第44話 最強は撲滅を齎す⑭
バフの更新を終える前に、哀れなカイザーは黒によって討ち取られた。
[[ティタ] 次 ぐらんど……何だこの名前?]
[[大次郎先生] グランドクロスって名前にしたかったんだろうな]
[[キヨシ] Grand Crossじゃなくて、Grand Croseになってる~]
[[さゆたん] 可愛そうでしゅ]
ティタが頭を頭を悩ませる名前のATKを取り囲みつつ、可愛そうな人を見る視線を送るメンバーは宮ネェのピュリファイのエフェクトが上がると同時に会話を止め、スキルや魔法を打ち込みはじめる。
アーマー ブレイク(+25)のエフェクトが、弾けると同時に囲まれていた、猫の獣人は帰還の護符を使ったのか消えてしまった。
[[黒龍] くそっ。逃がした]
[[ティタ] 次からバインド or サイレンス よろ。森蜜]
[[ren] k]
逃がした事に、苛立つ黒。ティタの言葉に設置型魔法であるバインド(+18)を置くと同時に、次のターゲットの名を告げ、マーカーがそれを示す。
宮ネェが解除の魔法を使い、エフェクトが消え動けるようになった森蜜に、サイレンス(+25)をかけつつバインドを発動させた。
サイレンスはレジられてしまったが、バインドに引っかかりその色を変色させた。ついでに、ブレス オブ アローで攻撃する。
PKしてるのにただ見るだけなんて一番つまらないことはしたくない。
まぁ、今も大して面白くはないんだけど……本気で熱くなれる戦いがしたい。PK用の装備使いたいな……ボス用じゃなくて……。
PK用の装備、ボス用の装備、街着の三つがあるのだが、実際PK用の装備は出来た当初に一度使っただけだ。
同等LvのはずのATKが、豆腐のように軟く脆かった。楽しいと感じる暇もなく、空しさだけを残し終わってしまった。それ以来、PK用の装備は、軽く封印状態になっていた。
[[ティタ] ガネゴン]
いつの間にか沈んでいたらしい森蜜の死体をチラリと視界に入れ、ターゲットマーカーを探す。次の相手は、筋肉マッチョの熊だ。絶対リアルでもプロテイン飲んでるだろう? と聞きたくなるほどマッチョな熊に宮ネェがピュリファイをかけ、石化を解除する。
バインド(+18)を設置発動させ、サイレンス(+25)を詠唱付きでかけた。
どちらかにすればいいのかもしれないが、耐性に関してはその人の装備次第……後、運次第? だ。
[[黒龍] なんかさー。ただ処理するだけってつまんねーな]
[[ren] y]
[[大次郎先生] 仕方ないだろ?]
[[宮様] 残り8人でしょ! 頑張りなさい]
[[ティタ] 確かに、つまんない]
[[キヨシ] 超ワクワクしたいぜ]
[[宗乃助] 拙者も、これはつまらないでござるよ]
[[さゆたん] 処理終わらせるでしゅ]
[[白聖] んー。俺もなんか飽きてきた]
つまらないといいながらも、攻撃を止めることはない。シロのサンダーショットを受けたガネゴンが、ピクピク痙攣しながら倒れ灰色になる。
と……そこで、面白いことを思いつき提案してみることにする。
[[ren] 全員、石化解除してタイマン。帰還されたら、罰ゲームとか?]
[[キヨシ] いいじゃん! 面白そう~]
[[宮様] ふふっ、楽しそうだけど私参加できないわね]
[[大次郎先生] 遊びじゃないんだよ?]
[[宗乃助] 面白そうでござるよ]
[[白聖] ありじゃん]
[[黒龍] 罰ゲームの内容次第]
[[ティタ] AYA。やるのはいいけど、残り7だw]
AYAにターゲットマーカーがあてられる。
クラチャで会話しながらも、宗乃助、黒、先生、ティタが囲みこんだ。バインド(+18)を仕込み、宮ネェのピュリファイのエフェクトがあがり解除される。
直に、バインドを発動しサイレンスの詠唱をはじめたところで、AYAの身体が変色した。
詠唱途中でサイレンスをキャンセルして、ブレス オブ アローに切り替えAYAへ叩き込む。
人数的に足りないと言う話になり、今回は遊ばないで真面目に事後処理にとりかかることになった。
猛獣の時と同じく死体が消えていないことを考え、またさっきのPTが起しに来るのでは無いか? とクラチャで話、その作戦をクラチャで話し合う。
[[白聖] じゃぁ、トランスパレンシー入れて59Fのさっきの小部屋に戻るのは?]
[[黒龍] あそこからだと階段みえねーよ]
[[ティタ] もう、ここ待機でよくない?]
[[さゆたん] それだと来なくなるでしゅ]
[[大次郎先生] 既に出発してる可能性もあるから、やっぱりこの近辺で待つ必要があるな~]
[[ren] ボス狩って来ていい?]
[[宮様] 私は59F待機の方がいいと思うわ]
[[キヨシ] 俺どこでもいー]
[[黒龍] ダメに決まってんだろ! 飽きたからって、壁向こうのボスに反応すんな]
[[ティタ] 俺もボス狩りたい。スキル書欲しい……]
[大次郎先生] ボスはあとだ。今は、PK優先でしょ?]
[[ティタ] カゲ@6]
さっきから、ボスが壁向こうにいることをマップで確認していた私は、欲望のままにPKがつまらないからボスを狩りたいと進言してみるも、先生からジト目を向けられた。
AYAのLAは、どうやら宗乃助だったらしく名前の色が朱色から赤へと変化していた。
ティタの欲しいスキル書とは、どれのことだろうと思いつつ、ターゲットマーカーが武器を見る限り暗殺者だろうカゲを示す。
既に流れ作業的な状況になった、バインド(+18)を足元に設置、宮ネェのピュリファイのエフェクトが消えると同時に発動させ、サイレンス(+25)の詠唱に入った。
「こっ――」
石化が解除されたことで、何かを言いかけたカゲがバインドをレジストしつつ、サイレンスにかかる。
結局言葉は分らないまま彼へ攻撃を開始した。
スキルや魔法のエフェクトが、目に宜しくないほど現れては消えていく。
[[黒龍] なんか、降参だとか言ってんだけど?]
[[大次郎先生] は?]
[[宮様] 誰が?]
[[黒龍] カゲってやつ。グランドロールは抜けるって]
[[ティタ] 命乞い?]
[[黒龍] ちょっい止まって]
[[宗乃助] 命乞いでござるか……情け無用では?]
[[大次郎先生] とりあえず止まろうか]
黒と先生の言葉に、カゲを取り囲んだまま皆が停止する。暫く時間がかかるようだと判断して、バフを更新することにした。
ただ、暇だった……と言うべきなのかもしれない。それもすぐに終わってしまった。
5分ほど経ち、カゲと話した黒のチャットがグラチャで流れる。
完結に言えば、やはり命乞いだった。Lvが後少しであがるところだったらしく、見逃して欲しいと言ってきたらしい。
こういうやつが一番気に入らない……な。
ソウル オブ カリエンテ、ファイアーウェポン(+25)を自身にかけ、杖からPK用の刀である、+29 ムラクモXオハバリ――年末年始に開催されたイベントクエストで手に入れた最強の刀を鍛冶屋で二刀に変化させたもの――を取り出す。
ギョッとした表情の宗乃助に、ニコっと微笑みカゲへと視線を移すと、イベントで手に入れた日本刀使用時のみ使えるスキル、アマギリ――霧のように細かい小雨が降るように、相手に対し無数に刃を突きつけ切りつけるスキル――を唱える。
刀を抜きクロスさせるような型になり、両の刃を上から下へと振り抜けば、無数の水色をした透明感のある刃のエフェクトが、カゲの頭上から降り注ぎ、その身へと突き刺さりダメージを与えた。
赤いエフェクトが飛沫を現すと、命乞い空しく倒れ灰色となった。
殺されたくないならクランを抜けておくべきだったのだ。もしくは、PKが開始された直後に帰還すればよかったはずだ。
だが、こいつは宗乃助に対して攻撃をしていた。
自分達が優勢ならばPKに参加する? 不利になったら命乞いをする? 本当に、腐った考えだ。そんな考えを持つ輩に、同情も憐れみもする余地は必要ない。
口角をあげ獰猛な笑みをつくり、卑下する視線を倒れるカゲに向ける。
「逃がしてもらえるとでも思ったの? 猶予は十分に与えたでしょ。
誰一人、許される、逃げられると思うな」
そう白チャに残し、倒れたカゲから視線を次のマーカーへと移す。
二刀から杖に装備を変更した――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます