むことすら放棄した。
試合会場に呼ばれたらしくシステムログ内でカウントが始まった。
一応メンバーが変わった事で、作戦をどうするかと言う話になり、専攻は宗乃助その後私が斬り込み翻弄したところに、シロが足止めして、キヨシが固める作戦になった。
今回、一番柔らかいと言うか紙以下のキヨシを護衛するのがシロの役目になった。遠距離攻撃職同士ということで、任せることにしたのだがシロは俺で守りきれないと思うと困惑顔を見せていた。
かといって、私や宗乃助が護衛に着くのもまたおかしなことになる……ひとつ溜息を零したシロがキヨシに色々と指示をしていたのでキヨシ問題はこれで解決でいいだろう。
問題と言うか、なんというか、色々な物が決まり各々が次の戦いに向けシステムログのカウントを確認するかのように視線を空に向けている。その様子に私もログを確認すれば、残り5秒と表示されていた。
ふぅーと大きく息を吐きだし会場への移動を待った。視界がブラックアウトして、広がる大草原。
正面に既に見える相手の名前を確認すべく、視界右端を見れば、盾、盾、回復、遠距離魔法職の少し変わったPTだった。
順に、
『おー! あの盾持ちの赤花ちゃん、巨乳じゃん! たぷんたぷんww』
『丁度いいのも居れば、絶壁もいるでござるよ?』
『俺、美乳派!』
『巨乳以外
『そうでござるか? 膨らみがあれば拙者それでいいでござるw』
『美乳が一番だぜーw』
『こう、ん~~~って背伸びする時の揺れがたまらんw』
『どうせ中身男だから、さっさと準備して?』
早速食いつくシロ、宗乃助、キヨシが各々の好みを口々に言い放った。ここのティタも居れば嬉々として
現実を教えてやり、会話をぶった切るとバフを入れた。
『renは本当にπに乗ってこないよなぁ~!』
『どの大きさが好きなんだよ~?』
『renは以外と、巨乳派のむっつりでござるか?w』
はぁ……何度も伝えたはずだが未だに男だと思われている様子……訂正するのも面倒だ。と考えた私は、いっその事こう言ってしまえば今後何も言われないのではないかと考え『私、πより筋肉が好き』と言葉にしてみた。
『え……そっち系?』
『誠でござるか?』
『うわ……本物っているんだな』
『は??』
『い、いや、べっ、別に男を好きだったとしても、俺らの友情はかわんねーから……なっ?w』
『そ、そ、そ、そうでござるよ!w』
『あああああ、あぁ、かわんねーぜ!』
『ねぇ。誤解してない?』
『し、し、し、し、してねーよ?w』
『し、し、してないでご、ござるよ!』
『そ、そそ、そうだぜー! renはrenだもんなー!』
挙動不審になる男三人。前を抑え数歩後ろに下がるシロ、さっと5メートルほど離れた位置へ移動し後ろを器用に抑えた宗乃助、可哀そうな者を見る目を一瞬こちらに向け夕暮れに染まる空を見上げたまま私を見ようとしないキヨシ。
本気で男だと思われている事が良くわかった……ここまで言われて、されたのだ……殺しても私は悪くないと思う。
ニッコリ黒い笑みを浮かべ唇だけを動かし
今回巻き込まれる彼女たちには大変申し訳ないと思う……けれども、これはクラメンの躾だ……必要なことだ。
抹殺すると言う結論を出した私は、静かに燃え盛る怒りの炎を宿し試合開始を待った。
『8.7.6.5……4……3……2……1……gogo』
いつも通りシロのカウントが始まり、7秒前で宗乃助が相手へ右に迂回しながら突っ込んでいく。残り3秒で、私も動くべきところだったのだがその場を動かずただ静かに、杖を掲げgogoの合図を待った。
「イリュージョン カリエンテ」
全員殺すなら、トニトゥールスよりもカリエンテの方が良いだろうと言う判断でカリエンテを召喚する。
『は? 聞いてね―!』
『どっ、どうしたでござるか?!』
『うぉぉぉぉ! でけぇぇぇぇぇ!』
茜色に染まって居たはずの空に重く鉛色の雲が渦を巻きはじめる。渦の中心から紅蓮の炎を思わせる鼻面を現したカリエンテが、一度翼を動かせば雲がけし飛んだ。
ゆっくり羽ばたきその雄大さを見せつけるよう下降してくる姿を、私以外の全員が目を見開き見つめている中で地を揺らし私の頭上に舞い降りる。
「グルフオォォォ」
カリエンテがその獰猛な瞳で周囲を見回しトニトゥールスよりも少し高めの泣き声をあげた。
ゆっくりと四肢を踏ん張り首を天へと擡げ、鋭利な牙が幾重にも重なった口を開く。口腔内から発射されるどす黒い赤のマグマにも似た炎が、カリエンテの首の動きに合わせ周囲全てを炎の海へと変化させた。
【 Aチーム Win 】と言う表示と同時にブザー音が鳴り響く、「グルルルル」と喉を鳴らしたカリエンテが赤いエフェクトになり消えるのを見送り、荒れ狂うPTチャットをスルーして相手に対して「ごめんね。おつかれさま」そう白チャで伝えておいた。
巻き込んでしまった相手チームには本当に申し訳ないと思うのでしっかり謝っておいた。
カウント終了を待って、街へ戻ると宮ネェから密談が届いた。何かあったの? と優しく聞いてくれる宮ネェに内容を説明すれば草が大量に生えて返って来た。
[[白聖] マジ最悪!]
[[黒龍] それ、お前らなんか言ったんじゃねーの?w]
[[ティタ] 炎と雷どっちがダメージでかいんだろ?w]
[[宮様] 今回は、シロ、宗、キヨシが悪いわねw]
[[ヒガキ] どうしたんですか?]
[[さゆたん] 理由わかったでしゅか?w]
[[宮様] ren=女の子って設定なんだから
ちゃんとそういう対応してあげなきゃw]
[[キヨシ] いやいや、だってπより筋肉って言ったんだぞ?!]
[[大次郎先生] あー。性別は大事だなぁ~w]
[[宗乃助] そうは言うでござるが……]
[[ゼン] ネカマでもそう言うの大事にする人いますからね~]
[[†元親†] んー? renリアル女だぞーw]
[[ティタ] まー。今回は、シロ達が悪いw]
[[宮様] チカがなんで知ってるの?w]
[[黒龍] 騙されね―!]
[[†元親†] 実際に会った兄貴が言ってたから?w]
[[大次郎先生] まー、とにかくだ
ゲーム内の性別はちゃんと分けて考えてあげよう?w]
[[白聖] チカ、冗談も大概にしとけー?w]
最終的に誰も女だとは認めてくれないジレンマを抱え、殺したし少しはスッキリした。と自分の中で折り合いをつける。
他のメンツが揃っている事を確認してNPCに話しかけトーナメント戦にエントリーした。
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