memory:112 叢剣の子供達
六条の黄金が、悪鬼へ向けて光翼を羽撃かせて舞い上がる。眼前で未だ瘴気をばら撒く、巨大なる異形の存在を屠るため魂の咆哮と共に。
「民に被害が及ばない様、奴を海上まで押し出すのが先決だ!
『はい
『分かりました! ミョルニル、悪を穿つ剛腕を撃ち放て! ハンマー・ナックル・ブレイカーっ!!』
「
『私は航空狙撃ってワケですね! すでにぶっつけ試験は終えた様なもの……
『はい、
『ああ、分かったぜ
さらに、極めて激しい戦闘になる事を想定した安全確保のため、
その安全確保された空域へ、
そして――
「敵は未知数の戦力を持っている! だが、そこへ負の浸蝕が関わるならば、我ら三神守護宗家の独壇場だ! オレとて戦う力は宿さずとも、その悪鬼の弱みを突く程度は容易い……
『いいぜ、やってやろうじゃねぇか! 俺は
「ああ、もちろんだとも! 行くぞ……我が教え子たる、叢剣の子供達!!」
対魔討滅の志士としてあの
彼らこそが、覚醒の当主の力。彼が持つあらゆる理知に経験を無限の武力とする、蒼き地球が生んだ最後の希望。その希望に押し出された巨大なる異形が、咆哮と共に大洋上空で態勢を立て直した。もはや愚家の意識など飲まれ消滅し、ただの滅び呼ぶ悪業となったそれと相打つは選ばれし子供達。
そこより、彼ら討滅の志士が舞う戦いの第二ラウンドが開始された。
†††
身体の隅々と言わず、そこへ宿る全てのチャクラが開かれたも同然のオレの体躯は、すでに第六感を超える光景を思考へ映し出す。それはオレにとって義理の弟であり、この地球で生まれながらに覚醒していたと自称する界吏から聞いていた事象に合致するモノ。
それを自覚した時、オレは並ぶはずがないと思っていた、守護宗家の誇る現代最強の武士と肩を並べたんだ。
「
「誰にも見えぬ深淵の正体を知るあいつは、幼い頃から宗家最強の志士として目覚め、けれどあまりの宿業の重さから現実逃避していた! だが、今は
オレと共に歩む事を選んだ者なら、全てを理解してくれるだろう。だが現実はそんなに甘くない。オレが草薙家を始めとした守護宗家全体を統括するためには、少なくとも義弟と肩を並べなければ示しなんてつかない。それほどまでに、現代は荒み、結果この様な悪鬼を生み出す惨状を導いてしまっている。
ここで逃げるなどと言う選択肢は皆無なんだ。
「
洋上までマッド・デーモンを押し出した子供達が、討滅の布陣を構築する中、思考へ宿すあらゆる情報を元に戦略を組み上げる。驚く事にオレは今、その戦況が遠く離れた本土から確認できる。それは視界情報ではない、霊的に高次元へと至った事で可能になった、霊量子レベルの知覚領域が多分に影響するのは明白だった。
そしてそれは、脳髄へ今まで見た事もない世界を映し出す事となる。
「分かる……分かるぞ!
「あいつがいつも、多くの宗家の者へ訴えるも届かなかった、深淵の正体! あらゆる生命の
そのあいつが、よくオレに向けて語ってくれていた真実。あいつの言葉を無下にしてはならないと、必死でそれを理解しようとしていた過去。オレは今、それを伝えようとしてくれていた、現代最強の武人に感謝しか浮かばなかった。
「
「ならば行こう、我が義弟! オレ達こそが、宗家史上最後と言われた武人の意思を継ぐ者だ! この世界へ安寧を齎すために、魂へ宿した武士道を以って前へと進むぞっ!!」
オレが、正式にアメノハバキリを立ち上げてから少しの時が経つ頃。それら情報を定時報告として送るため、観測者であるアリスを保護する英国は
幸いにも、アリスとそれを保護していた騎士会最高顧問である、ウォガート・アーサー・ヴェルン・シェイド卿は無事であり、ほどなくアリスはその身を、英国特殊防衛組織であるマスターテリオンへ寄せた事実を聞き及ぶに至る。
そのマスターテリオンは、オレが与えられたアメノトリフネに相当する存在。戦力の中心へ、守護宗家の技術さえ関わるとされる古代機動兵装を頂く組織だ。人類最強の機動兵装……竜星機 オルディウスと称されるそれに搭乗する者こそ、オレの義弟である界吏だと聞いていた。
まさに今、この世界は巨大なる悪意を前に滅亡の危機を迎えている。それもその脅威を二つの地点で同時に相手取るなど、もはや正気の沙汰ではない。ならばオレは、覚悟せねばならない。
名実共にこの戦いの敗北が、たちまち人類滅亡に直結すると言う現実を。
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