memory:116 異形討滅、そして明かされる事実
それをあらゆる情報媒体で目の当たりにした、世界の人々は歓喜する。地球へ未曾有の危機を起こさんとする異形の巨人を、日の本の国家より選ばれた子供達と神代の機神が討ち滅ぼしたのだ。
それまで当たり前であった伝承の末路を兎も角としつつ、彼らは救われた今をただ喜びあう。が――
それはあくまで、もっとも恐るべき事態の序章でしかなかったのだ。
†††
崩れ落ちた異形に合わせ、
「あちらも、何とか切り抜けた様でなにより。全く……あなた方御家の難事の規模と来たら。けど、私もこれから支援に当たります。よろしく……かつてのご学友さん。」
「本当に助かりました、
「……って、にぇーさん(汗)。まさか海上自衛隊の艦隊指令とお友達とか……侮れにぇーなぁ。まあ、あれだけの数相手取るには、防衛戦闘機群じゃ割に合わなくなってた所。素直に感謝しかないにぇ。」
「学友……そうですね。
「そういうのを腐れ縁って言うんだにぇ。」
明かされる事実は、なんと海上自衛隊の宗家擁護派を率いた女性艦隊指令が、
そんな二人の再開を他所に、
「二人の再開喜ばしい所悪いけど、あとがつかえてるから単刀直入で進言するにぇ。あのバカらくほーが所有していた原潜……奴らの懐に潜入してた自衛官もまとめて、このアメノハバキリ戦力に加えたいにぇ。」
「敵さんの数がもはや尋常ではなく、執拗にこの施設ばかり狙われる以上、ストラズィール以外の現状戦力が完全に不足してんにぇ。のんたんも、それで構わないにぇ?」
「のん、たん……(汗)。
「ならば宗家擁護派へは、機関から正式に依頼を送らねば。シュリリンたんはそのまま、施設被害確認と修復作業開始を指示後ミーティングルームへ。」
「……
防衛戦は確かに辛くも勝利を得た形である。しかし戦いに参加した誰も、その勝利に浸る余韻など存在してはいなかった。すでに訪れるであろう恐るべき事態の予兆は、間違いなくその
そこより施設の大規模修繕と、自衛隊艦隊再編成に加えた対魔武装改修のための突貫工事が開始される事となる。一方その頃、作戦本懐とも言えるマッド・デーモン討伐を成した
戦い直後に訪れた、とある一悶着で肝を冷やす事となっていた。
†††
今までにない、恐るべき異形の巨人を討滅した子供達。しかし直後、その勝利の余韻すらも一瞬吹き飛ぶ事態で、みなが青ざめると言う場面が訪れていた。
『今回はマジでやばかったぜ……。けど
『そうですね。あんなロボットモノでも、スケールでかい系スーパー展開で私達が強くなれるとか……興奮冷めやらぬ、ですよ私的に。』
「ほんとすごかったね〜〜。やばい、あたしまだ手が震えてる。ねえ
子供達が戦いを終え、安堵の中もそれが終わりではない今を予想し、すぐに
『……あ、ああ……そうだ、な。沙織、君の……言うとおり――』
貫きの少女の視線に映るは、酷く消耗し、大量の脂汗に塗れた覚醒の当主の姿。すでに覚醒の証である、金色光と額の紋様は失われており、そこから糸の切れた人形の様に崩れ落ちたのだ。
同じくその状況に気付く
「当主
「そもそも高次元覚醒を得るために、守護宗家の歴代の武人は人の次元を凌駕する様な、過酷極まる鍛錬を積むのが習わし。しかし当主は、一般より宗家参入した事で通常の護身程度の技しか身に付けておらず、こうなる事は火を見るよりも明らかでしたゆえ。」
「彼もそれを自覚し、それでも戦場に出る事を
「その観点で言えば、戦う武力がなかろうと戦場最前線へ足を運び、知略の限りを尽くして味方を勝利へ導ける者は称賛に値する。つまり我らの大将は、自慢に足ると言えるでしょうね。」
そこには子供達だけではない、機関のみなが抱いて止まない覚醒の当主への畏敬の念が込められる。口にした本人も、それは重々承知で仕えているとの誇りを胸に抱いていた。
『けどよ、その大将がテメェの身体張り過ぎて倒れた日には、こっちも寝覚めが悪いんだが?』
「ふふ……それは当主が起きた時に、直接お伝え下さい。さあ、トリフネの方も片付いているとは思いますが……急いで帰還しましょう。特区の事後処理は、お国側で重い腰を上げた信頼どころの役人が対処してくれます。」
輸送機モニターへ映る、特区の混乱が宗家お抱え部隊と国家から派遣された人員の尽力で終息を見た状況。まずは機関の家族の下へと急かす社会派分家も、此度の混乱の本質にこそ脅威を懸念する。逆賊の蛮行など霞に消える、あの
一方――
蒼き大地で巻き起こる事象全てを見通す者達は、止めどないやるせなさに憤りを感じていた。
「この様な……この様な事態を招いたのは、この地球で愚かな争いを幾度も繰り返した人類のせいだ!」
「シザ、落ち着くんだ! それ以上は、兄者たる
「そんな事は分かっている! 分かって……いるんだ!」
地球は衛星軌道上にて、地上へ溢れ出た異形に呼応し増殖していた増援個体群討滅に当たった
魔の巨艦内艦橋部で、彼らを静かに見据えるは
「心に抱いた怒り……少しは吐き出せたかの?シザ。我ら魔族は、その負の感情を増大させたまま事に挑むは自殺行為。
ままならぬ現状を受け入れ、それでいて臣下となる若衆を
「さすれば我らは、早々にあのアメノトリフネへと舞い戻るのじゃ。これよりは正念場……あの地球の希望たる者達をかの地へ招く準備をなさねばならんからの。しばしの猶予はあろう。が――」
「
そして放たれた言葉には、魔の若衆らも決めざるを得なかった。彼らが家族として慕っていた者を穿つと言う覚悟――
魔王 ヴェルゼビュードを、復活する魔導外郭ごと完全討滅すると言う覚悟を。
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