入学二日目 (6)
僕らの前に現れた建物は、白い壁をした、いわゆる中世の洋館といった感じの建物だった。
少し古びているとはいえ、その建物からは厳かなオーラが伝わってくる。
しかし学園内にこんな建物があるって……いったい何を考えて作ったんだ、これ。
そんなことを考えている間にお姉様が扉を開け、僕らを中へと招き入れる。
一歩入っただけでもわかるほどに、そこはもう僕の知らない世界だった。
広いホールに豪華なシャンデリア。
奥と左右に伸びる廊下から、メイドさんや執事さんが出てきても違和感はなさそうな感じだ。
「さて、ここからは姉妹ごとに別行動になるからね。きちんとついてくるように」
前を歩いていた空さんが、僕らの方を振り向き、そう言ってきた。
どうやら、各色ごとに部屋が用意されているらしく、それぞれの部屋で準備をすることになっているらしい。
もはや普段の世界と次元が違いすぎて、“そういうものなんだー”としか思わなくなってるあたり、僕はもう疑問を持つこと自体を諦めているのかも知れない。
「ではソラ、レン。また後で会いましょう。二人とも妹をいじめたりしては駄目ですよ?」
「お前に言われなくても大丈夫だ。きちんと着替えさせてから向かう。お前の方こそ苛めたりするなよ?」
「ふふ、そーゆーことっ。じゃ、二人ともまた後で」
お姉様がそれぞれバラバラの道へと歩みを進めたことで、ついていく僕らもお互いに背を向けるような感じに足を出した。
道中、お姉様が教えてくれたが、ホールで三本に分かれ、その後でさらに二本に分かれ……さらに二本に分かれるらしい。
つまり、三、六、十二、というわけだ。
だから、自分の部屋がどこかは今回できちんと覚えないといけないらしい。
そんな話をしながら歩き続けること約五分ほど――部屋に着くまでにこんなに歩くとは予想外だったが、僕らはようやく自分たちの部屋へと辿り着いた。
「はい、遥。この部屋が私達……蒼の姉妹のための部屋ですわ」
僕の前を歩いていたお姉様が立ち止まり、そう言って部屋の鍵を開ける。
そして開け放たれた扉の向こう……そこに広がった景色は、ホールと同じく、僕の知らない世界だった。
「す、凄い……」
「でしょう? 私も初めて連れて来られた時は、遥と同じ感想しか出てきませんでしたわ」
お姉様は昔を懐かしむように、それでいて僕の反応を楽しむように笑った。
その笑顔に“綺麗だ”と純粋に思った。
名画の中から出てきたような完成された顔。
それが本当に美しく笑う。
“至上の”という表現はお姉様のためにあると思うほどに。
「さて、遥はこの椅子に座って待っていてもらえるかしら」
部屋の中央あたりにある椅子を引きながら、お姉様は僕にそうお願いしてくる。
言われたとおりに移動する僕を視界の端で確認しながら、お姉様は壁に取り付けられていたクローゼットを開いた。
数分後、振り返ったお姉様は両手に服を持っていた。
まるで海を思わせるほどに、綺麗な青いドレスを。
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