第43話 最強は撲滅を齎す⑬

 私のというよりは、攻撃力だけは高いクラメンたちに攻撃を受けたロリエルフは、1分もかからず多彩に光るエフェクトに包まれ幻想的にその死を迎えた。


 それをチラっと視線を向け確認したところで、チャラ男っぽい見た目と前髪が鼻につくヒューマンにスローを詠唱し発動させれば、足へエフェクトが浮かびあがり明らかにその速度が落ちる。


[[ティタ] 俺様]


 ティタが即座にターゲットマーカーを合わせ、名前をクラチャに流す。

 名前からダメそうな奴だった。


 キヨシたちが使った、フリーザーの効果が切れるまで残り1分半ほどだ。

 早めに、処理を済ませたいと考える私の思考と被った先生からクラチャで、ABと言われアーマー ブレイク(+25)を詠唱つきで発動させた。


 今回は一度めで、エフェクトが現れ弾けた。

 人知れず、グッと拳を握り喜んだところで、ダウンプルにかかっている盾に、ペトリファクションを試すがやはり耐性が高いのか、レジ(ストさ)られた。

 

[[さゆたん] おかしいでしゅね。また……死体が消えないでしゅ]

[[大次郎先生] 野良に起してもらうつもりかもな]

[[白聖] 野良来るなら、一石二鳥だなー]

[[黒龍] こいつら先]


 クラチャの話題が既に、グランドロールを復活させた野良PTに移りつつあるなか、無言でペトリファクションを盾に入れ続ける。

 どれだけ耐性付けてるのこいつ……15回目ですけど?


 全く、石化する気配のない盾に、愚痴を垂れつつ16回目を試した。漸く足元から黒いエフェクトが立ち登り、盾が石化する。

 クラチャを見れば、ダウンプルの効果切れまで@5秒とシロが出したところだった。


 PK中ではあるが、警戒を怠ることなく、INTが足りないのではないかと思考を始める。

 これ以上、既にカンスト状態の三次職ではLvがあがらない。だとすると、やはりレベルキャップを解除するべく、サブクラスをもう二つ育てるしかない。

 そう結論付け、そこで思考を切った。


[[さゆたん] しつこい、つってんだろうがぁ!]


 しつこく追い回されていたさゆたんが、立ち止まり素の言葉を使い、クラチャで発言すると自身を追いかけるATKに、詠唱破棄でサンダー スピアを連発しはじめた。

 彼が、キレたのだと全員が等しく理解するのに時間は必要なかった。

 

 雷が槍の形になり何本も落ちる。ダメージを受けているはずのATKは、そんな状況でも、さゆたんにダメージを与えるべく大斧を両手に持ち距離を詰める。

 大斧を斜め上に掲げ持ち、さゆたんにその刃を向けた。スキル使用のエフェクトが彼を包むように現れる、それを察知したさゆたんが悪魔の微笑みの如く、ニヤっと一瞬だけ笑ったように見えた。


 大斧の戦士が、スキルを発動させその身体に赤いエフェクトを帯びる。

 身体に似合わず、軽く地を蹴り飛び上がり腰から上を捻るような体勢を取るとさゆたんへと突っ込んだ。


 エフェクトが徐々に消え、振りぬいた大斧の柄を右手に持ち、片膝をついて停止した戦士が、ゆっくりと時代劇の悪役のように倒れ灰色へと変わる。

 振り向いたさゆたんが、恍惚の表情を浮かべ戦士へと視線をむけ白チャで発言した。


「あぁ~。惜しかったなぁ。俺にはかてねーよ?」


 煽ることを忘れないのは流石だが、キャラが崩壊しすぎだ……元ヤンは怒らせてはいけない。

 そうさゆたんに関して再確認した。

 気を取り直し黒たちの方をみれば、そちらも新たなターゲットへと移動を開始するところだった。


[[大次郎先生] ren、キヨシ、さゆはメイジ職、残りはフリーザーから]

[[黒龍] k]

[[ティタ] 隅にいた弓職、帰還した。草]

[[白聖] さゆたんにびびったか?ww]

[[キヨシ] うははは。さゆやべー]


 さゆたんにビビッたのかは不明だが、帰還したものがいることが報告される。

 早めに殺さなければ苦労してPKする甲斐がない。と迅速に行動を開始する。


 サイレンが入っていれば、帰還されることは無かった……逃がしてしまったのは私の責任だ。

 そう考え、さゆたんと大斧のタイマンを観戦していた、自身の行いを反省する。


[[キヨシ] まゆ姫]

[[ティタ] 月下]


 キヨシがタゲの名をクラチャで流す。まゆ姫の現在位置を視界に入れ、バフの更新時間を計るため、更新することなく杖から二刀に持ち直す。


 全速力で走り距離を縮めていく私の横を、キヨシとさゆたんのアイス ランスが通りぬけ、タゲであるまゆ姫を捕らえ突き刺さった。

 氷の弾けるエフェクトと赤いエフェクトが同時に弾け、ダメージを与えたことを知らせた。


[[ティタ] 紅蓮]


 それに少し遅れた私は、遠距離職を疎ましく思いながらも、辿りつき眼前のまゆ姫に対し、右手の刀を鞘から抜くとその勢いのまま横一線に走らせた。

 一閃の形に似ているが、スキル使用の選択をしていないため、ただの居合いに近い。


 間をおかず左手の刀を抜刀し、身体に対し垂直に持ち上げ頭上から切りつける。無抵抗に等しいまゆ姫に対し、私は刀で、きよし、さゆたんはアイス ランスで追撃を加えれば防御力に乏しいメイジ職の彼女は、ふらふらと揺れた後前のめりに倒れ灰色へと変わった。


[[さゆたん] メイジラストでしゅ。ミラクルさん]

[[白聖] ティタ、スキル使うぞ]

[[ティタ] k]

[[ren] さゆたん、キヨシMP注意]

[[大次郎先生] 宮、ピュリファイ準備しといて]

[[黒龍] ナイス。シロ]


 見ていない間に、氷像の処理が終わり、ティタたちの方は石像の処理へと取り掛かり始める。

 次のタゲであるミラクルの眼前へと駆け寄り、左手の刀で背後を切りつけこちらを向かせた。


 引き攣った表情を見せるミラクルに更なる恐怖を与えるため、右手の刀を首の付け根にあてがい、一拍置いて振り抜いた。

 間髪おかずに、ミラクルの背面にいるさゆたん、きよしがサンダー スピアを同時に叩き込む。


 尻餅をつき口をパクパク動かし、両手を必死に振って見せる彼と視線を合わせたまま口角を上げ、右手に持った刀を振り下ろし、左手の刀で横へ薙ぎ切り付けた。

 それが決めてとなり、ミラクルは横向きに倒れると灰色へと変化した。


[[さゆたん] 加勢に行くでしゅ]

[[キヨシ] 名前負けだったな~。ミラクル]

[[ren] ミラクルに雑魚って付ければ名前負けしてない]

[[さゆたん] ミラクル雑魚さんでしゅねw]

[[黒龍] 草]

[[ティタ] 草]

[[白聖] わらわせんなーw]

[[大次郎先生] だべってないで、手伝ってw]

[[宮様] そう言えば、renってネーミングセンス激悪よね]

[[白聖] 俺昔、金聖が取れなかったって言ったら

     ゴールド聖にすればいいのにって言われたぞw]

[[黒龍] セイント○矢思い出したわwwww]

[[さゆたん] ネーミングセンス酷いでしゅw]

[[キヨシ] ゴールド○イント白聖www]


 移動しながら、キヨシの言葉に答えれば、何故か私がディスられるハメに合う……不思議だ。


[[ティタ] @11 カイザー 石化解除よろ]


 タゲ指示を出したティタも含め、私以外がくすくす笑いその顔を緩ませているという状況で、カイザーは石化を解除されると同時に攻撃されはじめた。

 クラメンは気付いていないかもしれないが、精神的にかなりのダメージを与えていることだろう。


 そう思考しつつも、敵に容赦は無用と思い直し、アーマー ブレイク(+25)を発動させた。砕け散るエフェクトが消えるのを見守り、バフの更新をはじめた――。

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