すれ違い

 七海とは今年もおなじクラス。やったね。そのことだけが私の高校生活の夢のために必要なんだもん。教師陣、さては、私と七海のクラスを離してしまったら私がいよいよ、ぐれてしまうと思ったな?


 七海は眼鏡だし、知的キャラだし、委員長キャラも兼ねてるし、じっさい勉強もできるし、クラスメイトたちからはめちゃくちゃ頼られている。だから私はクラスでは、七海に面倒を見られているポジションみたくなってるのだ。でもそれでいいよね? だって私なんかべつになにか特技があるわけでもないし、ちびっ子って以外はこれといった特徴もないし。



 そんな私がなんで七海と仲よくしてるかというと、まあそりゃ狙ったんですよ。



 だって七海ってば私の理想そのもの。こんな子と仲よくして、ふざけあえるくらいになれば、高校生活楽しいんだろうなあって……そう予感させてくれるのに充分な逸材だったのだ、新入生の段階からして、七海という人間は。




 チャイムとともに、休み時間になりました。はあ。授業というのは相変わらず退屈だ。みんなどうやってこの退屈をやり過ごしているのだろう。そういやこのごろそういう話もしなくなった。一年とか二年のときには、手紙回したり交換日記書いたりしてたのになー。……そういやいつのまに、ああいうことしなくなったんだろ。


 のろのろと教材を片づけ、七海の席に向かう。……あれ、ほかの女子たちがいるけど、七海になにか用なのだろうか。まあ七海ってば委員長なわけですからなあ。用事のあるひとも多いのだろう。うんうん、人気者なのはいいことだぞっ。私の、大親友なわけだし。


「七海ーっ、トイレ行こー」

「あ、桜、うん……」


 どうも歯切れが悪い。私は、首を傾げた。


「なんだよっ。私とじゃ行けないってのかー?」

「や、そういうわけじゃないけど……いまちょっとね、佐伯さえきさんたちと話してるんだ」


 佐伯さんたち……。うん、このひとたちだよね。私も七海も、今年はじめてクラスがいっしょになるけど、お上品で勉強ができるグループの代表って感じだ。私と目が合うと申しわけなさそうに微笑んだから、まあ悪い人間でもないのだろう。



「あっそー。わかったー。そんだったら七海なんか置いてくからー!」



 はしゃいだ、だけだった。……いつものように。七海がノッてこないから……なんだよっ、とスルーして、そのまま教室には背中を向けたけど。

 はしゃいだ、だけの、つもりだったのだ。

 七海の表情なんか……そのときちっとも、見ていなかったのだから。





 のちに、はっきりわかったんだけれど。

 その日から、七海は私の大親友ではなくなったのだ。

 七海自身は、なにもしなかったけど、七海がこう言ってるって、噂は聴いた。



 あんなばかなこと、べつに、なかよくしたくはなかった。



 七海と、ちゃんと話そうとしたけど、駄目だった。

 ……駄目だったんだ。

 七回試して、駄目だったから……私は、もういちど、殺すことに決めたんだ。





 あの子の、ことを。

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