memory:126 〜〜暁の出陣〜〜
蒼き地球衛星軌道上より――
無数の影が、巨大な対魔結界たった一つの欠損部である、太平洋上空へと降り立って行く。しかしそれらは、地球のあらゆる場所へ広がる事なく一点を目指して降下していた。そこには異形らが憎悪してやまない、生命の希望が集結した場所――
「アメノトリフネ、防衛システム起動。全対空兵装展開と同時に航空戦力を上げて。海自の
『問題ありません!』
『妹に同じく。』
『カカッ! なんや戦い方は専門外も甚だしいが、血が
『慎め、
「防衛線死守は任せます。ヤクサイカヅチ全機……出撃!」
その一点からただ流れ落ちる様に侵入する異形は、衛星画像で数百体を超える個体が群を成す。
それら衛星画像確認により厳戒態勢にある
『
「ああ、分かっている。ここは頼んだ……
『ええ……ご武運を。』
そんな鬼気迫る事態に、戦いの中で最後となる会話を交わすは
これより二人はそれぞれ、星々の海により分かたれた戦場に立つのだから。
『
『助かります、
そこで前もって、彼らの過酷極まる状況を緩和せんがために張られた防衛戦。魔界協力勢を代表する
そこまで読み切る鋭い先見性こそ、魔族種が戦闘に長けた存在である裏付けでもあった。
そして、ついに出撃の準備は整った。水平線より暁がまばゆく太平洋を照らす。その神々しき光景を汚す有象無象はすでに、行く手を阻む虚空の
「各ストラズィール、及び魔界勢旗艦ドレシュナイダー……アメノトリフネより出撃! この朝日を背負って、我らは地球と人類の未来を守り抜く! 最終防衛作戦名〈アメノムラクモ〉……暁の出陣だっっ!!!」
それでも蒼き地球で生まれ、磨かれた
分断された戦い。どちらの敗北も地球の未来潰える背水の陣。だからこそ彼らは蒼き大地と人類の明日のために征く。
共にある
†††
『現状そちらの古代技術解明精度では、地球の重力の枷は相当なもの……ゆえにこのドレシュナイダーによる重力相殺を用いアメノミハシラまで誘導する! 分かっておるな……そこで悠長に停止してミハシラのシステム起動を待つ猶予はないぞ!』
「ああ、理解している! すでにミハシラへのシステム起動を、遠隔にて行う方向で動いているよ! だがあちらの、衛星軌道の静止レベルまで速度を落とす必要もあるため、シャルーアの護衛を頼みたい!」
『言わずもがなじゃて! お主らの力は、可能な限り温存してかねばのぅ! シザ、ロズ……聞いた通りじゃ! 魔界勢の真価を、とくと見せてやる時じゃ!』
『『御意!!』』
重力さえ無きものとし、地球の大気圏を駆ける
本来地上からロケットの類を飛ばすよりも速く、しかし異形迎撃により制限を受けながらの時間を一気に駆け抜ける魔王討伐陣営。やがて高次元座標へ
「
「はい! 相対速度を既定値へ合わせます!」
「こちらも了解でやがります! アメノミハシラ・メイン・システムとのイスタール・クオンタム・リンク開始……繋がったでやがりますよ!」
「よし! なら
「出たとこ勝負感は、拭えないでありますね! けれど……了解、データ座標送信を開始するであります!」
故に前線での戦闘の有無に関わらず、本部総指揮官に当たる当主を中心に、メインパイロットである
そうした本部まるまるを運ぶ大翼は、高次元座標上でみるみる近付くアメノミハシラとの相対速度差異を最小へ。次元的に静止している様で、その実は高次元上でも地球の自転に合わせた一定速度による、衛星軌道上静止を実現している。そのため、ただ近付くのとは大きく異なる
「ストラズィール各機へ! クロノ・サーフィングに入る注意点を再度確認しておく! アメノミハシラ中心部を通る事でサーフィングに入るが、各機は必ず可能な限りの密集陣形を取るんだ!」
「現状のミハシラが有する霊量子エネルギー総量では、一度のサーフィング……それも限定された空間にいる物体しか跳躍できないと弾き出されている! そこで輪から外れてサーフィングをしくじれば、ここまで大挙したイレギュレーダの袋叩きにあうぞ!」
次いで飛ぶ覚醒の当主の言葉は、
押し寄せる異形の群れは、
そして――
陣営を感知し三次元物理空間上へと姿を顕現させ始めた
暁背負う討滅の志士達に、躊躇する時間など存在していないのだ。
「魔王討伐陣営全機…… アメノミハシラの中央、時空歪曲部へ突入! これより我らは、ニュクスD666へと跳躍する! クロノ・サーフィング……開始!!」
響く大号令が、討伐陣営全員へと届くか否か。三次元空間上へ完全な姿を現した
そこより太陽系は遥か最遠での、最後の戦いが始まる事となる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます