タイトル.63「絶望の都 ロックロートシティ(前編)」
今、ロックロートシティは新市長兼政府本部局長の座を乗っ取ったオルセル・レードナーの手によって支配されている。
量産型生物兵器ジャイロエッジ。カルラ達の手によって死亡したはずのジャイロエッジが大量に街を徘徊している。
これより、オルセルの発言に逆らった者は処刑となる。口答え、反乱は絶対に許されない。彼の手が及んでいるのはロックロートシティのみであるが、時期にこの生物兵器や機動兵器の魔の手はアウロラ全域に足を進めるだろう。
今、アウロラはオルセルの手に渡ろうとしていた。その最終段階へと踏み込んでいたのである。
「……やってるねぇ。ギャーギャー騒いで、祭りの下準備が」
政府の最終目的であった“とある人間の抹殺”。
その肝心のターゲット。最も注意人物とされていたその男が……クレイジーな女の子一人を引き連れて、ロックロートシティへと推参する。
「見慣れた顔もいるじゃないの……というか、見慣れた顔ばかりで気味悪いな」
一斉に同じ行動をとり、口数もあまりないジャイロエッジの大群。
視線を向けられたその瞬間にカルラの体が一瞬だけ震える。万華鏡を望んでいるような気分だった。
「オタクらはアブノチでぶちのめした野郎の御兄弟? それともドッペルゲンガー? 仮にドッペルゲンガーだとしたら即死だよね、アンタら?」
軽い冗談は彼にとってはお約束。
そんな挑発に無神経な人形が反応するわけ当然なく。侵入者の確認を終えてすぐに猛毒のカギ爪を一斉に生やす。
敵地に立った二人、無計画で飛び込んだがために一瞬で包囲されてしまった。
「……テメェは機械をやれ。俺はあの悪の組織特有のバイオ人間どもをやる」
「いいよ~」
互いに背中を向けあう。
戦闘モードへ突入。村正を起動、体には
脳内アドレナリンとドーパミン放出。カルラの肉体は既に超人レベルの域へと到達したフェーズ2へ。
アイザに至っては初っ端からフェーズ3。もとより他の人間と比べて痛覚に致命的な麻痺を持つこの少女に副作用も何もない。
「Go to HELL……皆殺しだッ!」
瞬き一つ許されぬ速度で二人は敵の目前にまで移動。
カルラはバイオ人間であるジャイロエッジを次々と斬り捨てていく。同時、アイザも人型AIであるパトロールロボットの懐に潜り込み、反撃する隙すらも与えずに胴体と脳天をマグナムでぶち抜いていく。
本当に一瞬。彼らにとってはサンドバックでしかない。敵を殲滅していく。
「むっ……?」
斬り捨てたジャイロエッジの肉体の変化に気づく。
ヘドロのように。濃い紫色の体液をぶちまけて破裂したはずのジャイロエッジの肉体が次々と集結し、元の姿に戻っていく。
「あぁ。そっか……忘れてたわ。お前ら無敵だったな」
以前戦ったジャイロエッジと全く同じ能力だ。レイアが使用する超特大の火力魔法レベルで蒸発させるまでに行かなければ、永遠と再生を続けるばかりである。
「じゃぁ、出力あげちまうか!」
フェーズ3へと踏み込もうとする。村正のエネルギー出力を上げてしまえばそれくらいお茶の子さいさい造作もない。
『……ご主人』
ヨカゼからメッセージ。
「どうした、こんな時に」
『もうエネルギーに余裕はない。こんな場所で無駄に消費するのはよくない。本丸を叩いた方が早い』
「準備運動もこれからって時に……まぁ。仰る通りか」
冷たい返事をヨカゼに返す。
『熱源反応が大量に近づいている。オルセル新市長とやらに脅された住民たちだ』
「……しらけさせやがって」
村正をしまい、一度機能を停止する。
「アイザ! ついてこい! 一気にラスボスを殺るッ!」
「はーい! りょうかーい」
バイオ兵器であるジャイロエッジと違って、パトロールロボットは数が多いだけで再生は出来ない。アイザが担当した付近には大きく道が広がっている。
最後の戦いだ。
カミシロ・カルラとアイザ・クロックォル。二つの悪夢が、街をかける。
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