08.6 魔王軍幹部、動く02

 それは、獅子浜がツインショーテルを倒した翌日。

 魔王軍の本拠地に、偵察に向かったスカルウォーリアが戻ってきた。


「デスジェネラル様。スカルウォーリア、ただいま戻りました」

 スカルウォーリアが報告のため、デスジェネラルの部屋を尋ねてきた。

「よく戻ってきた、ご苦労である。…依頼した内容はどうなった?」

「はっ!ギガントを倒したのは新たな勇者で間違いありません」

「そうか。前の勇者を倒して3ヶ月、とうとう現れたか」

 デスジェネラルは以前の勇者の事を思い出す。


 ──あの勇者の死因は、恋人を目の前で殺されての絶望であったな。あれは確か、ブラッドカースの策であったか。…余は好かぬがな。


「それと、此度の勇者について。そなたにはどのように見えた?」

「はい。これまでの勇者とは毛色が違うように感じました。あの者は正義感が強く、迷いのない、そんな目をしておりました」


 そうか…。と、デスジェネラルは頷く。今度の勇者の勇気を挫くのは手間がかかりそうだと、考えた。


「そうか。報告の方、感謝する。」


 一端の礼を述べたデスジェネラルはスカルウォーリアを返し、これまでのことをまとめた。


 ──勇者がこの地に現れたのは恐らく、パブロから西の方角であろう。そこから東へ進出、いくつかの街や村を寄りながらパブロに進んだのだろう。

 そうであれば、ツインショーテルの消息が途絶えたのも説明がつく。あやつにはパブロ西側一帯の警備を任せていた。恐らく、勇者にやられたのだろう。

 今回の勇者は勇気と力、両方を兼ね備えたやつかもしれぬな。


 無意識のうちにデスジェネラルの口角が上がる。


「カナヤ、そこで見ているのだろう。出てきたらどうかね」

 いつの間にか扉の裏に隠れていたらしいカナヤに話しかける。デスジェネラルの訝しむ態度に、悪びれる様子もなく、カナヤは答えた。

「クク…バレてしまいましたか」

「盗み聞きする必要は無いのではないかね。どの道、このあとの会議で報告する内容であるぞ」

「失敬失敬。クク…何卒、私はせっかちでしてねぇ。早く結果が知りたかったのですよ」


 カナヤ。現魔王軍幹部。彼の研究により、デビルソルジャーが生産されている。魔王軍の勢力拡大に役立っているのだ。


「そうか…ところでカナヤよ。例の兵器の完成が近いらしいな」

「ククク!そうなんですよ!私が長らく研究していた、女神のバングルの複製品…イミテーションバングルがもう時期出来上がるのです!」

 カナヤはいつにもなく大声で笑い、怒りの顔で空を仰ぐ。


「ハハハハハ!!そう!私がこの世界に来てからずっと研究していた成果が、まもなく出来上がるのです!これさえあれば、私たちは魔王様無しでもこの大地を支配できる!ワハハハハ!」


 科学者にして魔王軍幹部、カナヤの憎しみを含んだ高笑いは本拠地内に響いていくのであった。──

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