最強はボスを狩る②

 私の職業は、フォルティッシドラゴンマスター略してドラマスと言うバッファー付与師だ。他にもバッファーはいるけど、より面白そうなコレを選んだ。そのおかげか基本攻撃は二刀の武器が使え、バフ付与スキルを使うの時は、主にMPマナポイントの消費削減がついている杖を使用している。

 

 バフは、それぞれに設定された時間内で自分自身、クランメンバー、PTメンバーなどを強化することができる。病ゲーでは、バッファー職のみ、他キャラクターに対してバフをかけられる仕様だ。


 更に、全ての職業が攻撃魔法や攻撃スキルを強化出来る。

 自分の上げたい魔法やスキルのひとつを選び、レベルを上げて獲得できるスキルポイントを十ポイント消費して+1ずつ強化していく。但し、強化数値が+7以上になれば必要ポイントは倍になり、失敗しやすくなる上に失敗すれば強化値が下がることになる。

 それでもやるのは、強化値が上がっていく毎に魔法やスキルの効果が数パーセント上がるからだ。


 杖に持ち替え、自分にバフをかける。



 ホーリーウェポン(+25)

 (聖属性魔法 武器に聖属性付与、悪魔アンテッドのみ15%攻撃アップ)

 マジックアーマー(+25)

 (魔法で自身の身体を包み込み、被ダメージ15%減少)

 アーマーシールド(+25)

 (強固な盾。前方のみ被ダメージ25%減少)

 ファイアーウェポン(+25)

 (火属性魔法 攻撃力25%アップ)

 ヘイストⅡ(+25)

 (攻撃速度、移動速度が共に30%アップ)

 エレメンタルエンチャント(+25)

 (火・水・風・地の攻撃に対し、被ダメージ5%減少)

 マジックオブワイルド(+25)

 (魔法攻撃力12%アップ)

 マジックオブボディ(+25)

 (自身のHP20%アップ)

 マジックオブスピリット(+25)

 (自身のMP20%アップ)

 マジックオブマインド(+25)

 (幻惑、睡眠、混乱、沈黙の低効率 20%アップ)

 マジックオブシールド(+25)

 (攻撃魔法の被ダメージ 33%減少)



 二階に入ると一階ほどの光量がなくなり、暗くて見え難い。そこでいつも通りに一次魔法のライト――これだけはどんな職でも使える――を灯して移動する。


 一つ目の角を曲がると直ぐに、ジャイアントマウスと出くわす。

 ジャイアントマウスは、大きさが人ふたり分の大きさがあるでかいだけのネズミだ。攻撃は、とがった前足の爪で引っ掻いてくるか、突き出た歯で噛みついてくるかの二通り、どちらも攻撃を受ければ毒を受けた状態になる。


 走り寄って来るネズミの前足に注意を払いながら、杖を構えた。

 二刀を使わず杖のままなのは、ネズミの移動を阻害する設置型のバインド(+18)を置くため。無事成功して、ネズミが動けなくなったところで、二刀に持ち替えて攻撃する。とカッコよく言ってみたけど、このネズミは二回の攻撃でHP枯らせるほど弱い。

 その結果、戦闘は直ぐに終わり、大きな身体のネズミは淡い黄色の光の粒子になって消えた。


【 1,028ゼルを獲得しました。 】

【 ジャイアントマウスの尾を獲得しました。 】


 自動で流れるシステム用ウィンドウを見れば、拾った物がログとして表示されている。

 

 スクロールでないよね……、まぁ簡単に出る仕様じゃないから仕方ない。先に進もう。


 バフを更新しつつ目的地である階層転移ポータルを目指す。その後、何度かジャイアントマウスとの戦闘して、五分後には階層転移のポータルについた。魔法陣に乗ると転送するかを聞いてくる。

 もちろん、はいを選択。


【 転送可能な階層を選択して下さい。 11 21 31 41 51 】


 持っているスクロールや宝玉が反応して、今行ける全ての階層が表示された。

 私が選ぶ階層は、勿論ソロで行ける最高階層の51階。数字をタップした途端、魔法陣が光輝き、瞬きする間もなく視界が切り替わった。


 51階から60階までは、古城の様な雰囲気が漂うアンデットゾーンだ。

 続く廊下の床や壁、天井には所々黒ずんだ血糊が着ていて、ワインレッド色のカーペットが歪な形で床に伸びており髑髏が積み上がっている。

 見慣れてしまえばどうと言うことは無いが、初めてこの階層に来た時はビクビクしてしまった。


 魔法陣を出る前に時間差で切れそうなバフをかけ直し、上へ登る階段を目指して出発する。


 51階にでるMOBは、スケルトンと上位種であるハイ・スケルトン、ハイ・スケルトンアーチャー、ハイ・スケルトンスピア、ハイ・スケルトンアックス、スパイトルと言ったアンテッドだ。

 私の場合、スケルトン系は全て魔法で瞬殺できるため非常に楽なのだが、56階からスケルトンに混じり厄介なゲイザーも出現し始めるため注意が必要となる。


 魔法で瞬殺を狙う私は杖を構え、周囲を警戒しつつ早足で進んでいく。

 視界右上に表示されせたマップに映し出された5つの赤い点滅を確認して、歩調はそのままに魔法の準備をはじめる。


 後二十歩……三……二……一、今だ! ホーリーフレイムレンジ(+20)。


 MOBがこちらに駆けだした刹那、ホーリーフレイムレンジが発動して聖属性の白金に輝く炎がMOBの周囲を囲み、MOBが見えないほど高くなると範囲内を炎が格子状に走る。


 白金に輝く炎に焼かれ、MOBは踊るように抗うが、既に逃げ場はなくカタカタと音を鳴らして崩れ落ちた。

 そして、全てのMOBが、粒子になって消えると同時にシステムログが流れた。

 

【 10254ゼルを獲得しました 】

【 スケルトンの骨を獲得しました 】

【 7528ゼルを獲得しました 】

【 4665ゼルを獲得しました 】

【 12687ゼルを獲得しました 】

【 8795ゼルを獲得しました 】

【 善悪の塔51階のスクロールを獲得しました 】


 ここ、お金はいいけど、その分ドロップアイテムが微妙。もう倉庫にスケルトンの骨だけで、十二万個位あるから捨てたいとは思うけど、やっぱり勿体ないから持って帰ろう。

 

 こうして毎回悩む貧乏性の私の倉庫には、常に捨てきれないゴミが堪っていく。


 いい加減どうにかしたいとは思ってるんだよ。だけど捨てるかって思うと、どうしても勿体ないって思ってしまう。皆どうやって捨ててるんだろう? 今度、誰かに聞いてみよう。

 まぁ、捨てられないアイテムの中で一番のゴミは、動物系を倒すと必ず出る肉だったりするけど、どうせ捨てきれないのでどこまで貯められるか試してみるのもいいかもしれない。

 ゴミの事は置いておいて、スクロールが出たから嬉しい。昨日は、一切出なかったから、もしかしたら今日はドロップデーかも?


 都合よくゴミ処理を忘れた私は、うきうきしながら歩みを速めた――。


 60階層のボスが湧くまで、残り55分――。


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※ 2024.5.2 改稿。

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