memory:41 対魔戦線に異変アリ
地球の志士ばかりに任せていられぬと、
「あら方は片付いた様だな。だが――」
『そうだね、イレギュレーダの発生総数に留まらない異変をすでに確認した所だよ。この僕のラルジュ・デモンズを間に合わせて正解だった。』
軌道上で爆炎に包まれる異形を睨め付けながら、二人の魔族騎士は双眸へ憂いを宿す。それもそのはず……今しがた屠られた
『ラルジュ・デモンズは鉄壁の防御と剛腕が生む破壊力……デモン・ナクアが強みだ。けどあの個体は、それを以ってしても叩きのめす事が難しかったと言えるよ。』
「だろうな。そのラルジュ背後に構えた、重砲火線 デモンズ・ヤクターを受けてなお立ちはだかるなど……並大抵の攻撃であれの防御を抜くのは至難だろう。」
「イレギュレーダの中級種……レッサークラス・デヴィルのバロンガング。あのストラズィールとか言う霊機らでは、火力面・破壊力面での苦戦は避けられんか。」
歯噛みする映像に映し出されるは、強固な機械生命鎧を纏う中級個体。さらには先に襲撃を敢行していた下位種とは明らかに異なる、魔生命としての格の違いを見せる異形。
雑兵クラスから昇格した、強化鎧兵クラスの異形がそこに映し出されていた。
眉根を寄せる魔族騎士達。そんな彼らへ、一つの光明となる魔導技術通信が飛んだ。
『よくやってくれているな、二人共。参じるのが遅れた旨を謝罪する。』
「ア……アスモデウ――ゴホンっ!
『ふう……ボクの前で
「貴様っ、ロズウェル!
響く通信は魔の貴公子が崇拝して止まぬ影。魔導式モニターで映るは、鋭くも優しささえ孕む双眸の巨躯。魔の貴公子と同族であるからか、少年と同じ白銀髪を左右に揺らす頭部へ、大きく張り出し畝る双角を構える姿。
体躯にして2mを超える荘厳なる存在が、魔の貴公子の双眸へと映り込んでいた。
だが彼の心酔が己の大差ないと悟るや、嫌味混じりの苦言を呈する温和な魔太子。されどその二人を見やってなお、優しき双眸はそのまま
「仲良くやっている様で何よりだ。我らが至高の大兄者である
『『ははっ……!』』
巨躯より言葉が放たれるや、言い争う二人の少年は弾かれた様に
魔の騎士である彼らが駆る機体。加えて、そこに追従した魔楼の母艦そばへ悠々と辿り着く影。背後に広げる有機体と思しき無数の帯と、その合間から伸びる機械生命の如き翼が二対
頭部へ険しき面持ちを構え、搭乗する巨躯に
特筆するは、腕部へ装着する巨大なる体躯をも上回る巨筒。複雑な幾何学模様を刻むも、それは強力なる超撃の破壊砲塔と見て取れた。
「宇宙側はこれより、我……
『『はっ! 天魔の宰相の御心のままにっ!』』
その時より、
†††
一頻り降った雨も止み、太平洋へ夕焼けが赤き帯を引く中、
それを出迎えるは、機関の主要となる一行に加えた
「あー
「……そう、なんだ。確かにクセは凄いかも。」
「だ、だだだだ……誰がクセスゴ芸人ですかっ、失敬な!」
「いや彼、そうは言ってないっぽい……(汗)。」
なんと機関子供達側でも僅かな成長を見せた
そこまでを視界に入れた憂う当主が改めて、機関主要メンバーの紹介へと移って行った。
「なかなかに素敵な子供達だろう?
「彼らを始めとした多くの家族が、ここ対魔討滅機関 アメノハバキリ擁する施設、アメノトリフネに集まるクルー達だ。」
順次
「ああ、まだ私名乗ってないっぽい。私は
「……私はーーっ! か、かり……かりかり――」
「カリカリって、小動物かお前は(汗)。」
「ちょっと黙ってて下さい、
「「噛んだな(汗)。」」
眼前で名乗る貫きの少女に続き、やや距離のある階段設備から、咆哮を上げる様に名乗る引き篭もり姫。そんな彼女の緊張を、解すつもりの見定める少年の言葉は余計なお節介となり――
逆に焦りを覚えた穿つ少女はものの見事に、自己紹介を噛んでしまった。
それには一同も堪らず噴き出すが……彼女の生んだ空気で、居た堪れぬ拳士までもが笑い出した。
「アッハハハっ!……ありがとう、まだ事前体験にも関わらず素敵な挨拶で迎えてくれて。ボクは闘真……
少年が纏う空気が変わる。罪を犯し、それが望まぬ現実から生まれた事を知る彼は、誰を頼る事も出来ずに苦しみ続けていた。その伸し掛かる絶望的なまでの暗雲へ、確かに輝く光明が降り注いだのだ。
訪れた光景を一望した憂う当主も、少しづつ確信して行く。今、
これより、過酷極まる命運を辿らんとする地球に於ける、輝ける希望であると。
すでに雨雲が霧散した太平洋の水平線へ、暁が少年少女達の未来を惜しむかの様に暮れ行く頃。事前体験となった居た堪れぬ拳士は機関の希望らに連れられて、
子供達へ少年を任せ、憂う当主は司令室へと赴いた。確かに希望の兆しは確認したが、同時に絶望の因子は未だ不穏に
「魔の異形……デヴィル・イレギュレーダの動向はどうなっていますか? ここ数日、地上に現れた形跡が確認されていないのですが。」
『少々お待ちを……。現在こちらで確認している情報としては、そちらが接触した魔族騎士、でしたか……。どうやらそれら勢力が、地球の衛星軌道上で対応したと、〈ジェックネス宇宙管理局〉より報告を受けております。』
「なるほど、向こうには向こうの動く道理が存在していると言う事ですね。彼らは現時点では敵でも味方でもない故、その点には留意願います。防衛省
『分かっておりますとも。全く……ここまで宗家が本国防衛に尽力して下さっていると言う中、官邸各省内ではあいも変わらず内輪もめの最中。両政党が身内の恥をつつき合う惨状には、心苦しい限りですな。』
司令室で憂う当主がやり取りするは、現在日本国・政府筋で唯一守護宗家と繋がりある政治関係者。国家防衛を担う防衛省長官の補佐を担う男性、聖眞 清宮である。
彼との対談に於ける重要点は、
そこには両者で共有する異形の侵入経路――即ち、地球と言う観点からした、魔が紛れ込む要因を知り得る者同士である点が関わっていた。
対談で思わず愚痴を零す
「お言葉には気を付けた方がよろしいかと。その恥をつつき合う所へ、長官補佐殿が槍玉に挙げられては本末転倒。我ら守護宗家も、日本国政府へ正当な防衛を提言するパイプが失われてしまいます。」
『おっと、失言でしたな。いつも思います……あなたの様な方が政府へ一人でもいたならば、この様に腐敗のどん底を見ずにすんだのでしょうが。ところで――』
やり取りへ、単純な立ち位置以上の感情が込められる両者。その会話の端へ、少し眉根を潜めた長官補佐からの不穏が投げかけられた。
『当主
『草薙の血脈に繋がる総本家へ意を唱える者共が、どうもきな臭い動きを見せているとの情報をね。』
「……っ! そう、ですか。情報提供に留まらないお心遣い、感謝します。」
語られる言葉。それは守護宗家も一枚岩ではない事実。宗家に於いてそれは、ある時期から活発化して来た動きである。
時は
エイワス・ヒュビネットと名乗った少年を、宇宙へと逃した前当主である
反宗家組織
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