入学二日目 (1)

 あれから、ゆったりとお風呂に入ってから僕らは部屋へと戻った。

 そうして、気がつけばすでに朝。


 疲れてたんだろう、うん。

 今、この部屋で目覚てるのは僕だけ。

 他の2人はまだ寝てるらしく、上からは規則正しい呼吸音が、そして、横のベッドからはよくわからない寝言が聞こえてきた。


 しかし、なんだか変な気分になるね。

 どうみても女の子にしか見えない子が同じ部屋にいて、しかも無防備な状態で寝てるとかね!

 まぁ、だからといって何かするわけじゃないけど……。


 現時刻は六時半、始業時間は八時半だったかな。

 昨日の話では、今日から少しずつ授業が始まっていくらしい。

 とはいえど、最初の授業は授業って雰囲気じゃないと思うんだけど。


「ふみゅ……おはよぅござぃますぅ……」

「吹雪さん、おはよう」


 聞こえた声に僕が返事を返す頃には、吹雪さんはまた眠りの中に落ちていっていた。

 朝に弱いのか……吹雪さんらしいとは思うけど。


「はっ! う~!」


 それからしばらくして、妙な奇声とともに鈴莉ちゃんはベッドから飛び出してきた。

 まるで猫みたいな動き方だな!?


「鈴莉ちゃん、おはよう」

「ん、おはよー。遥さん、朝早いんだね」


 そこまで早くはないと思うんだけどね。

 そんなことを思いつつ、鈴莉ちゃんと僕は着替えを済ませ、のんびり話をしていた。

 ちなみに、洗面所が各部屋についてるあたり、お金かかってるなーとか思った。


「そろそろ吹雪さんを起こさないと、時間的にマズいんじゃないかな?」


 鈴莉ちゃんに言われて時計を見れば、吹雪さんが二度寝し始めてから、すでに三十分以上が経過していた。


「じゃ、ちょっと起こそうか」


 遅刻するわけにはいかないし、と僕はベッドについてる梯子をのぼった。


 何この子……すごい可愛いんですが……。

 よくこんな外見で中学とかの修学旅行無事だったなぁ……。

 まぁ、それは僕も鈴莉ちゃんにも言えるわけだけど。

 ちなみに、僕は身の安全のためになぜか女子と同じ部屋に割り当てられてたわけだが……女子はそれで良かったのか?


「ほら、吹雪さん。そろそろ起きないと間に合わなくなるよ?」

「ほぇ……?」

「ほら、そろそろ起きよ」


 目の焦点があってないのか、起き上がってきた吹雪さんはホワホワしていた。

 このままだと三度寝に突入してしまいそうだし、伸ばしてきた手を取って体を支えておこうか。


「えへへー、遥さんだー」


 どうやら、実際の性格はかなり甘えん坊らしいことが判明。

 だって、そのまま抱きついてきたし。


「ほら、早く起きよう?」

「はーるかさん」


 名前を呼ばれたと思った瞬間、僕の口には何かやわらかいものが当たっていて、僕は返事ができないっていうか、ちょっと待て!?


「ぇ、え!?」

「遥さんの唇やわらかーい」


 笑いながら、また顔を近づけてきた。

 もう、慌てふためくしかできない僕は二回目も奪われてしまうわけで。


「ちょ、ちょっと吹雪さん!?」

「なーにー?」

「な、なんでいきなりキスするの!?」


 首に絡みついた腕を解こうとしても、なぜか解くことができなくて、僕は吹雪さんから逃げられなかった。


「なんでっていわれたらー、したいから」


 天使みたいに可愛く笑いながら、悪魔みたいなことをしれっと言い放った吹雪さんは、また顔を近づけてきた。

 やばい、また奪われる!!


「はい、ストーップ」


 僕の上から声が聞こえたと思ったら、僕の口と吹雪さんの口の間に手が差し込まれた。


「君たち、いったい何をしてるのかな?」


 その手を辿っていくと……笑顔の鈴莉ちゃんが見える。

 どうも、いつの間にか鈴莉ちゃんが僕らの真横まで来ていたみたいだ。

 でも、梯子は一番上に僕がいるから上れないはずなんだけど?


「これくらいの高さだったら、飛んで上れるよ。というか、遥さんの最初は私がもらおうと思ってたのに!」


 ……はい?

 イマナニヲイイマシタカコノコハ?


「でも、まぁいいや。遥さん、こっち向いて?」


 向いて、といいながら自分の手でそっちを向かせる鈴莉ちゃん。

 ちなみに、僕の身体は未だに吹雪さんに縛られている。


 つまり、


「ぇ、ちょっと、ちょっと待って!?」

「だーめ」


 こうして僕の三番目は、鈴莉ちゃんに奪われました、と。


 誰か助けて。

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