memory:96 古の技術を手にした責務
重い空気のまま、
当然俺は何も知らないガキで、対する相手は守護宗家と言う国家でも巨大すぎる伝説級の名家だ。そこへ口出しできる様な器じゃないのは分かってる。けど――
兄貴以外で、初めて俺を対等の人として見てくれた大人が、良いように罵倒されるのは我慢ならなかったんだ。
「――と言う訳で、今後の対応としてアメノトリフネ内にあるロスト・エイジ・テクノロジーシステムでも、未だ厳重な制御下にある部分開放を以って――」
「あのっ! ちょっといいすか、
「ああ、構わないよ
らしくなかった。少し昔なら、誰からも蔑まれる腫れ物扱いで、自分から誰かのために声を上げたりする事なんてないと思ってた。けれど気が付けば、
いつしか俺は兄貴や
「ちょっと議題から離れるっすけど。さっき、
心に灯った誰かのための怒りの炎は、自身を奮い立たせる様に声を紡がせた。それまでは良かったんだ。俺が上げた声に賛同する、すでに家族なパイロットの同世代達。少し疑念を向ける
しかしその俺の心が直後、凍りつく殺気に貫かれる事になる。ゾクリと悪寒を覚えた俺は、そこから次の言葉を捻り出すのにも苦戦したんだ。
「君らがこの機関に救われ、
俺が身を
静かに発した言葉へ返すだけでも両足が震え出し、何度もイレギュレーダを相手取り築いた自信さえも粉々に砕けそうだった。それでも――
「……は、
「大切な人を奪われた彼が行って来たのは、それ以上に沢山の人を救うための道作りだ。そんなの誰にでもできるものじゃない。そんな人に救われた俺達だからこそ、少しぐらい宗家内のやり取りへ、口出ししても許されるんじゃないのかな?」
ミーティングルームを静寂が包む。対して俺の心は、感じた事もないぐらい熱く煮えたぎってる。思えば誰かへ、胸に抱いた自分自信の想いをこんなにも激しくぶつけた事なんてない。
「悪いけど……これ以上
熱い心が、覚悟を確固たるものへと変貌させて行く。相手が相手だ、口先だけでは通用するはずなんてない。そもそもその覚悟で、ストラズィールという超常の機体パイロットをやってるんだ。
と、気が付けば俺を皮切りにした熱い援護射撃が、次々静寂を打ち破っていったんだ。
†††
「テメェ
己を救った存在が侮辱される。それが我慢ならない
「ここは族さんの言う通りですね。守護宗家の御家事情は確かに範疇ではありません……が、
「そうです! あたしなんか
「ボクは自分を心配してくれた同世代の子を、危うく殺しかけた……。それが助かったからと言って、背負った罪から逃れられる訳じゃない。けれど
熱き少年の啖呵を皮切りに、次々響く言葉は
「おにーちゃんにおねーちゃん達の意見へ賛成です。ゆーちゃんはまだここに来て日も浅いけど、もう
見定める少年に続く、
「……この機関に属する子供達の意見は理解した。だがそれだけだ。だからと言って、宗家が背負う重責や定めが変わるものではない。それは当主
「近年世代の若年層にさえ絶望を禁じえないこの社会……そんな悪評を粉々に打ち砕くだけの真価をな。」
発された炎羅派たる叫びさえ、軽々いなす勾玉の当主。子供達も理解している。相手は長き時代の表に裏で、国家を守り続けた伝説級の巨大組織にて責を担う者。何よりも、過ぎたる力を振るう意味を知り尽くした猛者なのだ。
返された言葉に反論できぬ威圧を乗せられた子供達。それを見守った当事者が口を開く。やり取りはここまでとの含みを持たせて。
「互いに思う所はあるだろう。けれど今、それをぶつけ合う時ではない事も理解しているね? その件は一旦保留とし、今後の対応に於ける各員への指示に移って行こうと思うんだが……
「私の担当は、ここで話して終わりなモノばかりではない。概要だけならば君でも……いや、君が語る方が良い流れになるだろう。私はこの場を失礼して担当の対策に移る。」
双方の胸中を察する
そうして今後への対応が憂う当主指導の元行われる中、通路を足早に進む勾玉の当主を聡明な令嬢が呼び止めた。
「
今しがた飛び出たやり取りは、守護宗家間の対応としては無礼千万。しかし、機関の一員となった子供達の心情を何より理解するのが
「私の役目は知っているだろう? 宗家のあれこれが起きれば即出向き、汚れ役を買って出て場を一丸とする。そこへの配慮は無用……それが守護宗家は
そこまで口にすると、改めて振り返り言葉を呈す。双眸は未だ鋭き歴戦の猛者……であるが、口元は僅かに上がり草薙宗家への惜しみない称賛を口にした。
「これこそが新世代の草薙が得た力、と言う訳か。
贈られた言葉は、子供達こそが憂う当主の草薙の剣であると言う
染みたこの上なき賛美は、過去の悲劇さえも優しく包み――
非礼への謝罪と賛美への謝意を礼にて返す令嬢の、
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