第2話 帰宅と作戦会議
今は帰り道。
今日は朱音の所属しているバドミントン部は休みらしいので一緒に帰ることになった。
さて、状況を説明しよう……。
話が続かない……!
以前までの俺たちなら15分くらいの帰り道ぐらいずっと話し続けることくらい余裕だった。
これは友達関係から恋人関係に変わってお互いに緊張しているからか?
いや、違う。偽!の恋人だからだ。
普通の恋人だったら帰り道に手を繋いだりするのかもしれない。
でも俺たちは偽なんだ。
恋人の「フリ」をしなければならない。
俺は朱音のことが好きですぐにでも手を繋いだりしたい。
でも、朱音は違った。
朱音とイチャイチャしたいのは山々だが、それ以上に朱音からの信頼を裏切りたくなかった。
「朱音、バドミントン、今どんな感じなんだ?」
俺は頑張って話を繋げる。
きっと俺じゃなかったらもっといい言葉が出てきて朱音を楽しませているに違いない。
「え、う、うん!頑張ってるよ!来月、大会あるの!がんばって一回戦勝ちたいなぁ。ヒロ君も見に来てくれる?」
朱音は子犬のような顔で俺を見つめる。
そんなこと言われて「行かない」とか言えるやつこの世に絶対いないわ。
「もちろん行くに決まってんだろ、旗持って行って応援してやるよ」
「ふふっ、ヒロ君そんなことできないでしょ。まあ、ヒロ君がそう言うなら期待しとく」
バレてた。まあ、俺は基本的に目立つような行動は取らないタイプだから、旗持って応援とか出来るわけない。
「お、おう、任せとけ」
俺は親指を立てて言った。
そうこうしているうちに俺たちの家が見えてきた。
俺たちの家は隣同士だ。だから必然的に帰り道は最後まで一緒だ。
長かったぁ。
「それじゃ、また明日」
朱音は俺に手を振って笑顔を見せてくれた。
可愛い……。
「お、おう、また明日」
俺も手をあげる。
朱音と恋人になれたのか……。
嬉しいような悲しいような……。
俺は家の扉を開けた。
◆
私は帰宅した後、すぐさま階段を駆け上がった。
部屋に入るとベッドへダイブ。
そして枕を口元に寄せて叫んだ。
ふぅ、少しおちついた……わけではない!
私はすぐにスマホを取り出して友達に電話をかける。
唯一私がヒロ君のことを好きだと知っている親友の
『もしもーし、どうだったー?まあ、聞くまでもないと思うけど』
気軽そうに麻衣は聞いてきた。
「ま゛いいいいいいいいいいいいいいい」
私は号泣していた。
『え?な、なんて?どしたの?!」
説明し終えるまでに20分弱かかってしまった。
『なるほどねぇ、つまり……あんたがバカってことでしょ?』
「まあ、そうなるけど……。でも……、あれ絶対フラれそうだったし、ああするしか……」
そう、あれは絶対フラれてた。
フラれるよりかは偽でも付き合って他方がいいに違いない。
『いや、あんたがフラれるわけないでしょ?だってヒロヤくんだよ?絶対朱音のこと好きじゃん』
「そんなことないと思うけどなぁ」
『でも、これから頑張りなさいよ。そうでなきゃ、一生この関係のままだからね!』
「えっ!そんなの嫌だよ!どうすればいいの?麻衣ちゃん!」
そうして私たちはヒロ君と関係を近づけるための作戦会議を数時間続けた。
よし、明日からがんばるぞぉ
両思い俺たちが偽の恋人になりました! タキ @ktakta0035
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