入学二日目 (3)
授業は予想通りなくらいに、初めての授業って感じだった。
中学の内容の復習から、高校の内容の触り程度まで……どの授業もそんな感じで、春休みで緩んでいた頭を動かしていれば、いい感じに時間も過ぎて、もうお昼の時間。
僕らは場所も知ってるし、空さんもいるし、ということで、昨日も行った“シャルレーユ”へと向かうことにした。
「うー、お腹すいたよー」
「鈴莉ちゃん、本当にお腹が空いてるみたいですね。いつもよりぐったりしてるみたいですし」
「運動したわけでも無いのに、そんなにすぐお腹空くかなぁ……」
いつもより静かな鈴莉ちゃんに苦笑しつつ、僕らは昨日よりはスムーズにシャルレーユへと辿りつけた。
「はーい、いらっしゃい」
「姉様っ!」
出迎えてくれた空さんに、鈴莉ちゃんは猫みたいに飛びつく。
って、まだそんなに元気が残ってたんだ。
「鈴ちゃん達はこっちに座って待ってて。すぐお水とか持ってくるから、メニュー決めておいてね」
「はい。鈴莉ちゃん、ほら行こ」
僕は空さんにひっついたままの鈴莉ちゃんを引き剥がし、指示された席へと連れて行く。
少ししてお水を持ってきてくれた空さんに、注文を告げた僕らは、ここでも居心地の悪さを感じていた。
「ここでも、沢山の視線を感じますね……」
「鈴莉ちゃんが空さんに“姉様”って言ってたからね。知らなかった人も気づいちゃったんじゃないかな」
「うぐ、私のせい……。ごめん、二人とも」
別に謝ってほしかったわけじゃないんだけど、見るからにしょげてしまった鈴莉ちゃんの頭を、僕はそっと撫でる。
「別に気にしてないよ。これから慣れていくしかないんだからね」
「はぅ……うん」
それにしても鈴莉ちゃんの髪、すごい綺麗だなぁ。
絹とまでは言わないけど、手に馴染む柔らかさ……知ってしまうと思わず触りたくなるような、そんな髪だ。
「遥さんの手、きもちいーのだー」
当の鈴莉ちゃんはそんな事をいいながら、上目遣いで僕を見てくる。
なんていうか、小型犬みたいな可愛さ。
そんな僕らを鈴莉ちゃんの対面の席から吹雪さんは見てたかと思うと、
「わ、私にもしてください」
なんてことを言い出した。
そんなこんなで今現在、僕をはさんで右に鈴莉ちゃん、左に吹雪さんのある意味両手に花状態だったりする。
……見た目だけな!
「はーい、おまたせーって、鈴ちゃんたち。今日釘をさしたばっかりじゃなかったっけー?」
「姉様っ!? こ、これはその……」
「まぁ、いいけど。公の場ではある程度自重しなきゃだめよ?」
それよりも、と付け足して、空さんは注文の品を僕らの前に置いた。
相変わらず、おいしそうな料理だ。
「良い匂いー! いただきまーす」
目の前に置かれた料理に目を輝かせ、飛びつくように鈴莉ちゃんは食べ始める。
僕らはそんな鈴莉ちゃんを見て、少し苦笑しつつ自分の料理へ手を伸ばした。
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