第47話 最強は撲滅を齎す⑰
帰還した街の中でハタと気付いた……ボス忘れた……。
立ったまま打ちひしがれる私の様子に、さゆたんがポンポンと腰を叩いてくれるものの、それどころではない。
ボスを……食べ損ねた……これも、全部アクセルのせいだ!!
八つ当たり気味にアクセルのせいにして、鍛冶屋と倉庫へ向い足を進める。
そこに、憎いアクセルを見つけ舌打ちしつつ刀へ手をかけるも、街中で殺す事ができないことを思い出しより怒りを募らせる。
「げっ……」
目を眇め睨む私の姿を確認したらしいアクセルが、蛙の様な鳴き声を上げ固まる。
「アクセル……こ――「おー。逃げたアクセルだー。お前ざこすぎだよ~」」
「チッ」
私の白チャをぶった切りキヨシがアクセルに声をかける、いらつき舌打ちするも完全にスルーされキヨシとアクセルの会話がはじまってしまう。
今日は厄日だ……絶対。
そんな私の思考を遮る声でキヨシが、友人のようにアクセルと会話を交わしているのを無視して、街中でのPKは出来ないことをに対し、歯痒く思いながらも倉庫整理をはじめる。
先程拾った装備について聞こうかとも思ったが、会話に参加する気になれずそのまま倉庫整理を終え鍛冶屋、雑貨屋と経由して宿へと向った。
ボスを食べにいこうかと思っていたのだが、装備品に返却は早い方がいいだろうと考え今回は諦めることにした。
宿への道すがら全チャを開きいつも通りの文章を打ち込む。
{[Ryou太] たまたま通りがかって起しただけなのに、殺されるなんて……}
{[髭男爵] クラン中世貴族ではクランメンバーを募集しています。
興味がある方は、密談plz}
{[ren] グランドロール 装備返却希望者 密談 or プラークシテアー宿 まで @10}
{[ニーヤ] 誰か善悪の塔のPK詳細plz!!}
{[みかん] 野良PTなのに殺されたー!}
{[黒龍] それはお前がわりーわ。ちゃんと宣戦布告の内容見直せよ。草生えるわ}
{[白聖] 善悪のPK詳細かぁ、グランドロール3PTと
グランドロールに協力して起しに来た野良PT1 全滅}
{[ティタ] Ryou太って奴嘘つくなよ? 猛獣でお前たちが起してるの知ってるぞ?}
{[黄金のダン] いやー。強いっすよ}
{[宗乃助] こっちは9人だったでござるよ}
{[むーみんさん] まじで……9人で4PT潰したの? 最強じゃん}
{[ニーヤ] 流石死神様や~}
{[黒龍] まぁ、雑魚だったしなぁ~}
{[大次郎先生] 黒、シロ、ティタ、宗乃助 いい加減だまろうか?}
{[白聖] なぁ~。Ryou太なんで黙るんだ? 黙秘は肯定だぞ?wwww}
なんか知らない間に、全チャでPKの事が流れていた。多分発端は野良PTの誰かのチャットなのだろう。わざわざ上から読み直すつもりはないので、あくまで予想なのだが……。
野良PTについては殺されて当然なのでスルーするとして、黒、シロ、ティタ、宗乃助が全チャで語る。
先生がなんとか止めてはいるが、このまま止まることはないだろうなと思いつつそっと、全チャのタブを閉じ宿屋の中へと入る。
[[大次郎先生] おか]
[[ren] ただ。他は?]
[[黒龍] おけーり]
[[ティタ] おか~]
[[白聖] 宮とさゆは、休憩落ち。ゼンとヒガキはどっかに狩りだと思うぞ]
[[大次郎先生] キヨシ一緒じゃなかったの?]
[[ren] アクセルと仲良く話してた]
[[ゼン] おかえりなさい]
[[ヒガキ] おかです]
[[黒龍] キヨシの唯一の特技だな]
[[ティタ] 唯一wwwww]
[[大次郎先生] 宮とさゆの分の装備預かってるから渡しとく]
[[ren] k]
[[キヨシ] 戻ったー。アクセル超おもしれーよ!]
[[白聖] それ、お前だけな]
室内には、先生と全チャしていた四人以外その姿が見えず、他の人はどうしたのかと確認すれば自由にしているようだった。
トレードで拾った装備を預かり時間を潰す中、キヨシが室内へ現れると同時にアクセルが面白いとわけのかわらないことをいいはじめる。
キヨシ曰く、あいつは苦労してるんだとのこと……いや、まず口の聞き方から教えて来いとはティタの談。
[[黒龍] 次どうする?]
[[大次郎先生] うーん。多分今日は警戒してもう上がってこないんじゃない?]
[[白聖] じゃぁ、野良潰す?]
[[ティタ] それも微妙かも。既に2回やってるわけだし]
[[大次郎先生] とりあえず、名前直しついでにどっかいくか?]
[[黒龍] そうだなぁ~]
[[ren] アクセル殺したい]
[[白聖] とりあえず、俺らで狩場周っていなかったら名前直しいくか]
[[ティタ] アクセルはまだ消えてないからいずれ殺せるよ]
[[キヨシ] 俺もついてくぜ~!]
確かに先生の言うとおり今日既に三回PKやってて、これ以上狩場にでることはないだろうとは思うが、如何せんさっきのPKが消化不良気味だった私は、アクセルを殺すことを優先的に考えてしまう。
それを拾ってくれたのはシロで、一度見回り居なければ狩りに行こうと言ってくれた。
流石、イケメン……。
そう言うわけで宮ネェたちが戻るのを待ちつつ、装備の返却希望者を待つ、まず来ないだろうが……。
結局10分経っても取りに来る者が居なかったため、クラン倉庫へと入れることになり、欲しい人はその都度誰かしらに聞いて売ってもらってくれとクラチャで伝えておいた。
宮ネェが戻り、さゆたんを待つも来ない……リアル今何時かと聞けば、夜の8時過ぎだと言う。
これは娘を寝かしつけにいったなと言う先生の言葉で、さゆたんのことは諦め黒たちとポータルまで移動する。
黒、ティタ、シロ、宗乃助にバフをかけトランスパレンシーを入れる。
それと同時に各々が、野良に人気の狩場へとポータルから姿を消した。私、宮ネェ、キヨシ、先生は、その場で留まり報告を待つ。
その間に、倉庫へ移動しクラン倉庫へ拾った装備を押し込むとポータルへ戻る。
その時間を利用して、取引所で魔法書を隈なく探す……レジられまくりのサイレンス、バインドに代る使える魔法が欲しいからだ。
サブクラスをあげればいいのだが、時間が惜しい……急いでやったとしても流石に数時間ではあがらない。
いずれは上げるだろうが、今現状を打開できる魔法が欲しい……と言う欲望のままに取引所を見ているのだが、そう易々とあるはずもなく。残念な結果に終わった。
取引所を閉じクラチャを確認したところで、シロからの報告があがった。
[[白聖] グランドロールじゃないけど、敵いたぞ]
[[宮様] どこ? 誰?]
[[白聖] 沼 みかん。野良だな]
[[ren] 一人?]
[[白聖] これ以上近寄れないから見れない]
[[ren] いくー]
[[黒龍] 善悪24F 黄金のダン、Ryou太いるわどうする?]
[[大次郎先生] シロの方にren既に飛んでるし。黒の方に俺たち加勢にいく]
[[白聖] k]
[[黒龍] k]
報告が次々あがる中で……黒、遅いよ! なんて思いつつ既に【 ナイアス 】へ移動していた私は、急ぎ沼へと走る。ナイアスから、東へバフを入れ走ること5分漸く沼の入り口へ到着した。
[[ren] シロどこ?]
[[白聖] 南の奥の方だな。MAPで言うと三角の沼の右上の大沼]
[[ren] k]
[[宮様] ふたりとも気をつけなさいよ]
用心のためトランスパレンシーだけをかけ直し、シロの言う沼をマップを見ながら目指す。2分ほど南に進んだ所でPTメンバーの表示が見えた。
それを目指して走れば、木の陰にうつ伏せになり姿を隠すシロを発見した――。
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