入学一日目 (3)
次の時間に僕らを待っていたのは、寮の割り当てや委員会の割り当てだった。
普通なら寮は学校に入る少し前から入っているものだが、この学校は違う。
それは、送られてきた受験票にアンケートみたいなものが付属してあり、それを元に部屋を割り当てるシステム。
だから事前連絡もなく、入学式が終わった後にみんなで家に連絡を入れ、荷物を送ってもらう事になっていた。
「同じ寮になれるといいね」
吹雪さんが、そっと僕囁いてきた。
そうだね、と答えている間にもどんどんクラスの人の名前が呼ばれていく。
「さくら寮の人を発表します」
さくら寮は三番目の寮の名前のようだ。
前の二つは、かえで寮とつばき寮って名前だったはず。
「一○五の部屋、春日 鈴莉、水無瀬 遥、水瀬 吹雪。 この部屋は三人部屋になります。室長は水無瀬 遥さんにお願いします」
ありゃ、同じ寮どころか同じ部屋だったよ。
鈴莉ちゃんも同じ部屋みたいだし、気が楽になったかも。
「ふふ、鈴莉ちゃんも一緒みたいですし、 楽しくなりそうですね」
「そうだね。でも、僕が室長とか大丈夫かな」
吹雪さんは「大丈夫ですよ」と、また小さく笑っていた。
そのままなんやかんやと寮の話は進み、次は委員の割り当てへと話が進む。
どうやら室長になっている人には、委員は割り当てられないらしい。
委員会と室長会議が重なることがあるからだそうで、少しほっとした。
吹雪さんと鈴莉ちゃんは、それぞれ委員を割り当てられてたが……。
「吹雪さんが保健委員か」
「その、頼りない保健委員ですよね」
「いや、鈴莉ちゃんの風紀委員よりは頼りがいがあると思うよ……」
「で、でも鈴莉ちゃんはああ見えて、もしかするとすごい風紀に厳しいかもしれないじゃないですか」
それもどうかと思うが。
そうして委員が決まったことで今日の授業が終わり……つまり、解散となった。
時間はお昼の十二時を少し過ぎたあたり。
僕も(見た目は抜きで)一応は健全な男子なので、当たり前だがお腹が空いていた。
「はーるかさん、一緒にご飯食べにいきません?」
「そうだね、僕もちょうど食べに行こうかと思ってたところだし……、吹雪さんも行かない?」
「ぇ? ぁ、はい。 お供しますです」
連れ立って教室を出て、僕らは学食に向かうことにした。
ちなみに、街まで出ようと思うと往復で二時間以上かかってしまう。
だからこの学園には、結構大きな学食が備わっているらしい。
でも、僕は学食の場所を知らない。
そこで、と二人に聞いてみたところ、どうやら鈴莉ちゃんと吹雪さんも知らないみたいで、散策ついでに探すことになった。
「まさか同じ部屋になると思わなかったね」
「まぁ、そうだね。ここまでくると最早運命みたいだ」
「でも私としてはお友達が一緒なのは嬉しいです」
「あ、それは私も思ってた。吹雪さんと遥さんが一緒だったら安心だよー」
僕も見知らぬ人と相部屋よりは、この二人と相部屋になったことはありがたいことだ。
鈴莉ちゃんも吹雪さんも、二人ともいい人みたいだしね。
「あっ! 学食ってあそこじゃない?」
校舎から外に出た僕らの少し先を、鈴莉ちゃんは指差していた。
指差す先には英語で……(たぶん)“シャルレーユ”と、書かれた看板が立っていて、その後ろには喫茶店のようなおしゃれな空間が広がっていた。
「わー、可愛い!」
「おしゃれなお店ですね」
近づいていくと中の様子が見えてくる。
それにつれ、二人のテンションはどんどん上がっていき、歩幅も次第に大きくなっていった。
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