入学二日目 (7 / 朱)

 遥達や吹雪達が部屋に着く少し前に、鈴莉達は部屋へと入っていた。


「熱い……」

「鈴莉も結構速いんだね。久々に本気で走った気がするよ」


 そう、私が息を乱しながら部屋でぐったりとしているのは、走っていたから。

 遥さん達と別れた後、姉様がいきなり「このまままっすぐ行って曲がり角を左、次も左で私たちの部屋があるから、そこまで競争ね」とか言いだしたからだ。

 結果は姉様の勝ち。

 速すぎる……一応、私もそれなりに速いはずなのに。


「さてと、少し休んだら着替えようか。あ、着替える前に体拭かないとね。汗が出てるみたいだし」


 そう言って、姉様は部屋の中央に置かれていた椅子に腰かける。

 汗かいたーとか言いながら、姉様を見る限りまるで疲れているように見えない。

 そもそも息一つ乱してないみたいだし。


「そういえば、鈴莉。中学では何部だったの?」

「私ですか? 一応陸上ですよー。メインは短距離だったけど」

「同じだったんだね。もっとも、私は長距離をやらされてたんだけどね」


 そう言って、姉様は少し笑った。

 どうりで足が早いわけだ……。

 フォームも綺麗だったし、有名な選手だったのかな?

 中学の時は別種目の選手なんて全然見てなかったし、分かんないんだけど。


 そんなことも話のタネにしながら二人でいろんな話をした後、姉様は席を立ちあがると、


「さてと、鈴莉。これが君の服ね」


 と、壁に取り付けられていたクローゼットから服を取り出して、姉様は私に服を手渡してきた。


「姉妹ごとに、決められた色の式服を着るのが決まりになっててね。私たちは朱だから朱色の服なんだ」


 手渡された服は、見事なくらい真っ赤で……そして可愛かった。


「っ可愛い!」

「でしょ。その服のデザインは、私もかなり好きなんだ」


 ハイウェストで、スカートは短くて。

 でもはしたなくはならないように、朱いスカートの下に、レースでまた白いフリルがついてて……。


「ね、ね! 着てみてもいいかな!」

「うん、いいよ」


 興奮気味な私に少し笑いつつ、姉様はそう言って私に背を向ける。

 そんな姉様に私も背を向けつつ……服を脱いですぐに着替えようと制服を脱いだ。


 直後、私の腰のあたりに手が伸びてきた。


「――ふにゃッ!?」

「ちょっと、鈴莉。そんな声出されたら、変な気分になるじゃない」


 クスクスと、姉様は少し笑いながら私に体をくっつけてくる。

 もちろん腰に回された手はそのままで。


「ちょ、ちょっと姉様!?」

「へぇ……鈴莉、肌綺麗じゃない。柔らかくてモチモチしてるし」

「ひゃ、だ、だめだってばぁ!」

「ふふ、鈴莉……可愛い声出すじゃない。私、がんばっちゃうよー?」

「ふぇ!? あ、んぅ……っ」


 ぐにぐにもにもにと、姉様の手の中で弄ばれ……私が半ば放心状態になってから、姉様は私を開放してくれた。

 うう、体が熱いよぅ。


 折角拭いた汗を再度拭き取って、少し休憩。

 そして私はようやく、手渡された服を着ることが出来た。


 ……ワンピースだけではスカートがまっすぐに降りてきてしまうから、と着替えた後にパニエを手渡されたけど。


「似合うじゃない。ならついでに、髪も少し弄ろうか」

「はーい!」


 姉様が引いてくれた椅子に座ると、私の後ろに姉様が移動して、髪を整えてくれる。

 いつものツインテールには変わりないけれど、緩くドリルみたいな形のツインテールに。


「うん、こっちの方がその服には合うね」

「姉様、ありがとー」


 「どういたしまして」と姉様は返事をして、「私も着替えるから」と服を取り出した。


 ――これは、仕返しをするチャンス!

 ふっふっふ、姉様、覚悟っ!


「……って、あれ?」

「ふふふ。私にくすぐり攻撃は効かないよ」

「え~!? 姉様ずるい!」

「いや、体質的なものだし。……まぁ、やってきたってことは、またやって欲しいってことだよね? 時間もあるし、ご希望にお応えしようか」

「え、ちょ、ふにゃ!?」

「ふっふっふ、もっと良い声で鳴けー!」


 私が動けなくなるくらいまでノリノリで私を弄ってから、姉様は自分の身を整える。

 姉様、ひどい……。

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