時々VVR、献血に行こうっ!

松生 小春

献血、行ったことありますか?

「松生さん…今日で5回目だね。体調はどう?睡眠は?食事は何時にした?」


 涼しい献血車の中で優しそうな年配のドクターが問診する。人生で5回目の献血か。3回分の記憶しかなかったけど、私って意外と献血してるかも。


 …バッチリです!前回より(嬉しくないけど)体重も増えてますし!


 簡易的な医師による問診を済ませて、採血に移る。


 …実は…注射苦手で…。前回ちょっと気分悪くなっちゃって…(優しく刺してください)


「あら、じゃああなた、やらない方がいいよ!本当に大丈夫なの?」


 採血する看護士さんは苦笑いすると、ゴム手袋を嵌めた手をパッと引っ込めた。あーまずい!ここで献血を断られたら困る!さっきドリンクとお菓子、貰ってるし!ここまで来て悪いし!


 …大丈夫です!もう5年ほど前ですし!誰かのために、献血したいんです!体重も増えましたし!注射、克服したいんです!(嘘です注射怖い…)


 看護士さんはちょっと困ったような表情をマスク越しに浮かべ、それじゃあと言って注射の準備を始める。「気分が悪くなったら必ず教えてね」そう付け加えるのも忘れずに。


 小さな台に両腕を置く。ゴムバンドを腕に巻きつけられ、血管のチェックをされる。手先が冷たくなってる影響で血管がちょっと細いとのこと。


 …やだあ…痛いのかなあ…。


「じゃあ、チクッとするから、怖いなら絶対に注射、見ないようにね」


 もちろんすでに顔をそむけてひどく口元を歪ませている。い、いつでも刺される用意は出来てます!


 チクッ!グゥー…。


 そう、刺したあとに更に深く差し込まれる所がめちゃくちゃ嫌。


 グッ、すぅ…。


 そして抜く瞬間の痛みもキライ。

 恐怖でいつの間にか止めていた呼吸を再開する。


「いいね、血の濃さもバッチリ!献血できるね!」


 …あの、これってまた刺されるんですよね?


 笑顔の看護師さんにおずおず尋ねると爆笑された。夕方の献血車の中は、終始和やかである。


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