memory:113 暁の国家の鳴動
六条の輝きと、膨大な悪意の本流が洋上で激突する。その影響は広大な海上広範囲へと渡り、さらにはあらゆる世界の情報網で捉えられる程に拡大した。そしてそれが、同時期に英国本土近海上で勃発していた異変と相まった事で、世界に最終大戦さながらの警戒さえも呼ぶ事となる。
そんな一部始終を目の当たりにする、日本国土の守りを司る守りの要らは思案していた。その時を境に、地球へ想像を絶する歴史の転換期が訪れるであろう事態を。
「……以上が、現在日本に起きた事態の現状となります。」
「ああ、了解した。だが相変わらず我らが国家の首席殿は、そんな国の危機さえも置き去りにする
「あのイレギュレーダに関する防衛に於いては、我が防衛省も全力を持って守護宗家を支持していく所存。その旨、速やかに自衛隊内 草薙炎羅擁護派への伝達を頼みたい。」
「心情、お察し致します。不詳この
統合幕僚長
「いつから国民を甚振る……か。国家政治の歴史からすれば、腐敗の起源は明白だが……ままならないものだな。防衛長官の座を追われたあの
腐敗した政権への今に嘆くも、国家防衛こそが先と気持ちを切り替える防衛長官は、手元にある資料をまとめて席を立つ。向かうは、対異形防衛構想に基づく国家特殊法案の緊急可決に向けた議会である。
「
初老であるが、双眸には若人の如き覚悟の眼光を宿す長官が国家の中枢へと足を向ける。それは子供達が、古の
力なき弱者を守る者達が、
国家側の支援体制構築へ尽力する者がいる傍ら、その意思を生み出した若者達の咆哮が吠え渡る。蒼き生命の星へと降り立った強大なる悪意の権化を前に、彼らは黄金の化身と化した霊装の巨人と共に天空を焼き焦がしていた。
そして次第に、訪れた異変への恐怖と絶望に沈んでいた世界全土へ、電子の海を介してそれが伝わる事となる。
命の深淵にして悪意の権化を相手取るは、日本国が生んだ義に溢れた若者達だと。さらにその戦いには、かの武士国家であったそこに息づく〈武士道〉と言われる魂の道が宿されていると。やがてその魂を感じ取った世界の人々は、同時期に英国を包んでいた戦い含めた現実を目の当たりにした。
世界の人類は今、霊長存在としての生命の価値選択を迫られていると言う現実を。
†††
黄金の光翼が洋上で舞い踊る。それを疎ましく振り払う悪意の権化も応戦し、一進一退が繰り広げられていた。
「当主
「すまない
『こちらアメノトリフネですの!
「……っ!? そうか……分かった! それにはこちらで心当たりがある……が、なによりまずトリフネの防衛状況はどうなっている!」
『はいですの! ただいま
「了解した! なんとかそれで持ち堪えてくれるか!」
しかしその合間を縫う様に、洋上へ浮かぶ討滅機関本丸もまた、大量の
「各員、当主
『了解! これより地上高速車両隊は速やかに、当主の行く道を確保します!』
その分家の言葉を受けた高速車両隊は、指示を取り付けるや猛然とスキール音と白煙上げて走り出す。阿鼻叫喚となった国民の避難と保護を国家の守護陣営へ任せて、再び無数の任務用の改造が施されたスポーツマシン達が、爆音の協奏曲を奏で散って行く。
彼らが担うは、信頼にたる草薙家当主が戦場へと赴くための道案内役である。
「行きます、当主
「重ねてすまないな、
「お戯れを! あなたは昔も今も変わらず、我らが信頼に足る当主です! では、RX‐8……その心に宿す
社会派分家の号令で散る高速車両隊。その爆音の協奏曲で幹線道路は次々とクリアされ、続く様に
迅速に動くならば戦闘ヘリの選択もある守護宗家。が、今相手取るは強大な力をばら撒く暴虐なる存在。ヘリなど木の葉の様に散らされる点を踏まえ、幾分マシとも言える輸送機での出陣を思考していた。
「オレの覚醒した力が生み出す共鳴は、この程度の距離など意に介さない様だ! だが、マッドデーモンを穿つためには、オレ自身が彼らのそばへいる必要がある――」
「覚醒した高次元からの意思より、そうであるとオレの思考へ伝達されている! ならば……!」
「ええ、了解です! あなたは今後彼らと共に、戦場へと踊り出なければならない! ならばシャルーアに総指揮システムを組み込む事も……! ですがまずは、眼前の脅威を叩く事としましょう!」
さらには、すでに高次元から伝達される意思による確信を口にし、暴虐なる悪意の権化のスキャンデータへ意識を集中させる当主。ともすれば、今後戦いが続くのであれば、彼も参戦も已む無しとの言葉を社会派分家へと宣言した。
社会派分家もそんな意思など想定していたかの返答を、首肯と共に送るやステアリングを華麗に捌き切る。クリアとなった幹線道路を、フルカウンタードリフトで駆け抜ける
一方海上では、空へ上がる当主を待ち望む様に六機の
「くそっ……こっちも武装が強化されてるはずなのに、だんだんマッド・デーモンの防御が固くなってきてやがる!」
『いえ……固くなるどころか、破壊に成功した箇所が再生し始めてませんか!? これって、ロボットもの的にヤバヤバな奴ですよ!』
『再生するとか、とんだバケモンじゃねぇか! ……つか、サイズもさらにデカくなってんぞ!
「
『分かってるよ! ならテメェは、俺が撃ち込んだ直後にヤツの弱点でも探し当てろや!』
「ちっ……乗ってやるよ、その案に!」
異形を相手取って来た子供達の連携は、確かに洗練さを増していたが、それを遥かに凌ぐ脅威は徐々に戦況をひっくり返して行く。
「
『了解! 行くよ闘真……挟み撃てーーーっっ!!』
『こちらは左からだ! 剛腕の一撃を喰らえっ!』
画して戦闘は激しさを増し、蒼き星の未来懸けた戦いは佳境へ。
程なく到着する覚醒の当主合流まで、余談許さぬ戦況は続いて行く。
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