10.5 魔王軍幹部、動く03
それは、獅子浜たちが勇者の任命式を受けている頃。
魔王軍本拠地では、幹部が揃っていた。
…
「あら、デスジェネラル。カナヤから聞きましたわよ。この前、魔人が…ええと…。まあ、名前なんてどうでもいいですわ。やられたのは勇者のせいなんですってね」
一番先に口を開いたのはブラッドカース。
その馬鹿にするような態度には、消失した魔人を悼む様子が欠片もない。
「ああ。勇者の存在が確認された。…ツインショーテルの反応が消えたのも、恐らく勇者のせいだろう」
デスジェネラルの言葉に、カナヤとブラッドカースはひとつの確信を得る。
──今回の勇者は極めて強い。それこそ、初代勇者に並ぶかもしれない程に
「ククク…。ツインショーテルがですか…。彼の戦闘力はそこまで高い訳ではありませんでしたが、性格は残虐極まりない存在…」
「ええ…。彼でしたら、村人たちを血祭りにあげる様を勇者に見せつけ、心を折るでしょうね。それが負けたのは…」
──その勇者には、鋼の心も備わっている
二人の顔は高揚する。尤も、ブラッドカースは仮面をしており、顔は見えないが。
気の高まる二人を更に発破するように、デスジェネラルは声を上げる。
「そうだ、我らの計画には勇者の存在が邪魔だ。奴は今、中央都市パブロにいるだろう。そこを離れたタイミングを狙い、すぐにでも仕留めるのだ」
「では、ワタクシの部下を向かわせますわ。勇者が魔術に耐えられるのか、確かめさせて貰いますわ…オーッホッホッホ!」
邪悪な笑いを上げたブラッドカースは、席を立ち、部屋を去っていった。
…
「クク…ここにはもう私達だけ…何か、私にだけ尋ねたいたいことがあるのでは?デスジェネラル。…いいや、現魔王軍総統」
「その呼び方はやめよカナヤ、我は今でも魔王様の部下。我が魂は魔王様と共にある。」
カナヤが少し煽りを含んだ質問をする。デスジェネラルも眉ひとつ動かさず、率直に答える。
「話が逸れたな。質問は確かにある。カナヤよ、そなたが今、執心して作っている魔人はなんだ?だいぶ人間に似ているが…」
「ククク…あの魔人ですねぇ」
カナヤの口角が大きく上がる。
「あれは今、開発中のイミテーションバングルに併せてつくっている、対勇者用の魔人ですよ。完成、楽しみにしていてくださいね。ククククク…」
カナヤは何時にもないほどに笑う。その顔を見たデスジェネラルは、背筋が寒くなるのを感じる
──こやつが我が軍に下ったのは何より幸いだった。その憎悪、その怒り、存分に活用させて貰おう。…全ては魔王様の為に──
笑い終えたカナヤは部屋を去っていった。中央室に残るはデスジェネラルただ一人。
──魔王様。もう時期です、もう時期我が軍は更なる力を得る。そうなれば、貴方の封印を解きに行ける。この十年、とても長かった…。あと少しの辛抱。どうか魔王様、それまでお待ちください。──
デスジェネラルは誰もいなくなった部屋の天井をただ見つめる。
その顔には柔らかな微笑みが浮かんでいた。
…
【第10.5話 完】
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