第12話 放課後のメッセージ

 放課後、どこかに寄ることもなく、冷治と菅原涼は家の近くにある駅にたどり着いた。

 北と南に出口があるが、二人とも自宅は北側だ。しばらく歩いた後東西に分かれることになるが、途中までは同じ道になる。

 夕焼けの赤い光が射し込んでくる階段を、いつものように一緒に上がると、出口からすぐのところにあるスーパーの壁が目に入った。

 そこに、落書きがあった。

『空飛ぶ少女へ

 お前の正体を知っている』

 カラースプレーで書いたらしい大きな文字。

 思わず、冷治は周囲を見回した。菅原涼も同じだ。

 こちらを見ている男と、目があった。

 朝、ジャーナリストだと名乗ったあの男は、二人を見てニヤリと笑った。

 とっさに、男に背を向けて、二人は走り出そうとする。

 しかし、角を曲がろうとしたところで、二人は足を止められることになる。

 足元でポンと音がして、目の前に煙が舞い上がった。

「おいおい、いきなり逃げることねぇだろ」

 男の声が背後から聞こえる。

 朝の短い会話とトーンの変わらない声で、だからこそ男から早く離れなければならないと、冷治に強く感じさせた。

 菅原涼もたぶん同じだったのだろう。

 冷治の手が彼女に握られたと思ったときには、体が上昇していた。

 跳躍したとはとても言えない高さだ。もしこんな高さを飛べるならオリンピックで金メダルが取れる。

 後ろの男はともかくとして、他の通行人には見られているだろうか?

 気にした瞬間、風を切る音が聞こえた。

「きゃっ」

 菅原涼の体になにかがぶつかって弾けた。

 冷治の足が地面につく。その横に、菅原涼が着地する。

 背後から足音が聞こえてきた。

 隣にいる彼女の上半身が、赤く染まっている。

 なにをされたのか確かめたい気もしたけれど、今はここから離れなければならない。

「行くよ!」

 返事を待たずに、冷治はつないだままの手を引っ張って走り出した。

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