第78話 最強は覇者を志す⑬ PT戦

[[黒龍] は?]

[[ティタ] あ?]

[[ren] ??]

[[宮様] どうしたのよ?]

[[宗乃助] どうしたでござるか?]

[[キヨシ] うっしゃぁ~! 今度は生き残るぜぇ!]

[[大次郎先生] ん?]

[[白聖] 何かあったのか?]

[[さゆたん] どうしたでしゅか?]

[[†元親†] 早かったなぁ~!]

[[黒龍] 誰だ! 補給も済んでねーのにエントリーしたの?]

[[ティタ] 終わった]

[[ren] POT少しなら残ってる]

[[大次郎先生] チカだな。ログ残ってるw]

[[†元親†] まずかった?]

[[大次郎先生] 私のPOTも少し分けるよ]

[[宗乃助] まずいでござるよ。チカw]

[[ティタ] リアルでキヅナにメールしとく……]

[[黒龍] それがいいな……]

[[†元親†] いやあああああああ、それだけはそれだけはどうかぁぁぁぁ!]



 黒たちの前で土下座するチカ……そんなにキヅナに知られたくないのか……。

 チカのおかげで補給も鍛冶屋も行けないまま、カウントギリギリまでPOTやら物資やらを宮ネェたちから分けて貰い次の戦いへの準備を大急ぎで済ませた。


 何とか落ち着いたところで視界が暗転し、見える景色が闘技場へ変化した。

 さっそくバフをしようと思い、どういう組み合わせにしようかと視界右に見える相手の名前を確認すれば、大次郎先生、宮様、さゆたん、白聖、宗乃助となっている……。


『同志討ち……つみだなー』

『うわー。これ俺らつんでない?』

『なんだよー。安○先生も言ってたろ!

 ”最後まで……希望をすてちゃいかん。あきらめたらそこで試合終了だよ” って!』

『キヨシいい事言った!』

『だろだろ?! もっと褒めて! 俺褒められて伸びる子』

『褒めてやるぜぇ~ってお前いくつだよ……お前の人生のバイブルなの??w』

『いや、無理だろ……いくら○西先生でもスタメンが悪いなら諦めるだろ!!』

『不公平』


 どうやら、ティタも黒も気付いたようだ。死んだ魚の目で準備する先生たちの方を見つめている。キヨシが、場違いよろしくどこかの名言をひっぱりだし、それにチカがのるも冷静な判断の元ティタが突っ込んだ。

 本当に……この状況こそが、不公平だ。


 うだうだ言ってても仕方が無いとどこか諦めつつ、バフの効果範囲をPTのみに設定し開始する。


[[白聖] バフこっちにもまわせええええ!]

[[大次郎先生] んな無茶言うな。シロw]

[[さゆたん] ずるいでしゅ]

[[黒龍] ふざけんな! 俺なんかPOT80個しかないんだぞ!]

[[ティタ] 俺なんか……鎧の耐久30しかないんだぞ(涙]

[[宮様] ティタ……それは切ないわねw]

[[宗乃助] 80個……もう少し分けておけばよかったでござるよ……]

[[白聖] あー。なんかごめんな?ww]

[[さゆたん] 不憫でしゅw]


 クラチャで、相手方にいるメンバーからバフのエフェクトが見えたのか不満の声があがった。それに対し黒とティタが、ふざけんなと言う言葉を皮きりに、クラチャで自身のアイテム状況を訴えた。

 装備耐久30は不憫すぎる……。どうせPOTとか魔石とか、装備の耐久とか色々な物が足りないし? 身内だし? さっさと終わらせてしまっても問題ないだろう。


 黒い思考でそう思い至り、ニヤっと笑いを浮かべた私の表情を目ざとく見ていたらしいさゆたんがクラチャで「いやな予感がするでしゅ」と呟いた。

 その言葉に警戒を顕にする先生たち……だが、もう遅い。


『ren、俺の後ろな。しょっぱな狙われるのお前だろ?』

『だろうね』

『カリエンテあるしなーw』

『あの竜かっけーよな! 俺も呼びたい!』

『k。召喚していい?』

『プロテク貼ってくれるならいいよーw』

『わかった』


 開始のカウントが0になる前に、黒の背後に移動しつつ身を隠した。

 先生たちの行動や考え方は、嫌と言うほど判っているのだ。最初に狙われるとすれば私だろう。

 黒の言葉にありがたく彼を盾にした。カウントが0になると同時に予想通りシロの矢が、私めがけて飛んでくるも黒が盾を上げ庇ってくれた。


『雷竜見たい』

『おー。いいねぇ~。あれの正面マジでなんも見えね―からなぁ』

『k』

『経験者は語るw』

『いや、砂埃しか見えねーんだよw』

『へ~。外から見るとマジでカッケーよ。金でさ~』

『ほー。それは楽しみだ』


 PTチャットで、ティタからトニトゥールスを見たいと言われた。ニッと笑い合い、杖を掲げ詠唱するため声を上げる。


「イリュージョン トニトゥールス」


 透き通るような青色の空を引き裂くよう、太く大きな稲妻が一筋落ち、砂塵が舞い始めそれは徐々に視界を塞ぎ、先生たちと私たちを分断した。

 雷鳴が何処からともなく鳴り響き、舞っていたはずの砂が次第に渦を巻き。バリバリと電気が走る音を鳴らす。

 そして黄色い大きな竜を描くようなエフェクトへと変化して行く。


「グルボオオオオ」


 渦を巻き丸い繭玉のような砂の中から、会場いっぱいに響き渡る鳴き声があがると同時に砂がパンと弾け、トニトゥールスが姿を見せた。

 獰猛な赤の瞳に、長く稲妻を纏わせた髭。噛まれたら即死間違いなしだろうと思う程鋭く尖った牙を持ち、元は金色なのだろう鱗は、稲妻がそれを伝うことで白とも銀とも見える。


 トニトゥールスが、その獰猛な視線を先生たちへと向けた。

 とここで、プロテクト スケイルを発動する。間髪入れず、四肢を踏ん張り首を天へ擡げ、耳を塞ぎたくなるほどの咆哮をあげる。


「ギュアオォ!」


[[さゆたん] やっぱりでしゅうううううう!]

[[大次郎先生] 普通に戦ええええええええ]

[[宮様] もういやぁぁぁぁぁ!]

[[白聖] ふざけんなあああああああああ]

[[宗乃助] 実に美しいフォルムでござるな……ハハハ]


 的にされた五人が各々、最後の言葉を残し終えたのを見計らったように、天から幾筋もの稲妻が高速で落ち逃げ場を失くした。

 落ち続ける雷の中を巨体に似合わないほど高速で移動するトニトゥールスが、その勢いのまま雷を纏い五人へと突っ込んだ。


[[キヨシ] 我が僕よ行くがよい!]

[[†元親†] ひゃっはー!]


 まるで、ビルの爆破解体が起こったかのような音が鳴り響いた。そうかと思えば、今度はその巨体故の反動か地が揺れ、震動を伝える。巨体を動かし私の元へと戻ったトニトゥールスが「グルルル」と喉を鳴らしたかと思えば【 Bチーム win 】と頭上に高々と表示された。


 トニトゥールスがエフェクトとなり去ったのを確認し、目を眇め未だ砂塵が残る方を見れば、先生たち五人が闘技場の壁に大の字で押しつぶされ張り着いた形で灰色となっていた。


[[†元親†] やべぇ、ト○とネズミ思い出したわwww]

[[ティタ] SS撮らないと!ww]

[[黒龍] 先生の丸い腹が……凹んでみえるんだがww]

[[キヨシ] うおぉぉぉ! すげー。俺も1回潰されてみてぇ!]

[[大次郎先生] 凹んでないから!]

[[宮様] ちょっと、さっきの黒の時と攻撃違うわよ!]

[[さゆたん] だからrenちゃんとは戦いたくないでしゅ……

       火力も防御も意味無いでしゅよ……]

[[ren] ティタ後でSSplz]

[[白聖] 最悪だ……]

[[宗乃助] 拙者の攻撃を物ともしないとは……無念]


 労いの挨拶を終えたところで、視界がブラックアウトし街に戻ると同時に、PTを即座解散させた。先ほどの様な事があっては堪らないと考えたからだ。


 そのまま、補給と鍛冶屋へ向かい再戦に向け準備を終わらせ、NPCへと戻れば黒からすぐさまPT申請が飛んでくる。それに被せるように、先生からもPTが飛んできた……何事かと思い二人を見れば、クラチャで言い合いをしている。


 内容的には、バフが欲しいと言う事のようだった。下らない……。今日は、黒たちとやるとクラチャで伝えそちらのPTへと入った。


 さっそくエントリーを済ませたらしい黒とティタから、SSが届いた。

 それを開き見てみれば、車にひかれたカエルのように潰された、灰色の五人の姿が鮮明に映し出されていた。

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