memory:18 敵襲来と鬱ろう少女
「何度来ようとも落としちゃいます、私的に! 今までの私と思わない方が……ぴゃっ!? 」
『
勢い勇んで飛び出した私でしたが、先の敵に張り付かれた時の恐怖が脳裏を掠め、機体モニターへチラチラ映り込む魔の異形さんを怖くて見られなくなっていました。
『何やってやがるですか!? ちゃんと目標を狙い撃ちやがれですっ! 引き篭もってたぶん、しっかり働きやがるです! 』
『無茶言うなよ、やがるさん! あんな怖い目に合えば、誰だって身が竦むのは当然だろ! ナルナル、光学映像から他の……例えば姿が見えなくてもターゲットを補足出来る機能とかねぇのか!? 』
『なっ……オペレート部外者は黙ってやがるで――やがるさんてあたしの事でやがりますかっ!? 』
『あんた自己紹介の時来てなかったよな!? んじゃその名前で充分だよっ! 』
そんな私へ、冷静に言葉を掛けてくれる
その友人的な彼の名案通り、敵を見れないのでは狙撃もないので、熱源反応感知式のターゲット補足モードへと切り替えます。
「
『こらっ!? そのやがるさんを、継続するなでやがります! 』
『おねーちゃん……もう、それこそ無理な話ですの(汗)。やがりっぱなしですの。』
『や……やがりっぱなしって何っ!? 』
やがるやがると、うるさくなって来たので通信音量を少し抑えつつ敵を見定めます。そしてカタパルト上で、ゲイヴォルグを狙撃体制へ移行させた時それは視界に入ったのです。
「あれ? 輸送機が離陸準備に? もしかして
敵襲来の最中、指揮をとるのが
「
そう……何らかの事態に対する緊急出向であろう事は理解したのですが――
語られた言葉が私の闘志に熱い火を灯す事となったのです。
『……っ!? 言うべきか躊躇していたんだが、君が気付いたならば仕方がない! 先程
「ふぇ……あの私をナルナル呼びした友達いない子さんが? と言いますかそれ、友達いない所か精神負荷って……。」
耳にした言葉で彼女を……
ギリリと歯噛みし
「……行って下さい、
『
モニター越しに、焦燥を募らせる彼を視認したんです。大人たる
そんな面持ちのまま、輸送機が向かう方向の敵を集中的に落とし始めたのです。
「お前達に、
モニターで眉根を寄せつつ私へ
ならば私達子供は、送られる敬意にそぐわぬ態度を示さねばならないんだ。
思考に宿った想いは、愛機たるゲイヴォルグへと染み込み……再びの機体覚醒の中、私はターゲットへの一撃をお見舞いしていったのです。
†††
「
『現在 目下捜索中ですが、沙織嬢の足取りは未だ掴めておりません。しかしこれは、ただ失踪した感じとは言い難い状況です。』
任務車両に響く通信は
しかし彼の通信に含まれた、直感めいた言葉の羅列を聞き逃す憂う当主ではなかった。
「何か思う所があるならば、包み隠さず報告しろ。君の感覚ならば信用に値する。」
当主の後押しに、社会派分家も
『そういう事ならば……。先に機関院長から通信を頂いた所、気にかかる言葉を口にしていました。沙織嬢を監視していた者達が、尽く彼女の気配を見失ったと。』
「監視員皆が……だって? それは確かか。」
語る社会派分家へ当主が問えば、映像越しに首肯する姿が映し出される。それを確認した憂う当主は、すでに機関への協力を申し出た二人の子供達を思い浮かべていた。
「(彼らは社会によって、望まぬ不適合のレッテルを貼られたかも知れない。だが……もしかすれば彼らは、そんなレッテルさえ自ら剥ぎ取れるギフトを備えた希望なのか?)」
「(社会から見えぬ壁で隔絶された故に勝ち取った、彼らだけの……彼らだからこそ持ち得た素晴らしき素養……か。)」
事態は逼迫するも、そこに見い出された希望の欠片が憂う当主の脳裏へと、今後の地球防衛に於ける活路を導き出して行く。
されども今は、
「当主 草薙!
「……新手が海洋を迂回して来たか! 対空、間に合うかっ!? 」
「機銃掃射……ダメです! 個体の表皮装甲を抜け――うわっ!? 」
一刻を争う中での窮地が憂う当主へと襲いかかっていた。
一方、日本本土。
宗家特区を駆け抜ける
「
己が仕えし当主の身を案じるも、今取るべき行動を見誤る訳にはいかぬと自身に言い聞かせ、車両を降り路地裏へと駆け出した。
愛に飢えた少女の状況から遠くへは行ってないと考察するも、直前己が口にした推測が過った社会派分家は、改めて失踪した彼女の経歴を脳裏で洗い出す。
「沙織嬢は確か両親との折り合いの悪さから、日常をほとんど一人で過ごしていたと報告されている。だが当の彼女は両親に何より会いたがっていた……少なくとも、アメノトリフネに招待された時点では、その空気が満更ではない様に取っていたらしいが――」
限られた時間と情報で、少女の姿を、そしてそこに何を求めていたかを推理して行く社会派分家。逡巡を重ね……それは一つの解へとようやく辿り着く。
「待て……満更ではない? と言う事は、彼女がもし無意識下に足を向けるとすれば……! くっ、これでは灯台下暗しではないかっ! 」
脳裏へ少女の行動を推測する分家。精神的負荷の掛かる彼女が何らかの救いを求めていたとしたら……であれば、少女が向かう可能性のある場所が存在する。それが彼の思考へ閃き――
すでにかなりの距離を走った、
「
愛に飢えた少女の失踪が無意識によるものであり、そして今の彼女が向かうであろう場所。導かれた解は
彼女の飢えた愛を満たすかも知れない希望。新たな家族との繋がりという安寧と、再び
協力者へ提示された
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