memory:119 光魔共同戦線再び
足取りもなんとか持ちそうなオレの耳へ、時を見計らった様にルミナーティルの一団訪問の連絡が届く。それも彼らを代表としたあの
通信で目にした彼女の覚悟秘めた瞳は、オレの心へ酷く罪悪感を植え付けて来たものだ。
「皆集まっているな。すまない……組織の代表たるオレがベットで昏睡するなど、これからの事もあると言うのになんたる不覚か。申し開きもない。」
「つか、なんで
「そうですよ。あのマジ限界突破なバフがなかったら、私達も危なかったんですからね。」
「でも、目を覚まして安心したし。」
「だな。」
「
「みんなもこう言ってます。だから
すでに耳にした魔軍訪問で、眉根が一層しかめられていた自分を
ともあれこれ以上彼ら彼女らへ心配をかける訳にも行かず、今度はこちらから切り出す方向でミーティングルームの扉を潜り正面大モニターへと歩を進めた。
「ではこれより、彼らルミナーティル・マギウス訪問を前に事前の情報すり合わせを行う。とは言え、すでにオレが昏睡状態の間に
覚悟が決まっている……と言うのは
そこまで言葉を続けて一呼吸置き、現在大気圏突入を待つルミナーティル・マギウス旗艦のドレシュナイダーより通信が入る。そこへ映し出されるのはあの
けれども子供達も気付くその双眸は、酷く悲哀に濡れていた。
『久しぶりじゃの。まあ
『お主等光の志士たる子供らはこれより、我が魔軍と〈対腐敗の魔王共同戦線〉を張る事となる。が……こちらは妾とシザにロズゥエルのみである故、違えるでないぞ?』
程なくその悲哀に濡れる彼女直々に、悲哀の要因が告げられる。それを聞き、彼女の背後で無念の中歯噛みするシザ君の姿で、彼女が言わんとする事を察してしまった。
「ルミナーティル・マギウスは確か、貴女と
『……男前のクセにそう言う所は辛辣極まるのぅ、お主は。じゃが、そちの言う通り。
聞き及ぶ事態で、静寂にさえも無念が混じり込んだ様な空気が支配する。彼女ら魔族は言うに及ばずこのアメノトリフネで、たった一夜であるも共に食事を囲んで語り合った同郷の志とも呼べる者。それが敵対せざるを得ないと言う悲劇の重さに、誰も声をあげる事もできないでいた。けれども前に進まなければならないオレ達――
選ぶ未来を取捨選択する様に、共同戦線概要説明へと移って行った。
†††
重苦しい共同戦線会議は引き続き、手を取り合う者達を巻き込み進められて行く。
さらにその作戦は言わずもがな、蒼き星の最終防衛ラインと遥か太陽系の何処にある影の惑星を跨ぐ戦い。それは、どちらかが形勢不利になろうと決して助力できない、否――影の星へと赴く子供達を主戦力とする前線の霊機隊は、敗北イコール宇宙の藻屑となる定めが待っている。
そしていずれの敗北も、人類滅亡が確定してしまう現実に他ならなかった。
「ちょっと皆が暗すぎて、話が前に進まねぇからシュリリンたんが変わりに続けるにぇ。そのベルゼヴュードとか言う魔王様を討伐するため、まずは影の惑星だとかに赴く必要があるんだけど――」
「なにせ到達目標は、間違いなく宇宙空間だにぇ。その鍵になるアメノミハシラについて、まずは話していくにぇ。ハルミン……例の画像を。」
「ハルミンかしこま〜〜。んじゃこれ画像。まずはこの地球側からねぇ〜〜。」
重い空気で一行に進まぬ会議を、そういう場にありがたい空気を読まぬ……敢えて読まない
「まず当面の目標は、影の惑星……固有名称 ニュクスD666とやらがある太陽系最遠宙域へ向かうのが重要だにぇ。ルミなんちゃらからのデータ提供で算出した所、恐らくは太陽系標準公転面から40度近くずれた超々楕円軌道の先。距離にして、軽く100天文単位彼方の地点……彗星の巣でもあるオールトの雲手前まで飛ぶ予定だにぇ。」
「正直ハルミンもさ〜〜、皆がこんな太陽系の果てみたいなトコに行くとか、ガチ想像できないんですけどぉ。けどそんな悠長な事も言ってられないしぃ。ってコトで、そのためのにアメノミハシラが持つ高次元跳躍の制限を開放してぇ、ちゃちゃっと理論上可能な
そして語られる、これまでの機関員の思考では全く追いつかない次元の説明を、シリアスな雰囲気に全くそぐわないギャップだらけな二人が
そこへ加わる
『そこな二人の令嬢が説明した通り。じゃが問題は、仮にそち等の霊機を単独で持ち込めたとしても、肝心なパイロットの子らの生命活動へ大きな支障がある故の、我らとの共同戦線と言う話じゃ。つまる所、そちらで有する光の超技術体系とこちらの有する闇の超技術体系の融合――』
『最低でも、その宙域で戦闘に赴くまでの間の日常生活ができる程度の、技術融合が必須となるワケじゃな。すでにその準備には取り掛かっておるが、今日現在の時刻から最低一週間の猶予は欲しいかのぅ。』
そうして話の本命が語られるや、ミーティングルームに会する一同は理解に至る。目標としては、魔王ら討伐のためにオールトの雲と呼ばれる宙域手前へ高次元跳躍で向かい、その中で戦闘中に生活ができる程度の準備のため、光と闇の両雄が所有する技術を結集させる。
ある意味戦いに於いて基本とも言える、戦の装備と兵糧の準備を古代超技術を以て成すと言う計画であった。
「これがあらかたの作戦概要となるが、
「地球で当たり前の生活を送る事で、君達はこの星にいても良い存在である事実を心へと刻んで欲しい。それは言うまでもなく、巨大な敵対存在を討伐した後にみなが必ず生きて帰還するためだ。分かるね?」
会議の最後を締め括るは
如何に人類最悪の厄災を穿とうとも、彼らが命を落としては何の意味もないとの宣言でもあった。
向かう先は、人類存亡を賭けた戦いである。しかし覚醒の当主の心は、そんな時でも子供達の未来を案じてやまなかった。彼の心を聞き届けた幼き少年少女も、それこそが自分達の信じる背中であると視線を集める。
程なくお開きとなる会議室へ、覚醒の当主とそのパートナーだけが残り解散となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます