鉄槌

今回のお話は「尊属殺重罰規定違憲判決」という実際の事件を基に構築しています。

性質上虐待、近親姦といった単語が出てきます。


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日本には、法律が人間の姿を借りて法律に基づき仕事をしている人達がいる。

その人達は、「リョウノギケ」と呼ばれている。


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昭和48年4月4日。


「け~い~ほ~~~~~~ぅ!!!」



リョウノギケの職場。

その一角にある刑事法部屋に、日本国憲法の声が響く。

突然入ってきた憲法に、刑事法の空気が一瞬止まる。


「この規定はなにぃ~~?」


刑法の席の前に立つと、とある事件の判決文が書かれた紙を突き出す。


『日本国憲法さんへ

事件番号:昭和45(あ)1310

栃木県矢板市で当時29歳の女性が、自身に近親姦を強いた当時53歳の実父を殺害した「栃木実父殺害事件」についてです。

被告人は15年程性的虐待を受けており、殺害当日まで実父により10日間監禁されていました。

当時被告人は心神耗弱しており、また、事情を鑑みて二度刑の減軽をしたが、刑法第200条により懲役3年6ヶ月となりました。

執行猶予を付けたいところですが、執行猶予を付けるには懲役3年以下でないと出来ないのでどうにかしてください。

というか殴ってください本当に。

裁判所法


>刑法第200条「自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス」』


「ああ、これは尊属殺の判決――」


刑法がその話ね、と納得したように言うと、憲法は碧色の目をギラリと細めた。


「刑法第200条の規定は何なの!

な~~んで尊属殺は死刑か無期懲役しか選べないのさ!

今回みたいに近親姦を強いられたみたいな特殊な事情があるかもしれないでしょ~~~!!!」


机を指で叩きながらまくし立てる憲法に、刑法は少しずつ座っている椅子を後ろに引く。

周りの刑事法も「これは殴られるな」という目線で刑法をチラチラと見る。

刑法は恩赦法と目が合い、「助けて」という合図を出したが無視された。


「―――じゃあ一発殴らせていただきます。

違  憲  立  法  審  査  権」


ゴッという鈍い音が響いた。

昭和48年4月4日―――刑法第200条の「尊属殺規定」が憲法14条「法の下の平等」に反して無効であるという判決がなされた日であり、この事件は最高裁判所が「違憲」と判断した最初の判例である。

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