第27話 最強は撲滅を目指す②

 今回加入する二人は、とりあえず見習いにするとクラチャで決まり、先生経由で、さゆたん、宗乃助の了承をとった後、二人を加入させることになった。

 勧誘するのは、部隊に入れる、キヨシと盾に釣られた黒だ。

 盾の差額分ぐらいは、ヒガキさんを使えるように育てて欲しいところ……。


 二人がクランに加入したことを知らせるログが、クラチャに流れる。

【 ヒガキ が Bloodthirsty Fairy クラン 黒龍の部隊へ加入しました 】

【 ゼン が Bloodthirsty Fairy クラン キヨシの部隊へ加入しました 】


 キヨシの部隊という単語に、不安を覚えるのは私だけだろうか? 

 そう思っているとクラチャでもその話題が投下されていた。


[[ティタ] なんか、キヨシの部隊泥舟にしか感じられない]

[[白聖] 消滅する部隊だろ?]

[[宮様] ちょっと、不吉な事言わない! まずは歓迎しなさい]


 宮ネェの言葉に、クラチャで一斉に歓迎する言葉が流れる。

 主に、おいでませ、血塗られたクランへ とか 「よろ」だった。

 入れて初めて、先生がある事実を伝える。


[[大次郎先生] そう言えば。このあとグランドロールとクラン戦争始まるから

        狩り行くなら、二人一緒に行った方が良いよ~]


 その伝え方が、非常に軽い! 二人は嫌なんじゃ? と考えていれば既に知っていたらしく、


[[ヒガキ] 初めてのクラン戦争楽しみです]

[[ゼン] すぐ死ぬかもしれませんが、頑張ります]


 二人の頼もしい返事を聞いたクラメンが、色々とお節介を焼き出すのを眺めつつ、真面目な人で良かったと思った。

 クラン戦……その単語で、キヨシに装備を渡していないことを思い出した。


[[ren] キヨシ。倉庫いて、別キャラ]

[[キヨシ] うぃ]


 宿屋を出て、倉庫へと向かう。倉庫について、画面上にあるキャラクターチェンジ(以降=キャラチェン表記)のマーク――人のマークが二つ。矢印が上下にあり内側に向いたもの――をタップする。すると、ウィンドウにサブキャラの名前と縮小版のキャラが表示される。


 メイジ職にしている。買取専用のエルフを選択して、OKボタンを押した。

 全てが暗転し、買取キャラのいる【 プラークシテアー 】の町並みが視界に入った。倉庫へと移動しつつ、アイテムボックスを開き、このキャラが持ついつか、強化用の生贄にするための装備をスクロールしながら見ていく。


 黒用の盾も持っていくことを忘れないようにしなければ……。

 ウィンドウ内に、今の装備に変更するまで使っていたローブセット一式が、見え慌ててスクロールを戻し、確認してこれにすることにした。


 属性は火の防御が入っているし、多分……これなら多少殴られても死なないだろうし?

 使うのがキヨシというだけで、この装備も十分強いはずなのに不安を覚えた……のだが、これ以上の装備を貸しても、死ぬ時は死ぬだろうと諦めこの装備を倉庫へと預ける。


 杖は何がいいだろうかと悩み、使う本人にきいてみることにする。


”倉庫弐号機にごうき” キヨシ。杖? 魔法剣?

”キヨシ” 誰だお前! 敵か?

”倉庫弐号機” 死ぬ?

”キヨシ” あぁ、renか。 うーん。どっちでもいいけど火力あるほうが良い。

”倉庫弐号機” 属性は?

”キヨシ” 水希望

”倉庫弐号機” k 探してみる。待ってて。

”キヨシ” おう


 火力があると言えば、やはり両手の杖だろう。水属性の杖か……あったかな? そう考えつつ、キャラを元の場所へと移動させると、キャラチェンのマークをタップする。

 表示されたウィンドウから、ドワーフ爺を選びOKボタンを押した。

 暗転し、次の瞬間に視界は【 デメテル 】の街並みを映し出していた。


 そそくさと、倉庫へ移動しつつアイテムボックス内をスクロールさせていく。

 両手杖のストックは、全部で10本はあるもののその全てに属性なかった。これは、面倒なことになりそうだ……と思いつつ。

 持っている中で、一番強いであろう+19 アスクレピオス――善悪の塔40層のボスドロップ品――に属性を着けることにする。


”倉庫初号機しょごうき” キヨシ 水の属性石ある?

”キヨシ” 30個しかない

”倉庫初号機” わかった。杖 アスクレピオス でいい?

”キヨシ” レアドロ――レアドロップ――じゃんそれ!

”倉庫初号機” 分割 利子無し ある時払いでいい

”キヨシ” 買った!

”倉庫初号機” 水石30個は現物で、残りはツケ

”キヨシ” あり


 交渉は成立した。倉庫に杖を預け、元の場所へと移動させ、猫獣人のキャラへとキャラチェンする。視界が暗転し、【 プラークシテアー 】の街へと戻ると、そのキャラで倉庫へと移動する。倉庫から+19 アスクレピオスを取り出し、鍛冶屋へと移動する。


 属性を付与するためには、鍛冶屋で作業を行う必要がある。

 用意するものは、水の属性石50個、高級魔石100個、聖水10本だ。

 高級魔石の出費が痛い……と思いながらも、仕方ないと諦め混じりに溜息を吐きつつ鍛冶屋へと入った。


 内部に居る、NPCへ話しかけ開いたウィンドウから、属性を付与するを選択すれば、ウィンドウの表示の上に更にウィンドウが開き、その上にアイテムを入れる四角い囲いが現れる。

 ・水の属性石 10個

 ・高級魔石 20個

 ・聖水 2本

 それから、武器を入れ付与するボタンを押すと表示が切り替わり炎のようなエフェクトがでる。


 属性付与は簡単にMAX300まで行くだろうと思われがちだが、属性の石を10個も使用するのに、付与される数値はピンきりで運が良ければ、50~100。運が悪ければ、10なのだ。

 とりあえず、5回試して駄目そうなら、そのままキヨシに渡す。

 

 と、そこまで考えたところでウィンドウの表示が切り替わり、昔使われていた電子レンジのチンという音がなる。受け取るというボタンをタップして、確認すれば 属性が25しか乗っていなかった……。


「あぁ~」


 自分の運の悪さに失望しつつ、脳内でキヨシに謝り2回目を開始する。その後五回目まで試し結果

 二回目 80

 三回目 10

 四回目 65

 五回目 50

 と言う、微妙な結果だった。

 運が良いものならば、五回でMAXまで行くのだが、私には運が無かったらしいく、合計で230だった。これ以上はやらないと決めていたので倉庫へと戻り、杖を倉庫に入れメインキャラへと戻った。


[[ren] ただ。キヨシお待たせ]


 クラチャで戻ったことを知らせ、倉庫で棒立ちしていたキヨシに声をかける。待ってましたと目を輝かせ即座にトレードを出してくるが、まだアイテムは倉庫の中だ。

 無言でキャンセルを押し、倉庫の中から防具一式、アクセサリー、杖を取り出した。

 

 こちらから、トレードの申請ボタンをタップし、トレードしたいキャラ名にキヨシを選択する。

 ウィンドウが開き、取り出したアイテムを全てのせて、完了ボタンを押した。

 古い装備は、装備を変えた後直にトレードで返却された。


[[ren] 装備借用書、杖代金分メール 水石50 高級魔石100]

[[キヨシ] わかった! これで俺スゲー強くなった!]

[[宮様] キヨシ……]

[[大次郎先生] ren! 甘やかすな]

[[ゼン] キヨシ君 装備どんなのになった?]

[[白聖] ちょっと、ren甘やかすなら俺は?]

[[ティタ] こうやって、キヨシは借金が嵩むんだな……]


”ren” 黒、倉庫

”黒龍” k


[[黒龍] あーあ。キヨシ、お前どんな装備借りたんだよ]

[[キヨシ] 聞いて驚け! +19 アスクレピオスだ]


”黒龍” 着いた

”ren” k


 先生に怒られ、シロに集られるのは、いつものことだ。

 クラチャで会話をしつつ、倉庫の外でこっそりと黒に+23 エヴァラックを渡す。

 嬉しそうに、装備を取替えた黒が凄く良い笑顔で密談を送ってきた。


”黒龍” 狩り行って来るわ!


 その後姿を見送る私の横を、キヨシが走り抜けるとポータルへと向かって行った。

 キヨシも狩りに行くのかな? と思いつつ、クラチャを見ればキヨシに渡した杖に宮ネェが発狂している……。

 どうやら、ずっと欲しいものだったようだ……。次に出来たら必ず売れと脅迫された。

 酷い有様ながら、全チャでカウントを入れる。


{[ren] クランドール戦@8:20}

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