第84話 最強は覇者を志す⑱ PT狩り

 ひとまず連合から抜け、3人PT単体となったところで室内を見回す。

 この部屋の中を見る限り1部屋、大体150体前後のモブが綺麗に直立不動で整列している。私たちがいるバルコニーから見て奥側を弓を抱えたガーディアンが徘徊しているようだ。


 ガーディアンが過ぎ去るのを待ち、姿が見えなくなったところで、二次魔法職の魔法、を整列するモブの一体に打ち込み姿を見せれば、ワラワラと周囲のモブが集まりだす。

 囲まれないよう注意しつつ、ジグサグに走り部屋のモブの繁文をバルコニーの左端の角手前まで引く。


 自身の身をそこに置く移動速度は遅いモブたちが到着するまでの間に、複数の設置型の魔法を設置する。そしてMガムを口へと放り込む……本当にこれで改良されたのか? と思いたいほどマズイ……。

 

 ・バインド(+18)

 ・ポイズン クラウド(+20)

 ・フレイム サークル(+20)

 ・スロー レンジ(+5)

 ・ショック ボルト(+19)

 

 モブが到着し始め攻撃をはじめる直前にゲッター サークルのスクロールを5秒ずつ時間をずらしながら数枚使用する。モブの攻撃があたらない位置で集めることと時間をずらしておくことのが重要だ。


 ある程度モブが纏まったところで設置していた魔法のフレイム サークル以外を発動させた。ドラゴン オブ ブレスとホーリー フレイム レイズ(+20)を詠唱し数回連続でモブへと叩き込みながら、フレイム サークル(+20)を発動させる。


 更に追加で精錬でサンダー スパークのついた鈍器を取り出し握ると発動させた、やはり遠距離魔法職の三次職魔法は強い。ドラマスにもあれば……そう思いながらも周囲を見れば、たった一度使っただけで、モブの半分ほどが死滅した。


 残りのモブへ再度ゲッター サークルを使い纏めあげドラゴン オブ ブレスとホーリー フレイム レイズ(+20)を叩き込む。ある程度被弾していたらしいモブは、そこで全てが黄色の粒子となり消えていった。


 MP効率は非常に悪いが、この狩り方が一番いいと少しだけドヤァしてみた私の姿を見ることなく、ゼンさんとヒガキさんは、一気に流れたシステムログに気を取られているようだった。


[[ゼン] うわー。凄く一気に流れました!]

[[ヒガキ] 本当に凄いです!]

[[キヨシ] 引き1回で経験値どんぐらい入った?w]

[[ゼン] えっとね……5%]

[[ヒガキ] 私は3.2%です]

[[†元親†] 課金の経験値POT買ってこいw]

[[ゼン] あ、そっか飲めばいいんですね!]

[[ヒガキ] 飲みます!]

 

 経験値POTは必須です! と言うチカとキヨシの助言に流石経験者と思いつつ、誰ひとりとして褒めてくれない現状に切なさを感じた。

 いつもの事だけどさ……せめて一言凄いって言って欲しいな……と、少しだけ切なさを感じながらもMPPOTを大量に飲み、部屋に残した半分を引きに向かった。


 突入する前に、トランスパレンシーと個人バフを更新する。

 そのまま走りさっきと同じ要領でモブを引き、設置魔法を置いた。その後POTをがぶ飲みしつつ魔法で攻撃を繰り返す。


 武器に付けた精錬の範囲魔法を、武器を持ち替えることでやりくりする。

 気がつけばバフの更新時間となっていたらしく、黒たちからクラチャで渡り廊下まで呼び出された。


[[黒龍] おー。二人ともどうよ?]

[[ren] バフ]

[[白聖] 経験上手いっしょ?w]

[[さゆたん] renちゃん、廃人だから狩りも上手いはずでしゅw]

[[大次郎先生] まーあれ経験すると、他の狩りがね……]

[[宗乃助] さゆ、それ褒めてないでござるよw]

[[ゼン] 凄いです。あっという間に70%位増えてます……]

[[ヒガキ] 自分は42%です]

[[†元親†] renに寄生すると、他の狩り行けなくなるw]

[[キヨシ] だよなーw]

[[宮様] あんたたち、常に寄生だったでしょうが……]

[[ティタ] 宮ネェ。それ俺もなんで何にも言えないw]


 どうやらゼンさんとヒガキさんも30分弱という時間でそこそこの経験値をゲットできているようだ。三次職になれば、ここに籠る事になるだろう。

 その時はまた連れて来てあげようと思いつつ更新を終えた。


 ティタ、キヨシ、チカに関しては……毎日のように寄生していたので、宮ネェには反論できないだろうと思いクスクス笑い黒たちと別れ再び狩りを再開した。


 その後も順調に狩りをする。時折見えるチャットには、キヨシ。チカと言う文字が良く見えた……二人の事だから、どうせ迷惑な行為をしたんだろう。と時折見えるチャットの雰囲気に、大変だなと同情した。


 1時間半ほど狩ったところで、先生が寝ると言い始めあちらのPTは纏め役を失う事になった。それと同時に始まる暴走……そして惨劇。

 少し早めに呼ばれ渡り廊下に戻れば、正座させられたチカとキヨシが項垂れ本気の説教をされていた。


[[宮様] 全滅しかけたわよw]

[[さゆたん] バカ過ぎでしゅww

      動くなって言ったのに動くから槍巻き込んだでしゅよ]

[[黒龍] タゲられたら素直にシネ? 久しぶりに死んだわw]

[[ren] ??]

[[白聖] いい加減覚えろよ~。スリリングなのはrenが居る時にしてくれw]

[[ティタ] も~、二人とも頼むよw]

[[†元親†] 本当にごめんね?]

[[キヨシ] 気をつける……TT]

[[宗乃助] チカがモブにタゲられて巡回引いたでござる。

     それに気付かなかったキヨシが、巡回巻き込んで魔法使って

     黒、さゆが死んだでござるよ]


 宗乃助の説明はかなりはしょってあったようで、その後より詳しい説明を宮ネェがしてくれた。

 黒が位置取りする前に殴りに行ったらしいチカにタゲが移り、それを他の狩り場同様周囲を回ることで回避しようとした所に、巡回が通りかかりチカを感知し攻撃しようと接近した。


 と、そのタイミングでキヨシが範囲魔法を使い巡回を撒きこみ。巡回がモブにまぎれ込んでしまった。そして、位置取りしていた黒はそれに気付かずレンジ ヘイトを打ち込み。さゆたんがタゲが固定されたと判断し範囲魔法を使う。


 結果、回復が追いつかない状態でHPを失った黒と、黒が死んだ事によりダメージを一番与えていた、さゆたんにタゲが移り死亡。

 さゆたんがタゲられる刹那宮ネェがバリアを使ったらしいが間に合わず、黒を起こしたことでなんとか全滅は免れたと言う事のようだ。


[[宮様] まぁ、皆落ち着いて……わざとじゃないんだからね?]

[[ren] 宗乃助>説明あり。二人とも装備は?]

[[黒龍] まー。死んだのはいいけどよ。

    チカ、位置取り気をつけろ? キヨシ、先走るな?]

[[さゆたん] 死ぬのは仕方ないでしゅよ? w

      でも、さっきのは避けられたはずだったでしゅよ?]

[[白聖] ren>さゆのブーツが消滅]

[[ティタ] 本当に二人とも気をつけないとね?w]

[[ren] そう。さゆたん、とりあえずこれ使って]

[[キヨシ] 気をつけるから許して~;;]

[[†元親†] マジでごめん。さゆ]

[[さゆたん] リアルならマジ締めてるところでしゅw

      カンストしてて狩りしなくなってたから

      今回は特別に許すでしゅw

      renちゃんこれ、本当にいいのしゅか?]

[[ren] y]


 キヨシとチカが怒られるのは当然として、さゆたんの装備は問題になりかねない……そこで、予備と言うよりは、移動速度アップの為に強化して持ち歩いていたローブ用の靴をさゆたんに渡した。


 しかし、こう言う時の黒とさゆたんはやっぱり大人な対応だ。怒ると言うよりは叱ると言う感じでそこまで強い口調ではないし、いつものキレた時の感じではない。

 一応、二人が気にやまないようにしているのだろう……。


[[宮様] ren。クラン倉庫にローブ用のブーツあったから

    それ渡してもいいかしら?]

[[ren] k。無料で渡していい。皆もいい?]

[[白聖] まー。今回はクラメンが理由だしいいんじゃね?]

[[黒龍] どうせこいつらじゃ補填できねーしいいよ]

[[キヨシ] モチ賛成!]

[[宗乃助] いいでござるよ~]

[[ティタ] k]

[[†元親†] 賛成]

[[さゆたん] ありでしゅ]

[[宮様] 後、二人は気をつけてね? これで終わりにして狩りしよう。

    ヒガキさん、ゼンさんPOT飲んでるから早くしてあげたい]


 クラン倉庫装備を渡すと言う宮ネェの意見に同意しつつ、さゆたんも気にしてないようだし今回の件を纏めた。じゃないと……いつまでも狩りができない。

 その後2時間ほど狩りをして、最終的にヒガキさんは2Lv20%。ゼンさんは2Lv80%ほどが上がったようだ。


 街へ戻りいつものクラチャになっている事に安堵しつつ、アイテムボックスの整理ついでに倉庫に立ち寄った私に、ヒガキさんとゼンさんそれぞれがトレードでドロップ品を全部渡そうとして来た。


 流石にそれはできないとクラチャで伝え、ドロップの中で複数個あった高級な部類に入る武器を一本ずつ貰い残りは、二人に戻す。三次職になれば装備を一新することになるため、今からお金をためておく方が良いと考えたからだ。


 整理を終え、宿屋へ戻る。視線の先には凹んだ? 様子のチカとキヨシが座っていた。室内にあるベットに座りキヨシとチカにPTを飛ばした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る