memory:26 心の闇を超えた、光への一歩
異形の魔生命たる
その一撃が爆轟と共に舞うや、一体の異形が撃ち貫かれたから。
鮮烈にして凛々しきその出で立ちは、狙撃用調整された
『沙織さん、私の機体はホバリング程度しか出来ません。が、近くの小島に降りれば足場を得られ、攻撃体勢を立て直せます。』
「りょーかいだよ、ナルナル! 私とガングニールが時間を稼ぐから、小島へ降りて長射程狙撃、だっけ!? それをよろしくっぽい! 」
『ガングニール……それが沙織さんが付けたその子の名前。てか、そんな北欧神話主神の武器名なんて、よく知ってましたね(汗)。』
「分かんないけど、頭に何故か浮かんで来たんだよ! それより……来るよ!? 」
機関も待ち望んだ二機目の
『沙織さん、聞こえますか!? 現在敵の増援などは確認されていません! ですので、このまま二機のストラズィールの力持ちて、残る敵の討滅を敢行します! そして、二人で無事に戻って来なさい! 』
「はい、
臨時指揮を執る
その隙を逃すまいと
それは高機動強襲突撃と言う戦術を成す新たな戦騎の追加を意味していた。
「まずは一体! んでもって、もう一体っポイ! 」
小島へとホバリングで向かう
そして稼ぎ出された時間で小島到達を見た
「私が沙織さんの背後を取らせません! 撃ち抜いちゃいます、私的にっ! 」
直後狙撃体勢へ移る
さらに見れば、
そこから時間を置かずに、三度襲った危機を乗り越える子供達の、笑い合う笑顔が声を響かせていた。
†††
巨大な人型兵器の操縦に、敵対存在討伐と言う未体験の経験は、私にとって全てが真新しく感じたものです。
その戦いに勝利し、助けたい友人も助ける事が出来たのです。
「はぁ〜〜ナルナルが怖がる理由が分かった。あの敵、近くで見ると想像以上に怖いし。」
『私も一時はどうなる事かと思いましたが、その……感謝してます、沙織さん。』
機体を固定したカタパルトが下降して行く中、ゲイヴォルグから
ですがそんなお互いが言葉を交わすのを
『沙織嬢ちゃんよう! 行って来いたぁ言ったがな、ここまで機体を傷付けていいなんざ、一言も言ってねぇぞ!? カタパルトが定位置に固定され次第、さっさと機体から下りて、その目で状況を確認に来なっ! 』
「うひゃっ!はい〜〜! 」
『ぷぷっ……沙織さんも
『
『……うう。とばっちりだ……。』
何か仲良く頑固な整備長のお冠に晒され、気が付けば苦笑を向け合う私達。命のやり取りは確かに怖いけれど、彼女といればなんとかなりそうな気がして来ました。
『なんつーか。俺、置いてけぼりだな〜〜。』
「『ご、ごめん。』」
っと、唯一の男子の存在を忘れてましたね。
兎にも角にも無事帰還を果たした私達は、すぐさま格納庫のデータ集積モニター前へ参集です。
そこでデータとにらめっこしている
「
「えっ……私、そんなにダメっポイ? 」
「そうだねぇ〜〜。まだこれは機体に慣れてない点と、機体の攻撃特性ゆえの問題なんだけど〜〜。沙織ちゃんは突撃に特化し過ぎて、回避が
「ですよね。猪突猛進……沙織さんはもう少し避けながら敵を穿たないと、カウンター食らって自爆しかねません。」
「も〜〜! 三人して納得してないで、私に分かる様に説明して〜〜! 」
私自身、機械を初めこういう戦いとかはよく分からないため、正直皆の言葉はチンプンカンプンだったのですが……助け船は
「沙織君の機体は強襲突撃特性……分かり易く例えるなら、ハンドルの利かない自転車なんかを想像してみると良い。曲がれなければ障害物へ一直線。避けられなければ危ないだろう?つまりは常に、回避を念頭に置いた攻撃が必要となる訳だ。」
「敵の状況を見極め、生まれた隙へ向けて一気に突撃する。が、そこで狙われる事も考慮しフェイントなどを交えなければ、敵から思わぬ反撃を受けて致命打となる。これならば理解に足るかい? 」
「え……
「沙織さんに合わせた噛み砕き方が、
せっかく
そんな私を見やる
「確かに機体の傷は生々しい。が、沙織嬢ちゃん……嬢ちゃんは少なくともこいつで友人を救ったのは間違いないぜ? 」
「そうだね〜〜。何の傷もなしに勝利する方が、帰って自信過剰に
一転しての褒め殺しに、今度は耳を赤くして視線を泳がせ……
けどそれは、私が新たに得た人生。死に逃げそうになった所を救われてから、生きる覚悟を決めた私への最初のご褒美なのです。やいのやいのとやり取りする三人を尻目に、視線の先には
だから彼へ「すぐにあなたも出番が来るよ。」と言う意味で苦笑を返し、頭上30mを超えるそれを見上げます。
貫く者の名を得た、私のパートナー。巨大な槍を自在に振り回す、猪突猛進なイケメン兵器さん。そのイケメン兵器さんへ向け、自然に言葉が溢れていたのです。
「まだ始まったばかり。だから一緒に頑張って行こうね?ガングニール。滅びを齎す者とか言う不名誉を、私達でひっくり返しちゃおう。」
言葉と共に溢れた笑顔。それをとても優しい笑顔で見やる
気付かないまま、戦いのその後を過ごしている私がいたのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます