第22話 影との出会い

 学校に紫村赤音が姿を表さないまま、その日の授業はすべて終わった。

 放課後、冷治は紫村を探そうと考えていた。

 考えていたのだけれど、困ったことに幼馴染みであるはずの彼女がよく行く場所を全く知らないということに気付いた。

 とりあえず学校の玄関までは菅原涼と一緒に降りてくる。

「今日は一人で帰れる? 途中の駅の周りで紫村を探してみるよ」

「当てはあるの?」

「ぜんぜん……とりあえず、適当に走り回ってみる」

 正直に言えば、自分たちを狙ってきたあの男が、紫村のことも狙うのではないかと冷治は考えていた。

 だから、早急に見つけなければと思ったのだ。

「……ついてくよ。どうせ私、帰っても用事とかないし。二人いれば、一人よりもなにかいいアイディアが浮かぶんじゃないかな」

 靴を履き替えながら、彼女は言った。

 肩に手を置いて、履き替えている間に彼女の体が浮かないようにする。

 彼女が終わってから、冷治も自分の靴を替えた。

 見覚えのない別の女子が近づいてくるのに気づいたので、二人は少し急いでその場からよけようとした。

「青山冷治くんと、菅原涼さん」

 黒い前髪で目元を隠した彼女は、いきなり二人に声をかけてきた。

 彼女のほうへ視線を向ける。

 なんとなく、妙に印象の薄い女性だと感じる。

 次の瞬間、冷治は少し離れた位置に立っていたはずのその女子が、いつの間にか自分たちの背後に立っていることに気付いた。

「よろしければお二人に少し付き合っていただきたいのですが、時間はありますか?」

 二人の肩に手を乗せて、彼女は告げる。

(……瞬間移動?)

 走り出すべきか。そんな考えを見抜いたのか、彼女は言葉を続ける。

「昨日長谷部も言ったと思いますが、私たちは本当に、あなたがたに危害を加える気はないのです。お願いですから、話を聞いてください」

 丁寧に頭を下げた彼女の姿に、冷治と菅原涼は顔を見合わせてしまった。

 少し考えてから目配せをすると、菅原涼は頷いた。

「……用事がありますけど、少しだけならいいですよ。ただ、その前に名前を教えてください。一方的に知られているのは、気分がよくないです」

「ありがとうございます。私は影井と言います」

 影井と名乗った女性に先導されて、二人は歩き出した。

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