第6話 恐怖は見てくれに影響す
「コウキ君!!旗は任せたよ!!」
次の瞬間、リエは瞬く間に姿を変えていった。
華奢な腕や足は何倍も膨れ上がり、手先には刃にも似た爪が生えた。
その体躯は裕に2mは超えている。
極め付きは恐怖で塗り固めたような顔だった。
鬼や悪魔が実在していればこういう見た目なのだろうと感じる程の迫力がある。
リエはものの数秒で姿を変え、猛烈な速度で駆け出した。
「ありゃ周りもあんな目になるわ...。」
それより、俺は旗を探さなければならない。
リエに続いて俺も旗を探しに駆け出した、と同時に自分の置かれている状況に焦りを覚える。
「こりゃ恰好の的だな...。」
旗を求めてしばらく歩いた頃、前方に悲鳴にも似た声を上げながら走っていく人を見かけた。
「逃げるぞ!あの悪魔に狙われたら無理だ!」
走って逃げるのも束の間。
その悪魔は猛烈な速度で距離を詰め、凶悪な腕を大きく振りかぶり敵を薙ぎ倒す。
守りに使っている武器もろとも破壊していく。
「あー...。あれはやられる側が可哀そうだな...。」
真っ先に浮かんだ感想がそれだった。
そしてリエが自身満々だったことに納得がいった。
さて、俺は旗を探さないといけないが闇雲に探しても見つからないだろう。
どこかに隠してあると想定するのが妥当。
だとすると、ひと際大きくて目立つ木の下とかあるいは...。
「ほんとにあった。やっぱりあえて色を変えていたんだな。」
木から生えている葉っぱの色が周りと比べてやや濃い目になっている。
「そんじゃあ旗見つけたし、リエさん呼んでみるか」
コウキは大きく息を吸い込みだせる精一杯の声でリエさんを呼んだ。
「りえさーーーーーーん!!!!!」
自分の声がこだまして聞こえてくるほどの静寂を肌で感じていると遠くからリエさんが走ってきた。とんでもない速度で走っている割に涼しい顔して俺の目の前に到着する。
「コウキ君もう旗見つけたの?」
リエに尋ねられたが、目の前の光景が馴染みがなさ過ぎてしばらく固まってしまった。
見た目は鬼のような見た目なのに声はやや篭って聞こえるが優しい雰囲気なのがまたどうようさせる。
「コウキ君...?聞いてる?」
「はっ!あ、すみません!旗は確保しました。リエさんはどうですか?」
「ごめんね、まだ2個なんだ。あと1つとらないと修了できな・・・」
リエの話を遮るかのように耳を劈く轟音が鳴り響き、こちらに近付いてくる。
そこには見覚えのある2人組が立っていた。
「今年も同じ作戦とは私を誘っているのかしら。って、あらコウキ君。その子と組んでいたんだ」
ふとリエの方を見ると、鬼のような顔でも、表情から疑問を浮かべているのが窺えた。
「俺の友達の姉です。昔からお世話になっているんですよ。ちなみに隣にいるのはその弟です。」
「へぇーそうなんだ。でも、うん。なんでもいいよ。私はこの瞬間のために1年生の全てを注いできたんだから。」
どうやら並々ならぬ事情があるようだが、
聞いている場合ではなさそうだ。
「ユウ?あの子とは因縁があるの。邪魔されるのが嫌だからコウキ君止めててくれる?」
「わかったよ、お姉ちゃん」
リエも相手の意図を察してコウキに指示を出した。
「相手もこっちと気持ちは同じみたい。片方をお願いね。」
「了解です」
了解、と言ったもののユウを相手にするのは簡単ではない。気を引き締めないと。
「じゃあ始めましょう?ユリ。去年の続きを」
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