memory:16 光と影、双極の少年少女達
引き籠もりがブレない
最初は双方ぎこちなさが残る関係であったが、共通する点が多い事を知ってからは
「夕方以降のスケジュールは見たか?ナルナル。体力トレーニングは一先ず置いといて、そこでリモートシュミレートは出来んだろ。」
『うん。それなら許容の範囲内だね、私的に。けどその後――』
「ああ……そこはしゃーなしだろ。一度に大量の外界人に会いたくないって言ったのは、ほかでもないお前だかんな? だから一人づつ――それも一番ナルナルが興味を持ってた人から慣らそうって話だ。」
共に他人を毛嫌いし、さらに似通った共通嗜好が功を奏したのか、穿つ少女と見抜く少年は通信越しで打ち解け合い……ようやくの家族としての出発点に立つ。
大格納庫の一角にあるモニター群から通信を終えた見抜く少年は、さらにそこから残る機体運用のため詰める一人の男性へと歩み寄る。男性は着古したツナギ服に身を包み、ただ黙々と作業に没頭しており、少年が傍に近付こうと見向きもしなかった。
だが――
「あの……俺、
ツナギ服の男性の作業を邪魔しない程度の声量とディスタンスを保ち、見抜く少年は礼節に
「近頃の若いモンにしちゃぁ、いい挨拶だ。ならお前さんの機体整備に関しては、しっかりそれに応えてやらんといかんな。」
それだけを返したツナギ服の男性は、再び作業に没頭するが……そのまま遅れて自分の名乗りを口にする。
「ワシは最近じゃ、お前さんの様な若造に出会わんかったからな。テメェの名乗りを上げるのを忘れちまった。ワシは姓名は好かん……
「ウッス。一鉄さん、よろしくです。」
やり取りは僅か。だがそこには、少年が持つ対人知性の能力が
「おやっさんへ声をかけて、一度目で返答をくれたのはあなたが初めてよ? 何か魔法でも使った? 」
「んなバカな。これは俺が物心ついた頃からずば抜けてた、相手を見る感覚です。他人の言動に会話内容や、その人が醸し出す雰囲気とか……そんな情報を総合的に頭で検証し、相手を見定める――」
邪魔にならない様にと、
そんな少年へさらなる感嘆を抱いた真面目分家は、初対面では見せた事もない笑顔で少年を励ました。
「それは大変素晴らしい能力だわ。人は己を知らぬ割に、相手には理想を押し付けすり寄って来る。しかも相手がそこから大きく乖離した異端と聞くや、
「
かかる言葉は少年が今まで望んでも得られなかった、己の本質への賛美。一番彼を案じていた兄をも超える称賛とも取れるそれは、確かに少年の心を動かした。あまりの出来事に呆け、口を開けて思考停止した少年。ハッと己の
「あっ、と……すんません、
「いいわ、行って来なさい。あと私は
真面目分家はその目に映る、双眸を滲ませてしまった男のプライドを尊重し……少年をVRシュミレート訓練へと送り出す事にした。
†††
「ちょっと沙織、どうしたの!?顔が真っ青だよ! 目の下に凄い隈……寝不足とかじゃないの!? 」
「……ああ……気にしないで。大した事ないから……。」
大した事はないと返す
その日は朝礼を待たず――
友人の身を案じた同級生の計らいから、保健室へと向かった愛に飢えた少女は入室するなりベッドへと倒れ込む。それにはさしもの保健教員の女性も目を剥いた。
「あら? あなたは2−2の
「大丈夫……です。すみません、このまま休ませてください。」
少女の容態を悪化させかねない、今彼女へ向けてはならない言葉を。
「
「……ない。いない、いないいないいない!親なんて私にはいない!誰も私を見てくれないんだ!見てくれない……見てなんてくれない!見て、くれ――」
〈親御さんへ〉との言葉へ過剰に反応した少女は突如狂った様に喚き散らし、言葉半ばで意識を遠のかせ……ベッドへと臥せってしまった。程なく少女は教員付添いの元宗家管轄病院へ……それも精神科へと搬送される事となる。
そしてその報は、宗家管轄病院と言う事もありすぐさま守護宗家……草薙家のSP
「詳細は把握した。こちらもすぐアメノトリフネから向かう所だ。
『了解しました。まだ敵は侵攻を初めたばかり……
その中央巨塔区画で、憂う当主が定期的に足として使う輸送機がアイドリング状態で待ちわびる中――
「いやぁ〜〜こいつはなんとか間に合ったよ。
「それは助かる。皆を後で
「なんと……それはいけないねぇ〜〜。
「買いかぶりだよ。オレは完全な人間でもなんでもない。誤る事もあれば、立ち行かなくなる事だって……。それを助けてくれているのが、君たち機関へと集まってくれた家族達だ。」
後手となるも準備が整い待機中の、機関が擁する対空兵装。現代戦闘機よりも一回り小さな、迎撃システム群を見上げる
そして改めて
――向き直ろうとした時、またしてもそれは訪れる事となった。
『草薙さん、魔の軍勢……あの
『数は先の襲撃より少数……いえ、待ってくださいですの! これは――今、さらに大型の
「このタイミングでかっ!? くっ――」
双子の通信が順次放たれるや、憂う当主は歯噛みする。場合によっては一刻を争う少女の元へと、向かう最中の襲撃と言う状況に。
そうして
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