memory:95 集結、三神守護宗家

 ある日のナルナル推しCVライバー問答から後、その、新顔含めた守護宗家面々が次々と来訪する事となったのです。まあ私は兎も角としても、ナルナルは推しVさん以外の方が現れるや、くだんの引き籠もりが再発してしまったのですが。


「あの……朱吏々しゅりりさんすみません。うちのナルナルが――」


「そこぅ! 素敵可愛いシュリリンたんと呼べと言ってるだろーがよぅ! ナルナルはまあ、リコの……ゴホン! シュリリンたんと似たようなものだから、そこは大目にみるにぇ。」


『そうですよ、サオリーナ! この桃衣リコ様であり、素敵可愛いシュリリンたんがこう仰ってるんだから、私の御殿はここゲイヴォルグのコックピットです!』


「でゃまれ! そっちは桃衣リコ呼びをやめるにぇ! まだその事実を知らにぇー機関員もいるんだにぇ! 身バレご法度を忘れるんじゃにぇーよ!」


『はっ! 申し訳ありません、素敵可愛いシュリリンたん様!』


「変わり身……(汗)。つか、まだ新顔の方々は到着してないんだよ? もうナルナルに、どこから突っ込んでいいのか分からないっぽい……。」


 そして引き籠もりからのこの対応。変な方向に守護宗家へへりくだるナルナルには、流石に言葉も無い訳で。


 その日彼女……朱吏々しゅりりさん含めた守護宗家の、後々に於ける重要対策とかなんとかで訪れた方々との面会。それを出迎えるため、正面カタパルトのヘリポートへ向かう時の事でした。


 すでに爆音撒いて着陸する輸送ヘリから、見慣れない方々が降りて来るのを視界に止めた所。一部見知る方も混じった一行の出迎えとなりました。


「ようこそ、我がアメノトリフネへ。機関側へ紹介の前に、八咫やた家はご当主の八咫 慎志やた しんし殿が今現在、、シュリリンがその八咫やた家代理分家として先んじて訪れている。そこへ加えて――」

「ある有事対応のため、アメノトリフネそのものの備え強化に尽力してくれる、宗家の私設部隊取りまとめである現八尺瓊やさかに家当主 八尺瓊 伯豹やさかに はくひょう殿。、ハルミ・浜路はまじ・オプチャリスカ嬢。並びに各分家との連絡を密にするため、ウチのSPである宰廉ざいれんにもこちらへ足を運んでもらった。」


 手早く降り立つ方々の紹介を熟す炎羅えんらさん。いつ見てもこう、私を救ってくれた時の光景が頭を過ぎり、まともに直視できないほどの気恥ずかしさと憧れが脳内を支配してしまう。と、それを差し置いても、紹介の中にあった名が引っかかった私は目を向けました。


「油断したですの……。ママはこういった時、だったですの。」


「ふむ? あれが噂の、お二人の母君であると? しかしそれにしては、何か幼なすぎる様な気がするであります。」


「マ……ママ。来るなら来ると――」


「いやっほー! ウルスラにアオイ、元気してるぅー!? てか……あんた達なんて顔してんの。うけるぅ〜〜!」


「……守護宗家ってのは、こんなイロモノしゅうだ――」


「しっ!だよ、おにーちゃん! それは流石に失礼だから!」


「いやぁ……流石に今回は大輝だいきに同意だわ、雪花ゆっかちゃん。」


「うん……右に同じとしておくよ、ボクも。」


「それって、あたしも乗らなきゃいけない方向っぽい??」


「これは手厳しいね(汗)。事実である以上異論も挟めない訳だが。皆も、彼らがしばらく施設備えのため駐留する事になるから、そのつもりで接してくれると助かる。」


 確かに大輝だいき君が、イロモノ集団な所は言い得て妙なのですが、その点へ嫌な汗を流しつつも纏める炎羅えんらさんを鋭く見やる方。たった今、伯豹はくひょうと紹介された男性だけは、そこで異質なまでの雰囲気を醸し出していたのを覚えてます。


 そして私はというと、そんな一団の中でいるのが当たり前になりすぎ、家族の一語一句で幸せを噛み締めていました。私を見てくれる大切な仲間、家族に友達――



 訪れる刺激的な日常を超えるたび、それは固く強く心へと刻まれていったのです。



 †††



 画して、巨鳥施設アメノトリフネへ三神守護宗家が誇る英傑が揃い踏みとなった。しかしその顔ぶれは、修羅の剣士大輝が口を滑らせた点でも分かるほどに、の気配は拭えない所。


 が、その中にあって貫きの少女沙織が直感で察した異質な存在、八尺瓊やさかに家当主の八尺瓊 伯豹やさかに はくひょうは文字通りの人物である。ヘリポートを降り立った時点で、巨大な施設を隈なく見定め、その流れで憂う当主炎羅を射抜く様に睨め付けていた。


 貫きの少女も、自分の憧れの当主が睨め付けられる事態であったからこそ、真っ先にその点へ気付いていたのだが。


 そして一団を受け入れた憂う当主は、中央塔のミーティングルームへと足を運ぶ。その道すがら、当主の背後へ追従していた鋭利な視線の主が、子供達に聞こえるかどうかの小さな声で苦言を呈して来た。


「我らを呼び出さねばならぬ事態……かつての叢剣そうけん様であれば、この様な状況まで縺れ込ませる事もない。少しばかり、足元のへの配慮が欠けているのではないか?当主炎羅えんら。」


「……その点については申し開きもないよ、伯豹はくひょう殿。けれどその厳しい諫言かんげんも、今の子供達の前では抑えてくれると助かる。何分、皆まだ社会との折り合いが不安定で多感な頃だ。そこで協力者である君達と、彼らとの関係を崩したくはない。」


「いいだろう、肝に命じて置く。だが、こちらの言葉もその脳裏にしかと留めておけよ?」


 物腰は機関のメンツからすれば異質であるが、むしろ一般的に見れば彼の方が普通であると言えるそれ。肩口まで伸びる頭髪には日本人特有の艷やかな黒が光り、長めの前髪奥では切れ長で鋭い眼光が憂う当主の行い全てを見定める。そこから醸し出される厳格さへ加えた他を寄せ付けぬ気配は、まさに本来の守護宗家当主のあるべき姿。


 、現代最後の武士もののふを称賛する所からしても、宗家派閥に於ける生粋の新世代草薙擁護派。ゆえの重き言葉が、憂う当主へ痛く伸し掛かっていた。


 子供達には聞こえぬほどのやり取り。が、端々の言葉から唯一朧げながらにも内容を察する少年がいた。言わずと知れた見定める少年奨炎である。彼からすれば、漏れ聞こえた言葉から交わされたやり取り全容が分からずとも、そこから想定される内容は容易に判別できた。


 耳を突いた言葉とそこから導かれた内容で、少年の視線が即座に厳格な客人を睨め付ける。それを気付かぬふりで敢えて受ける勾玉の当主伯豹は、動じる事もなく歩を進めた。


 協力関係であるはずの機関の子供達と、守護宗家人員との間に不穏な空気が立ち込める。そして空気はそのまま、ミーティングルームへと持ち越される事となった。


 ミーティングルームでは、すでに機関へ訪れているピンクハッカー朱吏々含めた残る機関員の大人メンツが先んじて入室しており、集合した主要メンバーを中心に今後の機関運用についての協議が開かれる事となる。


「まずは、ここに参集してくれた我が守護宗家が誇る各機関員皆へ感謝を贈りたい。そして新たに有事対応として尽力してくれている子供達……ストラズィールパイロットの彼ら彼女らには、頭も上がらない所――」

「しかしここに来て、気を取られている場合ではなくなってしまった故の参集と心得てほしい。それは他でもない、。」


 揃う一同を前に、憂う当主が重い口を開く。自身とパートナーである聡明な令嬢麻流が味わった、悲劇の痛みと憎しみを堪える様な面持ちで。


「かつて八年前……草薙家が対応する事となった宇宙からの来訪者の件。その当時の混乱に乗じ我が義理父……守護宗家史上最強とうたわれた武人もののふである、草薙 叢剣くさなぎ そうけん暗殺を企てた天月天月家が、今また次代を担ぎ出して欲望の毒牙を剥き出しにした。」

「恐らく……と言うよりは、瓦解させるための動きと推察している。」


 飛び出る言葉で、場の空気が否応無しに重く一同を押し潰して行く。パイロットを担う子供達でさえも、いつもの冗談が刈り取られて沈黙を貫く他ない状態となっていた。


 場の状況を察し、押し黙る機関員一同を尻目に敢えて口を開いたのは勾玉の当主。それこそ調、憂う当主へ議題を進める意味も含め苦言を呈した。


「そこまで把握しているなら、さっさとこちらの対応を進めるんだな当主 炎羅えんら。奴らとてただの成り上がり組織ではない……元宗家に属しただけの財力に武力、そして組織力を持つ一大勢力だ。この国の良い所は、それなりに進んだ法規制で悪辣が自由に動けない所だが――」

「逆を言えば、。それを放置した結果がこの惨状ならば、かつて悲劇を突き付けられた草薙の当主であるお前こそが、まず奴らへ誅伐を下すのが筋ではないか。」


 同じ御家を統制する立場とも思えぬ、苛烈にして辛辣極まる口撃は、宗家に属する者は兎も角、子供達にとっては極めて不快に刻まれた。憂う当主も、先に注したそばから飛び出る言葉には嘆息も辞さなかった。が――



 それは勾玉の当主が子供達へ向けた、

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