タイトル.24「ブラック・デビルとホワイト・ラビット(後編)」
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時は20XX年! 地球そのものが戦場! 地獄の時代!!
そういう表現が的確化される程に地球は修羅の大地! 右を見ても左を見ても! どこぞの世紀末もビックリな人類大戦争!!
地球はそれぞれ数十以上の国家と組織に別れ、存亡をかけた戦いを続けていた。
この私、カミシロ・カルラはその国家の中でも窮地に立たされていた
大日本帝国総督直属護衛隊長兼第十八独立強襲部隊切り込み隊長! その国で唯一無二の隊の長を務める事を許された軍人の一人なのである!
日を進めるごとに広がる戦火、テクノロジーも進化する中で人類は超人のパワーを持ったヒーローを必要としていた。そのうちの一人が自分なのです!!
俺は各国の大地を駆け巡り、ピンチだった日本の状況を何とか優勢の位置にまで持って行った。
この戦争を終わらせるために日本総督と共に全世界を回って回ってまた回る。ヒーローとして俺は一日も休まずに戦い続けたというわけです。
まぁ、自分は実際強いですし?
戦車だろうが戦闘機だろうが、武装列車に武装ヘリに武装要塞だろうが何だって敵ではありませんでしたとも。自分がいれば怖いものなし!
数十年前に流行ったという異世界転生小説の主人公だとか! 特殊能力で無双するライトノベル系主人公もビックリなとんでもヒーローだったわけでございます!
だが、そんな中で……まぁ、自分に並ぶとは言いませんが?
人類の脅威ともいえる最強の人類が別の国家から現れたのです!
その名は【白銀の
カミシロ・カルラを倒すために送られた、悪の組織の最強の刺客というわけなのでございますッ!!
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「……とまぁ、こういうわけです。わかりました?」
カルラの長々とした話が終了する。
「大体理解した」
アキュラはその話を若干流し目に聞いていた。
何所までが誇張表現で何処までが改竄なのかわかりづらいが、ひとまず要点だけまとめるというのなら……
彼がやってきた地球という世界は現在、大規模な戦争が起きているという事。
カルラはその日本と呼ばれる国家の戦士の一人であり、性格はどうであれ国を守るために世界を回って戦い続けたというわけだ。
んで、カルラと隣で嬉しそうにスキップをしているアイザという女は敵国家の戦士。カルラに並ぶ超人ぶりでその強さは本物。
長い月日死闘を繰り広げ続けた最強のライバル同士。ひとまずはそう頭に組み込んでおくことにした。二人の関係というモノを。
「敵にしては仲が良さそうに見えるがな?」
「……は? 何所が?」
アキュラの問いにカルラは目元を暗くし、睨みつける。
やっぱりだ。アイザと仲が良いとかの話になると露骨に不機嫌になる。
「お前の絡み方もそうだし、ソイツもお前にかなり懐いてるじゃねぇか」
「うん! 私、かるら大好きっ! 世界でいーーーちっばんッ!!」
刺客、敵同士。その割にはアイザの対応があまりにもおかしい気がする。
実際は仲が良いのではと思いたくもなる。聞いてもいないのに返答したアイザの返事でその疑いはより大きくなる。
「だって何をやっても壊れないし死なないもん! ずっと遊んでくれるから、すっごく大好きっ!」
……この言葉を聞くまでは。
冷静になって思い出してみる。
この少女、カルラとの再会を喜んでいるように見えたが……彼に向けた殺意は本物であった。あんな光線をブチかますくらいには。
「なぁ、コイツってもしかして……かなり
人を傷つける事、殺すことに快楽を覚えている社会不適合者。
最悪な興奮趣味を覚えている人間なのかとこっそりカルラに聞き出す。もしかしなくてもだが、あのアイザという少女……相当ヤバい。
「いいえ、違います。この子はビックリするくらい純真なだけですよ」
彼女にそんな性癖はない。純粋無垢な乙女だとカルラは答える。
「ビックリするほど純粋無垢だから危険なんですよ」
純粋無垢。無邪気。その精神はあまりにも子供のよう。
アイザの普段の仕草、確かに見た目の割には言動も行動も幼さが見える。
キスという行為の重さも理解していなかったようだし、力加減とやらに気を回そうともしなかった。戦いを完全にじゃれ合いだと思っていた。
穢れも汚れも、この世の罪も全く知らない少女。
それの度が過ぎる故に危険な存在。それがアイザという女だ。
「ちょっと向こうで色々ありまして。だから自分としても面倒極まりないというか……手が焼けるというか、まぁ」
「とりあえず、お前が大変な目にあってたってことは理解した」
国を背負う者として降りかかる火の粉を払っていたカルラの努力に頭を下げた。
「しかしだ。あんなに乱暴に拒否しなくてもいいんじゃねぇの? アイツこの上ない美人だぜ? それに正面から好意を持ってキスされるなんて、男としてはご褒美だろう?」
「まぁ~……美人なのは否定しませんがぁ……」
アイザへと視線が向けられる。
「見た目も好みですしぃ、将来も楽しみではありますよぉ?」
顔つきはハリウッド女優も顔負けの綺麗さ。黙っていればカルラの好みであるミステリアスでクールな大人っぽい女性。
体つきも将来有望なもので、胸のふくらみやスカートから覗いているキメ細やかな太腿。何から何までカルラの理想百点満点の完璧少女である。
「……だけど性格がなぁ!! 仕草がなァっ……!!」
だが、性格があまりにもカルラの好みにかけ離れている。
大人っぽいとはあまりにも程遠い子供っぽさ。せっかくの大人っぽい姿も子供っぽい仕草で台無し。
可愛らしいのは女の子として実に良いことなのだがカルラとしてはマイナス点。その上、普段の振る舞いもあってか振り回されてしまう。
「~♪」
何から何まで惜しい。アイザを見ながらカルラはそう思う。
「もったいねぇなぁ、チクショォオ……」
見た目は好みだという事は否定しない。
それゆえにアイザの側面での事情に悔しくて涙が止まらない。そんな心境をカルラは語っていた。
「……ついたぞ」
長話も終わり、採取ポイントの広場へとようやく到着する。
看板には標高が書かれている。高嶺の花ならぬ高値の薬草、そう呼ばれるだけの事はあり結構上の方まで歩かされた。
ここまで苦労したのだ。薬草は何処だとあたりを見渡す。
「あれ?」
アキュラは目を疑う。
「本当にここ?」
「ああ、ここで間違いない」
ヒヤリ草は雑草のように生い茂る。
回収する分には特に困らない量。時期的にも夏場なのだから不足することはないはずだ。
----だというのに存在しないのだ。
なぜか、その広場にヒヤリ草が一つも存在しないのだ。
「どうなっている? まだ回収をした覚えはないが……」
広場へと一歩、ス・ノーは足を進めようとした。
「オレタチノニワニィ……!」
声が聞こえた。
影、ス・ノーの足元に巨大な陰が現れる。
「チカヅクンジャネェエエエエ!!」
頭上。
全長2m近く、バランスボールのようにフックラとしたお腹。
角の生えた豚の顔。上半身裸で緑色の肌。
人語を話す魔物らしき生物が長斧を片手に空から迫っていた。
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