memory:57 光と闇の共同戦線
男爵級に公爵級と、立て続けに訪れる異形勢力増大に危機感を感じたオレは、トリフネへと戻るや緊急招集をかける。
本土での
「急な召集ですまないな、皆。ロズウェル君も参加に感謝する。そして……今日付けで当アメノハバキリへと転属となった彼女の紹介に移ろう。
「はっ! 自分の名は
「「『か……堅いなぁ〜〜(汗)。』」」
とまあ、予想通りの堅さに反応する
「パパ一佐、今日この時よりパパ一佐と同じ職場であります! 指導御鞭撻のほど、よろしくお願いするであります!」
「「「「ぱ……パパ一佐???」」」
なんと親バカに応じる様なクセ凄宣言に交じる、例の独特すぎる身内呼びが響くや、集まる一同が目を剥いた。それには流石の
想定してはいたが、特段心配はないだろうと一佐へ苦笑と共に視線を送り、その助け舟をしっかり出航させておくとしよう。
「彼女とのやり取りには、少し変わった感じを受けるだろうが……この機関においてはそれもさしたる影響もないと考えている。なので
「ウルスラ君にアオイ君も含め、
子供達に加え、機関員でも三尉と司令室で直接仕事を熟す双子へさらりと協力を要請し、魔軍よりの協力者である少年とのやり取りへと移行する。
彼ら魔族と言われる存在は、地球は裏社会で密かに知れ渡る、闇の眷属上位に位置すると聞き及ぶ。現在は彼らの故郷にある魔界にも存在する
故に、彼らへこの地上で日が登る内に長居させるは得策ではないとの判断だった。
「こちらを
するとこちらの意を汲んだロズウェル君の、紳士たる礼が返される。あのシザ君とは少し異なるも、そこには共通する理念の様なモノが感じられた。
魔族と呼ばれる存在は、古き文献でも高貴にして高潔であり、その行い一つ一つへ崇高ささえ宿すと記される。それは魔族が闇に存在する人間と対成すモノであり、最も深淵に近しき種族である事が由来するとも。
記述の古さ故、詳細が不確かでもあった魔族と言う存在。だがしかし、今ここに魔族の代表として訪れた彼……ラルジュ・デモンズを駆る魔族の、ロズウェル・A・フェンベルド君が触りを口にする。
「ではまず、我ら魔族と言う存在の簡単な素性だけお話する。掻い摘んで語る故、後で情報整理などはお任せするよ。」
今後予想される異形討伐激化へ向けた、光と闇の共同戦線を張るための情報共有として。
†††
天空より来たりし魔の者は語る。元来異界か地の底かにあると言われた世界が、その実は同じ世界である宇宙の……それも人類が住まう太陽系の一部となる場所に存在している現実を。
「我ら魔族の住まう大地云々の前に、地球側の魔族と呼ばれる者の解釈に対する誤解を解いて置かねばならないね。」
大ミーティングルームの宙空モニターを前に、
その一佐が映し出す映像は、おおよそ
『これ、ロズ君も言ってた吸血鬼に狼男を始めとする、地球で闇の眷属って言われる者達ですよね。』
「おお……ナルナルがロボット以外に反応するとは(汗)。でも確か最近のSFロボットとかでも、神話上の神々に
「……二人ともなんで、そんなにホイホイ情報が出てくんのさ。あたしにはさっぱりっポイんだけど?
「え? そこでボクに振るの?」
「以後は名前で呼称するとして、
「君の口にした神話上の下り……それが現実にありえるというのが、これから話す魔族と言う存在を解する鍵となる。」
そこで飛び出た単語に絶句する子供達とは裏腹に、機関に属する者達は来たかと静聴の構えを取る。彼らがその点に動じぬのは、
日本国の遥か
驚愕で呆然とする子供達を一瞥し、
「今諸々の事情も絡んでいるゆえ、我らが慕いしお方々より部分的に語る事が許されている点のみ話しておくよ。我らの故郷は、この太陽系のある忘れられた惑星の衛星軌道に君臨する
「最上層世界〈ケテル〉に、魔の天上の頂きである魔神帝ルシファー様を初めとした六大宰相を置き、下層世界へそれぞれ魔王を配している。その闇の楽園を、我ら魔族は〈天楼の魔界 セフィロト〉と呼称しているんだ。」
やがて紡がれる真実の一端は、
宇宙の歴史に於ける真実の一欠が、その最初のページを
そこから繋がる異形襲来の真相が、次いで放たれる事となったのだ。
「そのコミュニティを持つ我ら魔族は、悲しくも一部の光に属する存在らから悪魔と称される事がある。しかしその実は、我らの様な高位の霊質を持たぬ者こそが、そこに該当しているんだ。高位なる魔の霊的素質も無く、ただ獣の如き本能で霊的下位に位置する者を捕食する異形――」
「そして……我ら魔族が生まれ落ちる間際の、不確定で生命とも呼べぬそれと、光に属する霊的存在の成れの果ては元来本質を同じとする。即ち、我ら闇の人類たる魔族に対成す光の霊的存在……君達人間が負の極限へ堕ちた姿こそが、
襲う戦慄は、そこにいる一同の心へと刻まれる。が――
そんな中、信じ難き言葉を放った張本人は双眸へさしたる不安も浮かべてはいなかった。それは至極当然の事。彼は語るべき真実を、
襲い来る異形の勢力を穿つために必要不可欠な、対なる種が手を取り合うため一堂に介していたのだから。
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