memory:89 男の娘閣下、日本へ
そこで、足早に
「ふむ! 大気成分に関しては、
「し、
「やかましい奴じゃの。
「
機関側の子供達に隊員と、慌てて幼将閣下出迎えと駆け付ければ、モニターで確認したよりもやたらと視線が低い事に気が付いてしまう。それこそ、地球文化で言う所の学童レベルのタッパ……初等部中頃の童子そのものであった。
だが、その艷やかな黒光りする肌は妖艶にして高貴。頭部に生える細身の双角からしても、到底人類とは似つかぬ御姿で、やや露出の多い黒衣を踊り子の如く纏うは色欲の魔王。
「ああ……あれって、男の娘だからギリセーフな感じですね(汗)。あれが幼女だったら、この機関……問答無用でポリ様の御用になる所ですよ。」
「珍しくナルナルと意見が合ったわ(汗)。あの露出で幼女はガチヤバっポイ。」
「なんだぁ? 魔王様は偉く身の丈が低くてらっしゃるな。まあ、気配だけでもやべぇのは伝わって来るんだが。」
「貴様! 確か
「喝ーーーーっ!! この
「し、
「「あれ、ほんとにロズ君??」」
のだが、同族であるシザに
「
「おお、すまぬのぅ。今が宵闇であるウチにそれは成さねばならぬ所じゃ。構わぬぞえ?お主……
「ご配慮、痛み入ります。」
そんなわがまま暴君
己が口にした、高貴なる魔族を体現するかの見事な応答によって。
そして、
予想の遥か斜めを行く、魔界の一魔王閣下を迎えた特区巡りが開始される事となった。
†††
「えっ!? 私が
その言葉は唐突に。
「すまないね、
輸送機には、妖艶な幼将の特区行脚に同行する子供達が搭乗するが、そこに加わる大人の機関員は敢えての二人だけとしていた。裏方で先回りし各所で調整を試みる憂う当主と、いざという時の護衛を務められる暴君分家が乗り込み、
「うむ! よしなに頼むぞ、
「はぅ……魔王さんにまで、ゆーちゃんて言われてるぅ……。」
「何を仰しゃいます、この魔王閣下! 幼女……ゴホン! 女性に男の娘にを問わず、ヒラヒラフリフリのゴシックロリータドレスこそが華! 今の貴女様に、これほどまでにお似合いな衣装はこの世界に存在しておりませぬ! デュフ……。」
「おい……(汗)。誰かこの、暴走引きニートおいたん娘をなんとかしろって。なんだよ最後の「デュフ」って。リアルで初めて聞いたぜ。」
「だからあたしは、ナルナル専属のお付きじゃないっぽい(汗)。それにここは百歩譲って、閣下と同行したいあまりに引きニートを脱した、この子の今を喜ぼうよ。」
「……ったく、それも今だけだろうが。このニート娘はよ。」
「おーい、皆。ロズ君がドン引きしてるよ〜〜(汗)。」
ところが、輸送機内の子供達のやり取りはカオスを極めていた。
最も問題であった、幼将閣下の容姿カモフラージュとして準備したドレス。が、それを準備した張本人でもある
それに慣れてしまった機関側の子供達は兎も角としても、魔界で高貴を生業としていた
すでに出立から混沌極まる空気を内包した輸送機は、一路機関側受け入れ地点とも言える臨時施設区へと飛び立った。計画としては、その一夜の許される時間内で特区の要所……それも臨時営業が叶う宗家傘下の、社会一般企業店舗を観光と称し回る算段とした。
それをタブレットで案内するは、機内へ車椅子ごと固定された
「では
「おい、ゆーちゃん。堅っ苦しいのはなしじゃ。確か今、お主と
しかし相手は魔界魔王の位置に立つ者。失礼のない様にとした討滅の妹嬢の配慮へ、逆に居心地の悪さを感じる妖艶な幼将は砕けて話せと詰め寄った。もはや彼女の可憐な美少女と違わぬ姿に、堪らず機内で鼻から赤いモノを噴出させた役一名を置き去りに、視線を憂う当主と交わした妹嬢は改めての案内に入った。
「じゃあ、
「よし来た!
「はひっ!? ……し、失礼しました! しかし私めまでその様な――」
「喝ーーーーーっっ!! 今このゆーちゃんが、わざわざ友人として接してくれているのじゃぞ!?
「ひーーーーっっ!?」
異界の高貴なるモノとの謁見から一転する、友人との交流を深める光景へと移り行く機内。そこで目聡く、仄かに舞う空気感を読んでいたのは女子陣である。それは討滅の妹嬢を
それは二人の関係性から見え隠れする、淡い恋慕の空気感であった。
「え? この空気は何でしょう。確かに閣下改め、
「ははーん、あたしは読めたぞ? うんうん、これは分かり易いねぇ。ロズ君たら、まさかまさかのそう言う事かぁ。けどさ――」
顔を見合わせる
「「これは……難関だねぇ〜〜。」」
嫌な汗の中シンクロする二人と、睦まじい光と魔の交流が機内で紡がれる。やがて輸送機のジェット音が下降のために音量を下げ行くと――
程なく日本本土へ、魔界の幼将閣下が上陸する事となった。
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