第3話 テンプレート

◇◆◇


「うーん? こ、ここは?」


 僕は気がつくと草原に立っていた。だが妙に視線が低い。


「テンプレート! テンプレート!!」


 誰かが何かを呼んでいる。テンプレート? テンプレートってなんだ?


「テンプレート!」


 僕を後ろから誰かが抱き上げる。僕の視界には抱き上げた人物が写りこむ。


「私のかわいいテンプレート! どうしたの? そんなにびっくりしたような顔をして?」


 びっくりもするよ。そこには、とんでもない美人さんがいるんだから。


「おいおい、後ろから突然抱きあげたら誰だってびっくりもするさ。たとえ自分の母親だとしてもな」


 とんでもない美女に話しかけているのは、これまたとんでもない男前だった。


 ……間違いない。僕は本当にあの女神の言うとおり、転生したんだ。それもとんでもない美男美女夫婦の子供として……。


 どうやら僕の名前はテンプレートというらしい。変わった名前だな。それともこの世界では当たり前の名前なんだろうか。とにかく、僕は物心つく3歳前後で前世の意識を取り戻したらしい。


 僕は名門一家の長男として生まれたようだ。長男と言っても、二歳上の姉がひとりいて、1歳下の妹もいる。


 父親の名はアレン・グライムス、貴族でありながら剣の達人であるということがわかった。僕が前世で憧れた細マッチョそのものである。


 母親の名はアリア。彼女もまた貴族の生まれでありながら、魔法の使い手だそうだ。結婚するまでは父とともに王国の兵団にいたらしく、後方でけが人の回復を主な仕事としていたらしい。ふたりの馴れ初めは負傷した父を母が治療したことなんだそうだ。


 両親とも整った顔立ちをしており、姉のアリス、妹のクレハも将来美人間違いなしという具合だ。そして、僕も……美幼児だった。自分でも信じられないくらいの。鏡にうつりこむ自分の姿はゴブリンでもクリーチャーでもなく、将来男前間違いなしの美幼児。これが本当にぼくなのか?


 ……僕は不思議とこの世界の言葉を理解することができていた。当然ながらこの世界の人間が話す言葉は日本語じゃない。でも、理解することができる。最初は、子供だからスポンジのように脳が吸収するから理解できているんじゃないかと思ったが、どうやらそうではない。僕の頭は驚異的に良くなっていたのだ。前世の記憶を持ちながらも同時に二つ目の言語を習得できるほどに涼しい頭脳を持って僕は生まれていたのである。


 明らかに同年代と比べても文字の習得など、学問の才に溢れていた。


 学問だけではない。父の剣術の才能も受け継ぎ、武においても僕は同年代と比べはるかに高い能力を持っているようだった。


 極めつけは魔法の能力である。


 僕は魔法の才にも恵まれていた。生まれながらにして大人の魔術師をも凌ぐ魔力をその身に宿していたのである。

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