memory:75 暗き深淵は馴染む足元から
多くの難題を越え、五人の子供達をストラズィールパイロットとして迎えられた現在。オレはそこまでの軌跡を懐かしむ様に振り返っていた。
最初あの観測者 アリスより、地球古代に存在していた古の技術……その管理使用権利を譲渡された時は不安でしかなかった。
そもそもオレは守護宗家のお堅い重鎮からすれば厄介者。当主としての立場がなければ、こんな状況を導ける素養がないのは理解していた。しかし、それらと異なり多くオレを支えてくれる者もいる状況――
それを頼りに今を迎えられた事に、地球防衛への微かな希望を見言い出せたのも事実だ。
「あの! ……
「ああ、ありがとう沙織君。では頂くとしよう。」
いろいろ思考へ
思えば彼女の支えこそが、この成り行きで任された古代施設をアメノハバキリ機関へと昇華させる事が叶った最大要因。オレは、彼女と共にあるに相応しい存在を目指してここまで来た。
地球と言う世界へ忍び寄る、異形の魔を討滅せしめる三神守護宗家は一家……草薙家の当主としての誇りの元に。
隣り合う様に簡易椅子へ座り、はにかむ沙織君へ笑顔を送りつつ視線を歓迎会会場へ。そこではすでに馴染む感のある、パイロットの子供達の姿があった。少しチクリと痛むこの胸のウチも、今はそっと置いておくとしよう。なぜならば――
彼らは、自らこの世界を守るために協力の手を差し伸べてくれた、若き希望達なのだから。
「おう、
「はうっ!? れれ、れ〜〜……なんてお名前でしたっけ。」
「っと、嬢ちゃんの邪魔したけぇ。また後にするわ。」
「いや、重要な事だろう?
「はいっ! あたしは全然構わないっぽいんで! それじゃ!」
若き希望の未来を思い描くオレの聴覚へ、無遠慮に響く声は
そこで助け舟を双方へと出しておく事とする。
沙織君が子供達の輪へ戻る頃、オレと
「しかしなんじゃ、おんどれ。まさかワシを機動兵装のパイロットに抜擢するたぁ、さしものワシも慌てふためいたけぇ。そもそも自衛官がここに詰めとるんじゃけ、そちらに任せたら良かったんじゃないけぇ?」
「彼らとしても、安易に国の所有外の兵装は運用したがらないさ。ただでさえお国柄、あの様な兵装は戦争行為を助長すると言う大衆の反感を買い易いんだ……正規で配属された自衛官にそれを任せるのは酷だろう。自衛隊の存亡にさえ関わりかねないからな。」
「それはワシら守護宗家も同じじゃろう? ただでさえ脳天が石で出来た老害共は、今のおどれが運用する宗家の体制を良くは思うとらんけぇ。」
「分かっているさ。それはすでに、先の事件でも明らかだからな。」
必然的に、それらの中で周りを意識しながらの行動指針が求められるんだ。
これからこの地球が向かう、未来の防衛を成すための重要な会議の一つとして。
†††
洋上と言う
「ヤベェよ……肉が旨すぎんだろ。どんな高級肉仕入れてんだよ、守護宗家。」
「侮れませんね……この私を終始、バーベキュー会場へ釘付けに出来る食材を準備出来るなんて。」
「そう言えば
「……ぬあっ!? ゆゆ、
「ナルナル、大丈夫かそれ(汗)。異端の白いゴッドフィンガー混じってんじゃねぇか。」
そこで目を疑う事に、すでに
「あーうん。ナルナルがずっと外に出てるって。これどんな非常事態?」
「そうだね(汗)。ちょっと携帯で洋上の天気を確認しておこうか。」
「違いないでやがります。アオイ、こちらでも異形の襲来がないかチェックしとくでやがります。」
「おねーちゃん失礼ですの。でも……今回ばかりは、アオイも同意ですの。」
「ひひ、酷くない!?皆、いくら私が引き篭もりだからといって、その扱いは――」
「自業自得でありますぞ、ナルナル嬢。」
「……姫リーナにまで言われた……。」
「姫……リーナ?とは、自分の事でありますか???」
「「「「ぶふっ……!?」」」」
引き篭もり姫の珍事態からの、唐突な
支える大人を中心とした機関員達も、その光景を目に焼き付ける様にお昼時を過ごす。程なく――
成功と相成った歓迎会の後片付けが始まるまでは、希望に浸る歓喜の声が海洋の波音に混じり、澄み渡る空へと突き抜けて行く事となる。
†††
宇宙からの脅威などなかったかの様な、浅ましい人類の闇が
「
何処かの海洋を見渡す事の叶う高層建造物が、仮初の大地とも言える洋上施設へと
暗がりに、僅かな明かりを灯す部屋の窓から一望出来る、施設カタパルトのヘリポートへ一機の輸送ヘリが到着した。それを視界に止める男が歪んだ眉根で一瞥するや、
それに続く黒服数名を従え、男は輸送ヘリから降り立つモノを心待ちにした様に足を早めた。
「お待ちしておりました、元内閣官僚 官房長官……
「その元と言うのはよし給え。今はあの、成り上がりの
「いえ……あなたが現状の立場にいるからこそ、我が
輸送ヘリから降り立つは、現在辞職済みではあるが、紛れもない日本国の元内閣官僚を頂いた者。そしてそれを迎えるは、あの草薙家前当主である
現天月家棟梁
不敵な笑みを浮かべ
未だ
天空より魔の異形襲来が危ぶまれる中。内紛とも言える、元宗家お家の復讐の牙が研ぎ澄まされていた。
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