memory:94 Vの人、それは推し推しピンクハッカー
魔界勢との交友会と言うシチュエーションは、まさにそのタイミングがベストであったと言える戦況が続いて行く。その日から断続的に戦力展開する
加えて、巡洋艦サイズの
「敵のアール・ヴェクセル艦隊を足止め頼む、ナルナル、
『お安い御用……と、言いたい所ですけどね! このフォートレス上からの射撃ってのは、案外大変なんですよ!』
『大丈夫だよ、
『よしがんばります!まかせて下さい!』
「ちょろいかよ!?」
しかし
「現在、フラガラッハを中心とした航空遊撃隊が、増援のアーク・ヴェクセルの支援を分断しています!」
「よし! では
『分かりました! サオリーナ!』
『ちょお……!? なんで
『任せろ! ちゃんと止め様にムラマサで待機中……いつでもやれんぜ!』
航空支援に特化した
そして力を増強し始めた敵中枢を、
異形の侵攻はたしかに脅威であるが、それと対峙する子供達の練度は確実に、地球防衛の
そうして過酷さを増す地球防衛戦線。その間に訪れるささやかな日常は、危機感を断つ事ができないとは言え、子供達の親交を深めるには極めて重要なファクターとなっていた。取り分けその成長著しいのが、無意識のウチに引き籠もりから脱し初めていた
あえてそこへ突っ込まない事で、彼女の成長を後押しする友人達の姿がそこにあった。
「んあ? 珍しいなナルナル。そんなネットで、VTuberとか見るなんて。」
「失敬な……私だって、俗世の情報ぐらいはちゃんと把握してますよ。それにこれはVの前にCを付けて
「知らんがな……(汗)。ま、それは兎も角……これってあの〈ユミークル姫〉とか言うライバーだよな?」
「うわぁ……ナルナルの新しい一面が、まさかのライバーリスナーとか。てっきりゲーム廃人まっしぐらな人かと――」
「そこも失礼ですね! そもそもCVライバーの方々は、ゲーム配信に加え歌ってみたなどのアイドル活動もやってる、崇高にして誉れ高きネット界に於ける革命的存在なんですよ!? あ、因みに多くのライバーはあらゆる世界線の生命や人外種からなってますので、そこは勘違いしない様に! 設定とか言った人からBANします!」
「だから知らんがな……(汗)。」
「おーいたいた。何してんだよオメェら。」
小スペースではあるも
外部への情報漏洩などを鑑みた、一種の機関員日常用プライベート・ネットルームである。その中の、一つのPC前で騒ぐ機関の古株な子供達――
そこへ引かれるように、残りの子供達がオペレート陣も含めてぞろぞろ足を運んでいた。
†††
私の世界はある時期から、自宅の切り取られた空間だけになっていました。
そんな日常を、おじいちゃんが準備してくれたゲーム機で過ごす毎日。けど、その中で難攻不落なステージに遭遇するや、よくネット検索情報を集めネタバレ上等でクリアを目指すタイプの人でした。
「あ、これゆーちゃんも見た事あります。確か、ロゼッタ・プロダクションって言うライバー事務所のCVライバーさんですよね。でも――」
「お? ゆーちゃんはなかなか、見込みがありそうですね。なら知ってますか? このCVライバーさんは、突如として長期休暇へ入った後、音沙汰のないライバーさんなんですよ。」
プライベートPC施設で、久しぶりの流れでライバー検索を行っていた時。なぜかパイロット組が一同に介したそこで、飛び出たゆーちゃんの発言で前のめりになってしまう私。まあ当然、他のメンツは取り敢えず引く感じで遠目に見ていたのですが。
「おい
「変なとは何ですか。族さんは黙ってらっしゃい。好き好きは個人の自由ですが、CVライバーさんへの侮辱は許しませんよ?」
「お、おう……(汗)。」
「やめとけ
何か背後で、失礼千万な言葉が飛び交ってますが無視するとし、ここは同好の士であろうゆーちゃんへ話を振る事としました。
そんな感じで、ユミークル姫のライブ動画なんかを検索し、ちょうど良いともう一つの推しへと動画を進めて行きます。
「確かにユミークル姫は音沙汰がない状況なのですが、プロダクション運営さんはその帰還を信じ、それを継ぐ後継のライバーを募集したそうで。そして現在、少ないながら名を上げている超注目株のライバーさんが彼女――」
「二期生筆頭となる、電脳ワールドから訪れたサイバーピンクハッカーこと、〈
「ちょ……そのリコリスとかって名前は、いろいろとまずいんじゃね?」
「大丈夫ですよ、
「いやそれ、まずいのは変わんねぇだろ。てか、つーことは――」
いろいろとツッコミが面倒くさいパシリさんですが、そこから連想する私との共通点に気付いたのは察しました。
飛行場とはただの飛行場ではなく、私もキャラデザが大好きな戦闘艦を萌え化したソーシャルゲームの
そこで訪れたものの着いてこれず、だんまりだった姫リーナが思い出した様に口を開きます。
「なるほど。ナルナルがやけにロボットモノ以外で、ミリタリーに通じている理由がはっきりしたであります。」
「いや、つかそれって誰かからの借り物知識でやがりませんか? 第一、そんなヴァーチャルで会話する不鮮明な人物の情報で――」
と、せっかく姫リーナが興味を持った感じだったのに、隣り合わせた麗しくもお口の悪いウルスラさんが突っかかって来たので――
彼女へ特大の、対ウルスラ狙撃ライフルの弾丸をお見舞いしてやりましょうか。
「いいんですか?ウルスラさん。この方はゲーム実況もやってますが、あのウルスラさんが小さい頃お世話になった、仮面怪盗団の据え置きゲーム実況も度々配信して――」
「ば……余計な事を蒸し返すなでやがります! だだ、誰があんな子供だましのゲームなんて……ゲームなんて……。」
「うん、ウルスラさんの弱点へクリーンヒット。流石はナルナル、見事な
「……もう
などと、オチがついた所で笑い合う私達。すでにこのアメノトリフネでの日常は、掛け替えのない宝物のようで。気が付けば、引き籠もらないとロクに会話もできなかった私がその外、大きく開けた世界で過ごすのが当たり前になり始めていたのです。
私達の、きっとささやかだけど大切な一歩。それを画面越しで見ている様な感じさえ受ける、桃色のヴァーチャルアイドル。けれど――
そんな日常が、とんでもない方向で打ち破られる事となったのです。
「――しかにぃ。けど、ここでの身バレぐらいなら、炎ちもなんとかごまかせるんじゃねぇの?」
「まあそれは、何とかなるとしてもだ。彼女達でも、完璧にそれを口外しないとは言い切れないからな。君の方で配慮してくれると助かる。」
「致し方なしだにぇ。ウチも分家としての立場も、ライバーとしての立場もあるにぇ。配慮に関しては――」
「ぶーーーーーっっ!!?」
「うおわっ!? ナルナル、きったねぇな!」
PC画面で響く、独特な口調で舌っ足らずな感じを耳にしながら、若干女の子がしちゃいけないお顔になりつつ手元のドリンクへ口を付けた私。その聴覚へ、まるでASMRのバイノーラルボイスの如く、舌っ足らずな声が……それも自分の背後から聞こえた事でドリンクを噴き出してしまったのです。
「……炎ち? 悪いけど、即オチ2コマで身バレしたみたいだにぇ。」
「はぁ……そのようだね。まさか彼女が君のリスナーの一人とは。流石の守護宗家も、まだまだ情報調査が甘かったか。」
「え!?え!?ちょ、ま……えっ!? もしかして、もしかしてぇ!?」
思わず振り返り、そして再びPC画面のライバーを凝視してまた振り返る。当然身なりは、ヴァーチャルと現実で違うのですが、確実に舌っ足らずな口調はまんまの女性。しかもヴァーチャルの如く小柄な体躯に、ピンクとホワイトのひらひらフリフリ甘々ロリータドレスはそのまんまなガチのロリっ子――
なんとまさかのその方が、炎羅さんと登場するという、ドッキリ
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