入学一日目 (7)
「えぇ、ご挨拶をと思いまして。蒼の姫として、次期蒼の姫君に……ね?」
「あおのひめ?」
少なくとも僕はそんな風に呼ばれたことはないし、呼ばれるようないわれもないはずだ。
たぶん、人違いじゃないかな。
「水無瀬 遥さん、人違いではないのですよ」
僕の目をまっすぐ見据えて、彼女は言葉を紡いだ。
「この学園、リアス女学園の蒼の姫、火波 涼の名を持ってここに宣言いたします。ーー水無瀬 遥を我が妹、蒼の姫君と」
姫君……なんだ、それ?
そんな風に困惑している僕らの周りでは、他の学生たちが「新たな姫君の誕生ですわー!」等と騒いでいた。
で、今現在、場所をお風呂場に移した僕らは多数の生徒の視線にさらされていた。
「あの、火波先輩?」
「遥さん、私のことはお姉様とお呼びくださいね? あなたは私の妹になったようなものなのですから」
「いえ、ですから。 その姫君とか姫とかって何ですか?」
「そうですね……では、朱の姫君と白の姫君もいることですし、一度説明させていただきましょうか」
火波先輩……もといお姉様? は鈴莉ちゃんと吹雪さんを流し見つつ、説明をしてくれた。
説明されたことを噛み砕くと、代々各寮には寮長の代わりに姫と呼ばれる、その寮の最高決定権を持つ者が一人割り当てられていたらしい。
しかし一人では、なにか暴挙に出られては止めることができないと判断されたため、お姉様の代から数年前の世代で、三人に変更され割り当てることになったらしい。
で、その姫の妹として、次期姫候補を姫君と呼び、現姫が教育することになっているらしく、火波先輩は僕の教育係ということになるらしい。
ちなみに、すべての寮の一○五号室に、姫君候補が入れられるらしく、その室長がその代の寮内トップになるらしい。
「ってことは、お姉様が卒業する来年度からは僕がこの寮のトップになるってことですか!?」
「そうなるわね。今は私ではなくそこの水瀬、では紛らわしいわね……吹雪さんの姉君でもある白の姫が担当しているわ」
どうやら、吹雪さんは白の姫君らしい。(なら必然的に鈴莉ちゃんは朱の姫君だ)
「レンの事だから、そろそろお風呂に入ってくると思うのだけど」
お姉様がそう言うと同時に、お風呂のドアが開けられ、二人の人が入ってきた。
片方は知らないが、共に入ってきた一人は、ずごい見覚えがある。
というか、空さんだ。
そして、片方の知らない人は、ウェーブ気味の銀髪を背中まで伸ばした西洋人形のような美少女で、活発系の空さんとは真逆の方向性で美しい人だ。
「む、涼。そこにいるのが桜姫の方たちか?」
入ってきた人影は僕らに視線を向けると、お姉様に訊ねていた。
「遥さん達。いきなりで驚いてるってところね」
「空さん、もしかするともしかする感じですか?」
「えぇ、私が現朱の姫ですよ。ですから、鈴莉さんの姉となりますね」
すでに知っている人だったことが嬉しかったのか、鈴莉ちゃんは「お姉様ー!!」といいながら空さんに抱きついていた。
あのハイテンションはこんな時に便利だなぁ、とか思ったりとかなんとか。
「話はわかった。だがとりあえず、私も湯船に入らせてもらえるか? さすがに、裸のままでは寒い。 話はそれからにしよう」
白の姫は、まっすぐ前を見据えたまま僕らの前を横切り、掛け湯をした後、湯船の中に入っていく。
それに倣うように、僕らも湯気の立ち上るお風呂の中へと身を沈めた。
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