第45話 最強は撲滅を齎す⑮

 ティタのつけたターゲットマーカーに、反応したのは宗乃助とティタだけだった。

 他のメンバーは呆然と私を見つめていた。


[[ren] さっさと終わらせよう?]

[[ティタ] そうだね。次 ザクロ@5]

[[宗乃助] renが殺ってくれてスッキリしたでござるよ]

[[ren] ティタが欲しいスキル書何?]

[[ティタ] あぁ、クロス スタンってやつ]

[[ren] 後で倉庫見てみる]

[[ティタ] ありあり。あるなら買う]

[[黒龍] なぁ……なんでお前らは平然と会話できるんだ?]

[[宗乃助] だって、renでござるよ?]

[[ティタ] renだしなぁ~]

[[白聖] あの武器って年末絵年始クエストやらないと手に入らないとか言う代物だぞ?]

[[宮様] はぁ~。私たちとのオフ会拒否って、クエストやってたのね……]

[[大次郎先生] あ……なんか幻覚見た気がする……]

[[キヨシ] うおぉぉぉ。すげーな! ren]

[[さゆたん] あんなの色の武器、誰も勝てないでしゅ]

[[黒龍] さゆ、勝とうとするな……多分あれ、+25以上の最怖武器だ……]


 先生が記憶喪失……? 確かに、オフ会拒否ってクエスト万頑張ったし、最強装備だけど……当て字が酷いよ黒。

 色々言いつつもタゲを囲んだメンバーを確認して、バインド(+18)を設置する。

 準備が整った所で宮ネェのピュリファイのエフェクトが上がり、バインド(+18)を発動させサイレンス(+25)を相手のザクロにかける。


 バインド(+18)にかかり色味を変化させたザクロは、ただ棒立ちのまま黒たちの放つスキル、エフェクトに包まれる。さゆたんのアイス ランスが薄青のエフェクトを残しつつザクロを射抜くとそれがLAとなり、後へ倒れると灰色へと変化した。


[[さゆたん] 真っ赤でしゅ!]

[[宮様] 本当に綺麗な赤になったわねー]

[[キヨシ] 俺も俺も~!]

[[宗乃助] この会話だけ見たら、無差別PKクランのようでござるな]

[[大次郎先生] 宗……言うな……]

[[ティタ] 次 なんて読むの? 甘藍@4]

[[キヨシ] あまかん?]

[[黒龍] かんじゃねーだろwww]

[[白聖] きゃべつだ!]

[[宗乃助] 本当でござるか?]

[[白聖] おー。うちのばぁちゃん農家だから間違いない]


 甘藍と書いてキャベツ……覚えておこう。読めなかったとは言わない……絶対。

 キャベツにターゲットマーカーが示され、バインド(+18)を設置……流れ作業過ぎる。

 ひとりあたりの処理時間は約1分……早い方だが、如何せんワクワクもドキドキもしない。


 あのカオス状態に戻らないだろうか? などとひとり思考しつつピュリファイに合わせバインド(+18)とサイレンス(+25)をかける。

 レジられたバインド、同時発動したサイレンスがかかると攻撃が開始される。


 キャベツは、抵抗するように盾に身を隠しつつHPPOTを飲んでいるのか、黒たちのエフェクトの隙間から、緑色のエフェクトが見える。

 ブレス オブ アローを、3発放ったところでPOTが尽きたのか、キャベツは倒れ灰色に変化する。


[[ティタ] ディータ@3]

[[キヨシ] 濁点とー抜いたら、ティタだな。うははは]

[[黒龍] 確かに]

[[ティタ] 名前変えてくんないかな?]

[[宮様] 前に、装備借りパクしたやつと名前一緒だって言ってキャラデリしろとか言った

     頭おかしい奴と同じこと言わないの!]

[[大次郎先生] いたね。renに粛清されて本人がキャラデリしたけど……]

[[キヨシ] いたなぁ~。あいつまだやってんの?]

[[さゆたん] つい最近、似た名前みたでしゅよー]

[[白聖] キャラデリ要求する奴が、変態すぎるだけw]

[[宗乃助] 懐かしい思い出でござるな]


 キャラデリ――キャラクターデリートの略。オンラインゲームにおけるキャラクターを削除すること――を要求されたのは、その当時のクラメンだった初心者で要求した相手は、大手PKクランのクラメンだった。狩場である日突然、理由も言わずにPKをしかけクラメンを殺したのだ。

 理由も語らず殺すなど、理不尽すぎると相手に対し、イラついた私たちは即日開戦を選びとことん殺りあった。

 最後の方は、ただPKするのが楽しかった記憶しかないけど……しつこいPKに根負けしたのは相手のクランで、謝罪文を公式の掲示板にアップした上でクラン解散すると言う条件をだし解除した。


 そう言えばあの時PKされたクラメンってどうしたんだっけ? まぁ、いいやと考えるのを止め次の、ターゲッの足元へバインド(+18)を設置する。


[[ティタ] 次 榛名愛@2]

[[宮様] そう言えば、昨日元親からメッセ来てたわ]

[[大次郎先生] おー。チカ元気なの?]

[[黒龍] 生きてたか]

[[宮様] クラン作ったって言ったら、近々復帰するって言ってたわよ~]

[[白聖] まじで!]

[[キヨシ] おぉぉ。回復2枚になるじゃん!]

[[さゆたん] 確かにそうでしゅが、チカがヒール使ってるとこ見た記憶内でしゅ]

[[ティタ] チカは、特攻型ヒーラーだからな]

[[ren] いつ?]

[[宮様] そう言えば、回復職だったわね……]


 囲んだATK陣を確認した宮ネェのピュリファイに合わせ……バインド(+18)を発動させ、サイレンス(+25)を詠唱する。

 石化が解除されると同時にバインド(+18)にかかった榛名愛は、何故か腰に左手をあて、右手の人さし指をあげかけた微妙な耐性で変色している。

 

 クラチャであがった元親の復帰の方が気になるのか、誰も彼の行動に対し突っ込みを入れない……どころか、気にもしていない様子でスキルを叩き込んでいる。これがスベったと言うことなのだろうと思った。


 元親は、以前作っていたクランのメンバーで、ティタが言うとおり特攻しか能がない脳筋の熊獣人だ。

 ローブ姿で、大剣を振り回すと言う荒業をやってのける……紙ATKだったけれども。

 なぜ近接職ではなく回復職なのか聞いたことがある。

 すると彼は、大剣振り回してヒールできるとか、マジ神がかっててかっこよくない? そう言っていた。


 回復してるのみたことないよ? そうキヨシに突っ込まれていたが、本人は気にする素振りも見せず、ブンブン大剣を振り回していた。

 そんな彼も、就職することになりゲームを去った? と言うより、いつの間にか居なくなっていた。


 元親が戻れば、回復が2枚になるこれで攻城戦には参加できそうだ。と期待しつつ、思考を打ち切り榛名愛に向けブレス オブ アローを叩き込んだ。

 LAは、先生だったようで名前の色味がどす黒い赤に変化した。


[[ren] 先生、そろそろ100?]

[[大次郎先生] 今カウントあがった。95ってログ流れた。課金アイテム使う]

[[黒龍] 落ちんのだけは勘弁だな]

[[ティタ] 次 Red Bull@2]

[[さゆたん] いつもお世話になってるでしゅ]

[[白聖] 俺モンスター派]

[[宮様] 私もお世話になってるわー]

[[キヨシ] 臭いから飲めない~]


 さゆたんが、敵の名前に反応して相手に軽く頭をさげた。

 石化が解除され、バインド(+18)とサイレンス(+25)をかけるもどちらもレジられてしまう。


 舌打ちしつつ、再度サイレンスをかけようとしたところで、シロのスキル、ステフ プラウセス――三次職専用、弓装備時のみ使用可能なスキル。攻撃力を半減させる代わりに、相手を40秒間麻痺させる――が、相手を射抜き麻痺を与え帰還を阻止する。


 40秒ではギリギリ足りない可能性を考え、再度サイレンス(+25)を入れる。4度目で漸くサイレンスが入るも、直に相手は倒れ灰色へと変化した。

 

[[ティタ] ラス。グランセス]

[[黒龍] グランセスか……]

[[キヨシ] 元クラメンだが、今は敵だ~!]

[[さゆたん] 戻ってくるでしゅかね?]

[[大次郎先生] 無いだろなぁ~。抜けた理由が……黒に負けたからだし]

[[黒龍] 効率㊥はいらねー!]

[[白聖] こいつ、理屈ばっかだったよな]

[[宮様] 戻って来たいとか言うことは無いでしょw]

[[ren] ボス行きたいから、早く]

[[ティタ] 相変らず、話ぶったぎるww]


 最後の相手は、元クランのメンバーだった。加入して一月もしない内に抜けてた人だ。元クラメンだろうと私にとっては敵だ。

 足元にバインド(+18)を設置して、宮ネェのピュリファイを待ちエフェクトが上がりと解除されると同時に発動させる。その後、サイレンス(+25)を入れればどちらも入ってしまう。

 

 黒がニヤニヤと相手を笑顔で挑発しつつ、ティタと宗乃助がスキルを放ち、先生が大槌を振り回す。

 シロのサンダー ショットが額を打ち抜き、さゆたんのサンダー スピアとキヨシのアイス ランスが同時に、その腹部を射抜いた。


[[黒龍] LA plz]


 クラチャに反応したメンバーが攻撃を止めると、黒が剣で相手を切りつけていく。

 縦横無人に動く剣に炎を纏わせた黒が、その腹を横に切ったと同時にグランセスの身体は燃え上がり倒れると灰色へと変化した。


「グランセス、お前相変らずよえーな」


 どす黒い笑みを浮かべた黒の決め台詞が白チャに流れた。

 それに少し遅れてお疲れと労い合い、死体が消えていないことを見回し確認してトランスパレンシーを入れる。

 帰還したように見えていれば、協力者が必ず起しに来ると予想して、60F階段の側で待機するため移動した。

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