第4話 平穏とは常からわぬ事の繰り返し
入会してから半年が経ち、ようやく育成会に慣れてきた。
いつものようにユウとコウキは一緒に行動をし他愛もない話をしている。
「こないだバッカズ先生が言ってたことわかった〜?」
「あーあれか、[敵を斬りたくば己から]わかるようでわからん」
バッカズ先生は今も戦争に参加するほどの実力者。その心に何を刻み、何を心得てきたのかその真意まで察することはできなかった。
「そういえば今日の授業なんだっけ?」
ユウはその日の授業を覚えない。だから毎日このやりとりをしなければならないのだ。
「またか!そろそろ覚えようぜ?今日はマヤ先生の魔術講習だ。」
「うわあーーあれか〜。僕、魔術使えないから面白くないんだよね〜...。」
「そんなこと言うなよ。もしかしたら使えるようになって剣術が更に!ってするかもだろ?」
「そ〜んなうまい話はないね!」
剣術の腕は育成会一良いと言っても過言ではないが、その分魔術が一切使えない。ユウらしくかなり極端なものだ。
「そろそろ授業が始まる、席に戻ろう。」
「はあーい」
チャイムが鳴り、マヤ先生が教室に入ってきた。
「君たち。今日は改めて基礎を見直しすることにした。なぜなら...」
いつもの明るいマヤ先生とは打って変わってものすごい剣幕で話し始めた。
「入会してから半年。私が面倒見ているにも関わらず、未だに魔術が使えないものがいる。私はそれが許せん!!よって!!皆んなの基礎を見直して更なる応用ができるように、そして未だに魔術が使えるぬ者を使えるように!今日はそんな授業だ!」
穏やかな雰囲気は消え、心なしか口調まで変わっている気がする。
「まずは魔術とは何か、改めて説明する。魔術を使うためには己の中にある属性を理解する必要がある。その属性を理解し、想像することが魔術を扱う上で一番の基礎となる。君たちの属性はなんだ?まずはそれを理解するんだ。」
その言葉と同時に各々が自分に問いかける。
俺の魔術は光玉、聖属性の魔術だ。聖属性は応用が難しく、炎属性のようにぶつければ爆発したり、氷属性のように凍らせたりできるわけではない。超振動させて切断力を生み出したり、高速で発射して衝撃を与えたりと緻密な魔力操作が必要となる。故に戦闘向きとは言いづらいのは確かだ。しかし、緻密な操作が可能であれば応用の幅は底知れず、である。
「さて、そろそろいいかな。それぞれ自分の属性について考えていただろう。ユウ!君の属性はなんだ!」
ユウは怪訝な顔をし答えた。
「マヤ先生〜、僕に属性はないよ。だってあったら使えてるもん!」
「やはりね。そう言うと思っていたわ。しかし!今日の私は一味違う」
そういうとマヤ先生は重たそうに鞄を取り出した。
「君たちにこれを配る」
マヤ先生が取り出したものは丸く真珠のようなものだった。
「とっておきのものだ。これを手に入れるのはかなり苦労した。それはいい。さて、これは君たちの属性を具現化するものだ。自分の1番強い属性の色になるから、さっき想像していた事を真珠を持ちながらやってみて」
各々、真珠を手に取りもう一度想像をする。
コウキは想像通り白色【聖属性】に光った。
「やっぱり俺は聖属性だ、まあ疑ってもないけどな。」
自分の色が聖属性であることにやっぱりという納得と、少し残念な思いを感じていると、教室が妙にざわついていて、皆の視線はユウの方を見ていた。
「マヤせんせーい。僕の真珠は水色に光ったよーー。」
驚いた表情も隠さず返答した。
「水色!?...またあなたはそういう珍しいことを」
頭を抱えて俯いた。
「水色って珍しいの??」
「当たり前じゃない!この真珠は赤、青、黄、緑、白のどれかに光るものなの!」
「じゃあ水色はどんな属性なのー?」
その問いかけに少し困った表情を浮かべながらゆっくりと答えた。
「そうね、おそらく氷とかじゃないかしら。例えば足元凍らせて拘束したり、槍のように尖った氷を飛ばして攻撃したり、そういう感じだと思うわ。」
氷の魔術は水属性の応用の術であり、属性としての分類は本来はないようだ。
「へえーー。僕にそんな才能があるんだ。じゃあどうやったら使えるの?」
単純な疑問だが、1番の問題である。
「そうね、魔術の根幹は想像力。どれだけ鮮明に想像できるかがコツになる。簡単な魔法でコツを掴むのが近道ね。掌を前に突き出してそこからエネルギーを出す、これが1番簡単な魔術よ。」
術名もないただの魔力の放出。
しかし、誰もが幼い頃、自分の魔力の存在に気付くのはこの行動だろう。
「うーん、想像力には自信があるけど、僕がやっても魔術はでないよ〜」
ユウが悄気た顔をしながら、諦めていた。
「わかったわ。私しかできない補助してあげる。」
マヤ先生は興味を惹く言葉を言ってユウに近付いた。
「今やったように、もう一度掌を突き出して?そこに私が補助するわ。」
ユウの手の甲にマヤ先生は手を重ね、色のないの魔力を流し込んだ。
「...マヤ先生なにしてるの〜?何も起きないよ??」
マヤ先生は驚いた、というより、理解できないといった顔をしていた。
「ユウ、あなたの体に魔力が存在しないわ...。」
「え〜、でもやっぱり。僕は魔術が使えないんだ。」
マヤ先生は悔しそうな表情をしているが、他の生徒のため授業を続けた。
各々が自分の本質を知り、予想通りの人もいれば、思い違いの人もいた。
そういえば実力テストで魔術ランク上位のあいつは何色に光ったんだろう。
「さて、みんな今日で自分の本質を見れたはず。その属性を伸ばすのが魔術の上達の近道よ。これからも努力をするように。では今日の授業は終わりにする、解散。」
教室に戻る道中、コウキはユウに話しかけた。
「ユウ、本当に魔力がないみたいだな...。まあ落ち込むなよ。ユウの剣術はだれにも負けない唯一のものだ。それは誇っていこうぜ」
「うん、ありがと。でも、なんでお姉ちゃんはあんなにすごい魔術を扱えるのに僕には使えないんだろう。血筋は良さそうなのになー」
ユウの姉であるヒビキは剣技ですらユウと同等なのに、【雷鳴】の異名がつくほどの雷の魔術の扱いに長けている。それほどまでの血縁であるユウが魔術を扱えないのは他に何か理由があるのかもしれない―――。
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