第40話 最強は撲滅を齎す⑩

 リアルで休憩を終わらせ、ゲーム内へログインする。宿屋を出て鍛冶屋へ向い装備の耐久を戻し、倉庫へ向う。カリエンテを使ったお陰か、大量にドロップした肉321個が、アイテムボックス内で異彩を放っている。


 倉庫を開き、肉を突っ込めばその数30万飛んで782個となった。

 別に素材として肉を保管している訳ではなく、【 デメテル 】にある料理店に持っていけば売れるのだが、どうせなら一度で運びきりたい。そう思って貯めている内に、この数になってしまっただけだ。30万で売ろうかとも考えたが、ここまで貯めたなら目指せ100万個と思い直し貯めている。


 肉の数を見て、SSを撮りクラメンに一斉送信してみる。

 勿論、肉以外表示させないように画像をいじくってだが……。


[[さゆたん] 肉……バカみたいな数でしゅ]

[[ティタ] 捨てられない症候群]

[[キヨシ] それ売ったら、60Mじゃん!]

[[黒龍] ゴミを良くそこまでためれるな?]

[[宗乃助] 肉……でござるか。拙者捨ててたでござるよ]

[[宮様] 肉300k個……ちりも積もればと言うけど……凄いわね]

[[ren] ティタ。違う。捨てられないじゃなく売りに行かないだけ]


 ティタの言葉に語弊ごへいがあると伝える。肉一個の買取価格は200ゼル。100万貯めるつもりなので……いずれ200Mになる。まぁ、溜まったからと言って売るかどうかはその時の気分次第なんだけど。


[[白聖] なぁ。ren]

[[ren] ?]

[[白聖] ゼルいくらあんの?]

[[ren] 知りたい?]

[[宮様] 気になるわ!]

[[宗乃助] 是非!]

[[白聖] なんでも受け止めるぜ!]

[[黒龍] 俺も!]

[[ティタ] 俺も!]

[[さゆたん] わたくちも!]


 シロが名前を呼ぶので答えれば、何故かゼルをいくら持っているかと聞かれた。

 つい、期待させるようなことを言えば、現在INしている全員が食いつく結果となってしまった。

 これで内緒とか言ったら……どうなるんだろうか? クラメンだし教えるのに問題はない。

 開いた画面のゼルの部分を確認する。


[[ren] 3Tちょっと?]

[[黒龍] マジで言ってんの?]

[[白聖] 何だその額……ゲーム内でも格差社会……]

[[ティタ] 嘘だよね?]

[[宗乃助] 凄いでござるよ]

[[ren] SS送る?]

[[さゆたん] マジでしゅ……]

[[宮様] ren あんたどうやってその額貯めたの? 脅したりしてないわよね?]


 受け止めるんじゃん? と思いつつも見ていれば、宮ネェの言い草が一番酷かった。

 私脅したりしてないし、善悪のボスをソロで食べてただけで……悪いことはしていない。疑う発言をするティタにちょっとイラっとし、倉庫のウィンドウをゼルの表示に合わせSSをパシャリと撮り、皆へ一括送信した。


[[黒龍] ……マジダ。SS見てみろ。ありえねー]

[[宮様] うわぁ~~。こんな数字持ってるやつもいるのね~]

[[白聖] 俺、全財産5Mなんですけど……]

[[宗乃助] 千両箱何個分で……]

[[さゆたん] シロは装備かったばっかりでしゅ。

       あたくちなんて……消耗品以外、何も買わないのに減るでしゅ]

[[ティタ] やっぱ強化運いいやつは、金持ってんだな……くそっ]


 なんだろう……落ち込ませた? 晒さない方が良かったような雰囲気に、申し訳なくごめんと言いかけたところに、キヨシたちが戻ってくる。


[[キヨシ] ただいまー!]

[[ゼン] 戻りました~]

[[ティタ] おか~。キヨシよりましだな俺……]

[[白聖] おか。うん……まだ、帰還の護符は買える!]

[[宗乃助] おかでござる]

[[宮様] おか。あんたたち……それは流石にキヨシも傷付くからやめなさい!]

[[さゆたん] 二人の言い草が酷いでしゅ]

[[ren] おか]

[[黒龍] まー。護符は誰でも買えるだろ?]

[[キヨシ] 何の話?]


 酷い言い草である。

 確かに、帰還の護符が買えないほど強化にお金を注ぎ込んだキヨシが悪いにしても……酷い。

 タイミングが悪いだけなのか、それともキャラ的なものなのか、謎は謎のまま放置して、彼のお陰でクランチャットの雰囲気が戻る。

 その後もクラチャは続いていたが、参加はせずにアイテムボックスを整理する。


 今回かなり強化の石が落ちている。と言っても肉ほどではないが……。

 ありがたいと思いつつ倉庫に突っ込み、整理を終えると雑貨屋へ向う。

 購入するものは、高級魔石とPOTだけだ。砥石と専用の帰還の護符は、善悪の塔に登るポータルの逆にあるNPCで購入するためだ。


 PKの準備を完了させ宿屋へと戻れば、タイミングを計ったように先生とヒガキさんが戻り全員が集合した。


[[大次郎先生] 全員。装備。補充できたかな?]


 その言葉に頷き同意を示す面々。

 流石に、モブを自己処理できないメンバーをつれて善悪の塔へ昇るわけにも行かず、ヒガキさん、ゼンさんには申し訳ないが今回は留守番と言うことになった。


 準備が整い、PTを組みなおすと時間を確認する。

 41Fからの捜索で50Fで発見できなければ、51Fから60Fまでを探すと決まった。


[[大次郎先生] 皆スク多めに持った?]

[[黒龍] 宮ネェが帰還したら、HP自身のないやつは即、帰還で]

[[キヨシ] 帰還の護符買わなきゃだから、先にNPC寄って良い?]

[[大次郎先生] k]

[[ティタ] よし、いくかー]


 ティタの言葉を合図に、宿屋を出たポータルへと向う。

 ポータルで移動する前に、全員にバフを回す。個別のバフは善悪の塔入り口でかけることにして、移動先がばれないようトランスパレンシーを入れ善悪の塔がある【 プラークシテアー 】へ。その後街にいるNPCを通じて、善悪の塔へ移動した。


 善悪の塔入り口で、ディティクションを打ち上げ、敵対が居ないかを確認する。

 周囲を見回していたティタ、黒、宮ネェから次々クラチャで問題がないと報告が上がり、その場で移動速度が上がるバフを追加しつつ、個人バフも入れる。


 再度、トランスパレンシーをかけ直し、雑貨屋であるNPCを訪ね必要な物を購入していく。

 主に砥石、帰還の護符だ。

 皆が買い終えたかをクラチャで確認して、全員が購入済みとわかるとポータルへ向った。


 41Fへとポータルで移動する。

 黒、ティタを先頭に、キヨシ、さゆたんが宮ネェと私を挟み、最後尾をシロ、先生、宗乃助という布陣を組み済んでいく。


 ここのモブは、蟻だ……幼虫から、成虫まで全てがアントと名がつく。


 41~43までは、幼虫とアントしか出現しない。


 44~45までは、アントとビック アント、ビック アント ソルジャーやクラッシャーと名がつくモブが出現する。


 47~50までは、アントが居なくなり、ビック アント と グレート アントと名がつくモブに変わり、強さも早さもかなり強化される。更に、魔法を使うウィザードの名を持つものまで出現する。


 50Fに湧くボスは、グレート アント キング。このボスの固定ドロップが、かなり高額な値段で取引される防具の材料となる。また、アント キングの首飾りと言う、レアアクセが極々稀に落ちる。


 ドロップ率なんて……0.01%あるかどうか程度だと思うけど……。

 それ以外、蟻の顎か酸しかでないし、PK以外では絶対に来ないなと思いつつ、バフの時間を確認して、44F入り口でバフを更新した。

 階層に上がるたび、ディティクションを打ち上げ確認をとりつつ50Fを目指す。

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