第31話 公爵令嬢はコーラを作る

風魔法で氷を作ってから半月が経過し、私は錬金魔法で真空ポンプを作り、風魔法を使わず氷を生産出来る様になった。


その真空ポンプはお父様によって量産されて、氷を大量に生産できる様になった。


そして、ブリキッド商会でアイスクリームとかき氷を販売、バカ売れの結果、アイスクリーム専門店を作り、毎日長蛇の列が出来ている。


真夏に氷より安くアイスクリームやかき氷売ってるんだから、売れて当然の結果だよね。


ポテチやハンバーガーセット、唐揚げやドーナツなんかも順調に売れていて、今やブリキッド商会は、国内最大のペンタニオン商会に並ぶ程の大商会になった。


因みに、今回も相変わらずお父様はお祖父様にアイスクリームの作り方を教えていないらしく、それどころかポテチの作り方も未だに教えてないらしい。


そろそろもう、教えてあげて良いんでないのかね。




さて、私は今、新しいものを作るために色々と魔法の実験をしている。


今やっているのが、錬金魔法で重曹とクエン酸の生成。


鉱石や金属、宝石や結晶が錬金魔法で作れるので、重曹とクエン酸を結晶化して作れないか試したんだけど、ミョウバンや塩の結晶は作ったことはあっても重曹とクエン酸は作った事がなくて、何回やってもイメージ出来ず失敗。


仕方なく、市販されてた状態の重曹とクエン酸を試しに作ってみたら、出来た。


なんじゃそりゃだったよ。


とりあえず、重曹とクエン酸が作れたから、前から作りたかったものの材料が揃った。


早速レッツ クッキン!



まずは、シナモン、バニラビーンズ、クローブホール、カルダモンシード、レモン、砂糖、水を鍋に入れて、火にかける。


沸騰したら火を消して、荒熱が取れるまで放置。


冷蔵庫がないので、冷暗室で半日馴染ませる。


そうして馴染ませた物がこちら。


ザルで越したら、コーラシロップの出来上がり。



まあ、これは今まで何度か作ってたんだけど、ここからが重要。


氷でしっかり冷やした水に、クエン酸を混ぜる。


これに重曹を入れると、たちまち泡立ち、あっという間に炭酸水が出来上がる。


私が作りたかったのは、この炭酸水。


コーラシロップの水割りは、お兄様は美味しいって言ってたっけど、俺からすればこんなのコーラなんかじゃない!


炭酸あってこそのコーラだ!


炭酸水にコーラシロップを入れて、完全版コーラの出来上がり!


ついでに、炭酸水にレモンとハチミツを入れたラムネ、リンゴ果汁と砂糖を入れたサイダーを作った。



こうして、3種類の炭酸飲料が完成した訳なんだけど、おれは今日という日をどれだけ待ちわびたか。


これでやっと、俺のポテチの相棒が出来たのだ。


早速、コックにポテチをオーダーした。


もう随分沢山の揚げ物を作ってきたコック達だ、もうポテチで失敗する様な者はいない。


多めにポテチを作ってもらって、完成した炭酸飲料と物々交換。


レッツ シエスタ!




今日はお兄様がお屋敷にいらっしゃるので、ティータイムのお誘いをした。


おやつの新作が出来たと伝えたら、「是非とも!」と食い気味に誘いに乗ってくれた。


そしてリッカにも一緒に休憩を誘った。


「二人きりの時だけという約束でしょ?」と拒否されたけど、そんなの関係ねぇ。


お兄様にも協力してもらって、リッカもティータイムに強制参加。



テーブルに用意されたポテチを見て、


「あれ?新作って言ってたけど、これってポテチだよね?」


とお兄様は首を傾げていた。


「ふふふ、お兄様、新作なのはポテチではなくて、これらのジュースなんですよ。」


そう言って、リッカにコーラ、ラムネ、サイダーを用意してもらった。


「え…なんかこれ、すごい泡立ってるけど…

飲んでも大丈夫なの?」


「私がちゃんと味見をしてるので、問題ありません。

お兄様に、一番最初に召し上がって頂きたいのです。」


それを聞いたお兄様は、意を決した様に炭酸飲料に手を伸ばす。


まず最初に手に取ったのは、ラムネ。


レモンが入っていて、一番味が想像しやすかったからかな?


恐る恐るラムネを一口飲む。


その瞬間、目を大きく見開いた。


「何これ⁉︎

口の中でシュワシュワして、喉越しがすっごい気持ちいい!」


続いてサイダーを飲む。


「あ!これはリンゴ味!

さっきのはレモン味だったけど、これも美味しい!」


最後にコーラ。


「これ!

この前フランが作ったコーラ水の味だよね!

シュワシュワになると、こんなにも美味しくなるんだ‼︎」


どれも良いリアクションしてくれた。


自分が食べたいと思って作った料理だけど、こうやって喜んで食べたり飲んだりしてくれると、作り甲斐があるよねぇ。


本日の食レポ担当リッカにも席に着いてもらって、試飲してもらう。


「す、スゴいですね、この飲み物!

甘く爽やかな味と、口いっぱいに広がる刺激、飲み込んだ後の爽快感、クセになりそうです!

そしてこの飲み物、ポテチと凄く合いますね!」


「分かる!

オレンジジュースも良かったけど、これポテチと相性抜群だよね!」


二人でめっちゃ盛り上がってる。


この世界、エールやスパークリングワインなんかの発泡酒がなくて、炭酸の概念のない二人には、この炭酸飲料は凄く衝撃的だったらしい。


と言っても、お兄様は14歳でリッカは16歳。


17歳が成人とされているので、発泡酒があったとしても二人ともまだ飲めないんだけどね。


私が大人になったら、発泡酒も作ろう。


唐揚げとビールはマジ最高。



3人で炭酸飲料の飲み比べ。


お兄様はコーラ、リッカはラムネが一番好みだったらしい。


私はもちろん、コーラ一択。


コーラが飲みたすぎて思い出補正が尋常じゃなかったから。


日本で飲んでたのとは味がちょっと違うけど、これはこれで有り。



こうして、3人で楽しくポテチパーティーをしていたら、総料理長のダンが私を訪ねてきた。


「失礼します、お嬢様!

ポテチと交換と言って置いていった、あの飲み物は何ですか⁉︎

シュワシュワで凄く美味しいですねぇ‼︎」


あ、そういやあの時コック達におすそ分けしてたの忘れてた。


「…え?

僕に一番最初に飲んで欲しかったんじゃなかったの?」



こうして、ティータイムは若干の気まずさを残して終了された。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る