第33話 病院にて

 翌日になって、近所にあった大きな病院の休憩所に冷治たちは集まっていた。

 昨夜、重傷の加我と長谷部の治療を行うために向かった病院で、二人も火傷の治療をしたのだ。家族には放課後デートで懐かしい小学校を見に行き、火事に巻き込まれたと伝えてある。

 校舎から出た後、ようやく駆けつけた影井が後始末のためにいろいろと電話をかけているのを見ていたが、具体的になにをしていたのかはよくわからない。

 とりあえず事態が収拾できるのかが気になって、帰ってからあまり眠れなかった。

 今日は経過観察という名目で病院に来ている。

 土曜日なので学校があったが、今日は休むことにした。

 冷治のほうが菅原涼よりも多少火傷がひどかったけれど、どちらにしても加我や長谷部の傷に比べれば大したことはない。

 特に近距離から炎を浴びた長谷部はかなり重傷で、今も眠っているはずだ。

 だから、ここにいるのは四人だけだった。

 加我のほうは脚がかなり痛々しい見た目になっているものの、とりあえず動くことはできるらしい。もっとも血をかなり失っているので、数日入院することになるという。

「とりあえず……隠蔽工作にはかなり難航しそうだということです。ただ、それは専門の仲間が担当しますので今は気にしないでください」

 影井は冷治と菅原涼に告げた。

「それから紫村さんについて、ステージ上から何者かが連れ去った痕跡があるそうです」

 何者か。

 決まっている、あの女性だ。

「……あの人は何者なんですか?」

「名前は陶野七緒。『クリスタルボックス』という能力の持ち主です」

 非常に硬い、不可視の箱を作り出す能力者。

 サイズや位置は自在に変更ができる。ただ、硬さや変更の自由度などについて、詳しくわかっているわけではないという。

 無敵ではないけれど、少なくとも銃弾くらいは弾き返せる。

 もっとも、防ぐのは双方向なので銃弾を防いでいる間は自分も手出しできない。効かないとわかっていて加我や長谷部が攻撃していたのはそのためだったようだ。

 長谷部が話した、かつて別の発火能力者の恋人だった女性だとすぐ理解できた。

「現在は『破壊者』と名乗る集団の一員になっています。……『破壊者』のことも含めて、いろいろ青山さんと菅原さんには伝えきれていない情報がありますね」

「聞いてもかまわないことなら、できれば聞かせてもらえるとありがたいです」

 菅原涼が即座に言った。

「私は、知らないことを知らないままでいるのは嫌です。でも、影井さんたちの都合が悪いなら無理にとは言いません」

「俺も知りたいです。紫村のことを解決するためにも」

 二人の顔を、影井と加我はしばらく見つめていた。

「あなた方におそらく伝えるべきことで、まだ伝えていないことは三つあります。加我さん、話して構いませんね?」

「構わないだろう。まだ時間もある」

 影井に確認されて、加我が頷いた。

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