memory:95 集結、三神守護宗家
ある日のナルナル推しCVライバー問答から後、その推しの中の人が秒で身バレしてしまったのを皮切りに、新顔含めた守護宗家面々が次々と来訪する事となったのです。まあ私は兎も角としても、ナルナルは推しVさん以外の方が現れるや、
「あの……
「そこぅ! 素敵可愛いシュリリンたんと呼べと言ってるだろーがよぅ! ナルナルはまあ、リコの……ゴホン! シュリリンたんと似たようなものだから、そこは大目にみるにぇ。」
『そうですよ、サオリーナ! この桃衣リコ様であり、素敵可愛いシュリリンたん様がこう仰ってるんだから、私の御殿はここゲイヴォルグのコックピットです!』
「でゃまれ! そっちは桃衣リコ呼びをやめるにぇ! まだその事実を知らにぇー機関員もいるんだにぇ! 身バレご法度を忘れるんじゃにぇーよ!」
『はっ! 申し訳ありません、素敵可愛いシュリリンたん様!』
「変わり身……(汗)。つか、まだ新顔の方々は到着してないんだよ? もうナルナルに、どこから突っ込んでいいのか分からないっぽい……。」
そして引き籠もりからのこの対応。変な方向に守護宗家へ
その日彼女……
すでに爆音撒いて着陸する輸送ヘリから、見慣れない方々が降りて来るのを視界に止めた所。一部見知る方も混じった一行の出迎えとなりました。
「ようこそ、我がアメノトリフネへ。機関側へ紹介の前に、
「ある有事対応のため、アメノトリフネそのものの備え強化に尽力してくれる、宗家の私設部隊取りまとめである現
手早く降り立つ方々の紹介を熟す
「油断したですの……。ママはこういった時、電撃凸する曲者だったですの。」
「ふむ? あれが噂の、お二人の母君であると? しかしそれにしては、何か幼なすぎる様な気がするであります。」
「マ……ママ。来るなら来ると――」
「いやっほー! ウルスラにアオイ、元気してるぅー!? てか……あんた達なんて顔してんの。うけるぅ〜〜!」
「……守護宗家ってのは、こんなイロモノしゅうだ――」
「しっ!だよ、おにーちゃん! それは流石に失礼だから!」
「いやぁ……流石に今回は
「うん……右に同じとしておくよ、ボクも。」
「それって、あたしも乗らなきゃいけない方向っぽい??」
「これは手厳しいね(汗)。事実である以上異論も挟めない訳だが。皆も、彼らがしばらく施設備えのため駐留する事になるから、そのつもりで接してくれると助かる。」
確かに
そして私はというと、そんな一団の中でいるのが当たり前になりすぎ、家族の一語一句で幸せを噛み締めていました。私を見てくれる大切な仲間、家族に友達――
訪れる刺激的な日常を超えるたび、それは固く強く心へと刻まれていったのです。
†††
画して、
が、その中にあって
貫きの少女も、自分の憧れの当主が睨め付けられる事態であったからこそ、真っ先にその点へ気付いていたのだが。
そして一団を受け入れた憂う当主は、中央塔のミーティングルームへと足を運ぶ。その道すがら、当主の背後へ追従していた鋭利な視線の主が、子供達に聞こえるかどうかの小さな声で苦言を呈して来た。
「我らを呼び出さねばならぬ事態……かつての
「……その点については申し開きもないよ、
「いいだろう、肝に命じて置く。だが、こちらの言葉もその脳裏に
物腰は機関のメンツからすれば異質であるが、むしろ一般的に見れば彼の方が普通であると言えるそれ。肩口まで伸びる頭髪には日本人特有の艷やかな黒が光り、長めの前髪奥では切れ長で鋭い眼光が憂う当主の行い全てを見定める。そこから醸し出される厳格さへ加えた他を寄せ付けぬ気配は、まさに本来の守護宗家当主のあるべき姿。
憂う当主の評価基準へ草薙先代を持ち出した上に、現代最後の
子供達には聞こえぬほどのやり取り。が、端々の言葉から唯一朧げながらにも内容を察する少年がいた。言わずと知れた
耳を突いた言葉とそこから導かれた内容で、少年の視線が即座に厳格な客人を睨め付ける。それを気付かぬふりで敢えて受ける
協力関係であるはずの機関の子供達と、守護宗家人員との間に不穏な空気が立ち込める。そして空気はそのまま、ミーティングルームへと持ち越される事となった。
ミーティングルームでは、すでに機関へ訪れている
「まずは、ここに参集してくれた我が守護宗家が誇る各機関員皆へ感謝を贈りたい。そして新たに有事対応として尽力してくれている子供達……ストラズィールパイロットの彼ら彼女らには、頭も上がらない所――」
「しかしここに来て、上ばかりに気を取られている場合ではなくなってしまった故の参集と心得てほしい。それは他でもない、草薙率いる守護宗家歴史上の汚点とも言える存在の暗躍が要因だ。」
揃う一同を前に、憂う当主が重い口を開く。自身とパートナーである
「かつて八年前……草薙家が対応する事となった宇宙からの来訪者の件。その当時の混乱に乗じ我が
「恐らくその標的はオレ……と言うよりは、草薙家の現体制そのものを瓦解させるための動きと推察している。」
飛び出る言葉で、場の空気が否応無しに重く一同を押し潰して行く。パイロットを担う子供達でさえも、いつもの冗談が刈り取られて沈黙を貫く他ない状態となっていた。
場の状況を察し、押し黙る機関員一同を尻目に敢えて口を開いたのは勾玉の当主。それこそ内輪の悪役を買って出る様な攻撃的口調で、憂う当主へ議題を進める意味も含め苦言を呈した。
「そこまで把握しているなら、さっさとこちらの対応を進めるんだな当主
「逆を言えば、法の裁きさえ届かぬ暗部では極悪なる不逞をのさばらせる温床となっている。それを放置した結果がこの惨状ならば、かつて悲劇を突き付けられた草薙の当主であるお前こそが、まず奴らへ誅伐を下すのが筋ではないか。」
同じ御家を統制する立場とも思えぬ、苛烈にして辛辣極まる口撃は、宗家に属する者は兎も角、子供達にとっては極めて不快に刻まれた。憂う当主も、先に注したそばから飛び出る言葉には嘆息も辞さなかった。が――
それは勾玉の当主が子供達へ向けた、自分のみを敵対者として認識させる猿芝居でもあったのだ。
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